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~涙するにもほどがある!31~

 うつろな瞳をし、生気などまるで感じ取ることが出来ない顔をして、この国の王は玉座に座っている。座っていると言えば聞こえはいいのかもしれない。というのも、自分の意思で座っているというような感じではなく、まるで誰かに命令されいやいやそこにいるといった感じである。もしくは意思などもたない操り人形を思わせる。

  

 そんな王の前に膝をつき、無駄に派手な衣装に身をくるみ、嫌見たらしいちょび髭をこれでもかというほどきれいに整えたクシロス卿が少し怯えた感じで報告をする。


「このクシロス、へ、陛下の……いえ、御身の前に。魔界大陸の北端にてオルクスと魔力の長時間にわたる行使が確認された件についてご報告をと思い参上いたしました」


 しばらくの沈黙の後、王は眉一つ動かさず口さえも動かすことなく声だけ発した。その姿はまるで精巧に作られた人形が喋っているかのように薄気味が悪く、声は王の物でありながら、まるっきり別人のようだ。何度見てもなれるものではなく恐怖すら感じる。


「ほう。で、例の勇者とやらは見つかったのか」

「いえ、はっきりとした場所までは確認できておりません。ですが、魔界大陸のどこかにいることは間違いないようなので引き続き」


 そこでクシロス卿は殺気よりもおぞましい、怒りの波動を感じ取り思わず顔を上げた。王は相変わらず眉一つ動かした様子などなかったが、そこから放たれている気は、まるで死神の鎌に捕まり逃げることさえできなくなったかのようで、クシロス卿は恐怖のあまり思わず喉を鳴らした。


 だがそこで急に息が出来なくる。まるで誰かに思い切り首を絞められているかのような感覚。だが目線を自分の首元に向けてみても何もない。それでも息が出来ない程締め上げられ、身体が宙に浮くほどに持ち上げられる。手をばたつかせ、必死に抵抗を試みるが、どうすることも出来ない。

 

「私が恐ろしいか? 恐ろしいだろうな。お前の全身から嫌というほどの恐怖が私に伝わってくる。私にとって恐怖というものは一番美味だ。それで、例の勇者が魔界大陸のどこかにいる? 笑わせるな‼ それくらいのこと私も把握している。だが、私が放った千里眼をもってしても未だに見つけることが出来ん。誰かに阻害されているのか……そんなことが出来るとしたら」

 

 声がそこで止まり、クシロス卿の喉を絞めていた感覚がスッと消える。クシロス卿は五十センチほど浮いた状態からいきなり床に落とされ、足から地面に崩れ落ち、喉を抑えてせき込んだ。


「人間は脆い。弱い。醜い。お前たちがアリを踏み潰すように、私からすれば、お前たちはありも同然なのだ。あまり私を幻滅させないでくれ。思わず踏み潰してしまいそうになる。ベリル」


 そう呼ばれ、いまだ倒れこむクシロス卿と王の間の空間が歪んで裂け、そこからベリルと呼ばれた男が現れる。そいつの髪は紫色をしていて、目はうつろで異様な不気味さが漂っている。身長は小柄でクシロス卿よりはるかに低いだろう。何がおかしいのか喉で笑いながら王ではない別の誰かの名前を呼んだ。


「ダスク様、お呼びで」

「やはり人ごときに少しでも期待してしまった私が愚かであったようだ。ベリル、勇者とやらを捕えてこい。私の邪魔だてをするなら殺してやろうかとも思っていたが、奴の持つ力を我が物にすることが出来れば私はさらに望みへと近づくことが出来よう。期待している」


ベリルは猫背の背中をもう一段回丸めて軽く頭を下げ、来た時と同じように暗き裂け目へと姿を消したのだった。


 クシロス卿も何とか息を整え、よたよたと立ち上がりその場を後にしようとしたところで、王、もとい、ダスクと呼ばれていたあのお方に呼び止められる。


「クシロスよ、あの娘は今どうしている?」


 あの娘というのはリアのことだろう。何故生かしたままにしているのか理解に苦しむが、ダスクは彼女に勇者の召喚をさせようとしていることだけは確かなようだった。


「あの娘は今、ルシウスの監視のもと部屋に閉じ込めております。部屋の外へは一歩も出してはいません」

「今はそれでいい。時が来るまで消して逃がさないようしっかりと見張っておけ。もし万が一にでも逃げられるようなことがあれば、死よりも恐ろしい罰がお前をむしばむことになるであろう」


 その言動に、ダスクから醸し出されるオーラに、クシロス卿はさらに暗く深い闇へと飲み込まれていくようなそんな感覚に襲われ、冷や汗が体の穴という穴から噴き出しているのが分かった。気を抜くと今にも倒れてしまいそうで、何とかして声を振り絞った。


「はい、それは重々承知いたしております。ベリル様にお借りした魔物も見張りとしてつけていますので、その点はご安心いただければと思います」


 クシロス卿自身、彼らが人ではないだろうということは察している。だが、逆らえば間違いなく殺されることは目に見えている。そういう点でいえば、すでに彼らの手にかかっていった者たちが少し羨ましくもあったのだった。

~おもちろトーク~

ダスク  「クシロスよ」

クシロス卿「はい。何でしょう」

ダスク  「暇だ。腹踊りでも見せてくれ」

クシロス卿「( ゜Д゜)」


いつもお読みいただきありがとうございます。

今作、いかがだったでしょうか? あのお方がすこし出てきましたが、まだまだどうなるのかこれからが楽しみですね!


先週は投稿が出来ず、申し訳ありませんでした。

仕事の都合で執筆する時間が取れなかったという感じなのですが、自分自身悔しい思いをしております。

今後も出来る限り週一の投稿はしていこうかと思っておりますので、これからも応援よろしくお願いいたします('◇')ゞ




いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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