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~涙するにもほどがある!32~

 クシロス卿は自室へと戻り、今なお収まらぬ恐怖をどうにかしようと必死だった。


ベリルやダスクが何者なのか、クシロス卿は知らない。知りたくもない。だが、ベリルは自分で「闇の召喚術師」だと名乗っているのを聞いたことはあった。クシロス卿の知り合いにも召喚術師は存在する。だが、ベリルが召喚する魔物は見たことがない魔物ばかりで、彼らがなんの話をしているのかさえ分からない時も度々あった。


ダスクというあの王に取って代わったものに関してはさらに情報がなく、不気味で、恐怖の対象でしかなかった。王が今なお生きているのかは不明だが、きっとその可能性は限りなく低いだろう。


 ダスクはよくベリルを呼びつけている。だが、彼らがなんの話をしているのか知りたくもなかい。長いものには巻かれろというが、ほんとにその通りで、彼らに逆らったとしてもいい結末は決して訪れないであろうことは明白だ。自分に少しでも利があるように生きるというのが賢い生き方だと思う。その為には、少しでもあのお方に気に入られるように努力する他ないのだった。






オピスの葬儀からひと月が経過した。あれから結人は毎日のようにあの瞬間の夢を見てはうなされて、目が覚めてからも塞込んでばかりだったが、ラプソディアやラビア、助けた亜人や獣人たちのおかげで、ここ最近ようやくまともに食事も摂れるようになり、色々と動こうかという気持ちになることが増えてきていた。


 逆にティスは、すぐに動くことが出来たものの、何かにとりつかれたのかと心配になるほど、早朝からノエルに跨り当てもなく飛び出し、暗くなると帰ってくる。そんな毎日を過ごしていた。結人がいる部屋の窓から最初にこの城へ来たときにノエルで降り立ったテラスが見えるのだが、今もまたノエルに跨ったティスが飛び去って行ったところだった。


 結人が塞込んでいた間も、ラプソディアやラビアが「こうしてみてはどうか」とか、「ああしてみましょう」といった仕事をもってきては、結人にお伺いを立てていたので、どういうことが現在進行形で進んでいるかは結人自身把握しているつもりだ。


 まず初めに連れ帰ってきた亜人や獣人たちだが、魔族の中ではやはり住み心地が悪かったのか、自分たちの村を作らせてほしいとのことだったので、この城の城下町からそう離れていない森の中に村建設の許可を出している。これには手先の器用な魔族や、力が有る魔族も手伝うよう指示を出してある。


 亜人たちが捕まっていた洞窟は、ラプソディアに命じてあらかた調べが終わっている。なんでも例の奴隷商が奴隷を運ぶ際、西大陸から東大陸へ渡るのに陸路ではどうしても通らなければならないかなり大きい関所が存在するらしく、ここが魔族の土地と知ってか知らずか、そこを迂回する船の中継地点となっていたようだ。


 次にリアの捜索だが、これに関してはほとんど手がかりがなくなてしまったのが現状だった。人に擬態し、紛れ込むことができる魔族にリアの手がかりを探させてはいるが、人族が住まう土地というのはかなり広く、それらしい情報というのは未だ得られていない。唯一の手がかりである「グリード(悲鳴)」という奴隷売買組織も探らせてはいるが、世界的に奴隷売買が禁止となっている今の状況で探りを入れるのは至難の業だった。


 どうしたものかと思案しつつ、結人は運んできてくれた料理をベッドに腰かけて綺麗に食べ終えたところで、二回扉をノックする音が聞こえ、メイド服に身を包んだラビアが静かに入ってくる。


「お食事も食べられるようになってよかったです。一時はどうしようかと心配で心配で」

「そうだよね。ラビアや他の皆にも心配かけてたよね。もう大丈夫だから、ありがとう」


 ラビアは少し頬を赤らめながら食べ終えたお皿を片付け始める。


「それで結人様。今日のご予定なのですが」


 ()()()という言葉に結人は少し身構える。というのも結人が塞込んでいる間も、魔の王である結人が目を通さなければならない書類やサインをしなくてはいけないものなどが大量にあり、それらの業務をこなさなければならなかったからだ。きっと、塞込んでいる結人をあえて元気づけるためのラビアなりの優しさだったのだろうと思うようにしてはいるが……。


 実際ラビアが心配してくれていたことは事実だ。現に始めの内は食欲がないと言えば食べさせてくれようとしたり、着替えをさせてくれようとしたりとラビアなりに一生懸命考えて行動してくれていた。少しぼーっとしてしまっていた結人の顔を覗き込むようにしながらラビアは小首をかしげる。


「結人様、聞いてます?」

「ああ、ごめんごめん。今日の予定だよね? またサインしなきゃいけない書類とか出てきた?」

「それは今日はお休みにして、亜人や獣人の方々が村が出来たから結人様にもぜひ見てほしいと。ですので、結人様の体調がいいようでしたらそちらに向かわれませんか?」

~おもちろトーク~

ラビア   「こっちの書類の束にサインをおねがいします」

ラプソディア「結人様、こちらの束にも目を通し、実行の許可印をよろしくお願いいたします」

結人    (書類の山で二人の顔が見えない……)


いつもお読みいただきありがとうございます。

今回いかがだったでしょうか? 少しずつですが悪の存在も明かされてきております。リア救出に加え、結人やリガーレが望む平和を掴み取ることはできるのでしょうか? 今後とも楽しみにしていただけると幸いです(^^♪


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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