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~涙するにもほどがある!30~

 教会に身を置くリアは、古の掟により攻撃的魔法を使ってはならないという決まりがあり、そういった魔法とは一切関わりを持ってこなかった。親友で姉妹同然で育ったティスは魔力のコントロールが苦手ということもあり、魔法自体使っている姿を見たことがなかい。カレンデュラに魔力を流す姿を間近で何度か見たことはあるが、それで攻撃魔法が使えるようになるかというとそういうわけではないのだ。


 魔法にはそのものが持つ適正と魔力、それを具現化できるだけの想像力が必要で、魔法を発動させるトリガーとなる呪文も必要不可欠な存在だ。魔法というのは、そういったことを行う上で繊細な魔力のコントロールを要するのだ。コントロールを失った魔力が暴走してしまえば魔力爆発が生じ、民家やちょっとした建物なら吹き飛んでしまうだろう。そうなってしまえば術者は助からない。


 魔法の使い方を独学で学ぶ者もいなくはないが、そう言った点から魔力を学ぶときは先生などにコントロールを補助してもらうところから始めるのが通例だ。だが、今そんなことを言っていられる状況ではないことをリアは重々承知していた。だからこそ、シリカに魔法を教えてほしいとお願いしたのだ。


「魔法を? けど、リアお姉ちゃん魔法使えるんじゃないの?」


 リアは少し困った顔をしながら言う。


「教会の決まりで聖魔法は使えるんだけど、他の魔法には一切関わってこなかったから……けど、ここに閉じ込められている間にも何か良くないことが起ころうとしているような嫌な予感はずっとしてるんです。魔法には適正とかもあるからどこまでできるか分からないけど、来るべき時に向けてできる限りのことはしておきたいなって思って」


 シリカは教えてもいいものか考える。リアが使いこなせるかどうかはさておき、今この場でシリカが魔法を見せて教えることはできる。問題はその先で、もしリアが教会に戻れる時が来ることがあったとしたら、異端に染まった彼女を教会は許してくれないのではないだろうか。


「けどリアお姉ちゃん、いつか教会に戻れる日が来るんじゃない?」


 リアは大丈夫だと言いかけて言葉にならなかった。リア自信そのことは一番よくわかっていたからだ。そんなリアの様子を察してシリカは再度口を開こうとしたところでリアが覚悟を決めた顔で遮った。


「教会は私じゃなくても、ちゃんとした形を作れば信者たちの混乱も最小限で抑えたうえで代わりのものが出来るとおもうんです。それに、もし私じゃないといけないというのなら、教会のあり方というものを少し見直す必要もある気がするから」


 そうなのだ。かつて古の時代、リアの一族を信用しきれなかった王が反旗を翻されてはたまらないと定めたのが()()()()()()()()()使()()()()だったと伝えられている。聖魔法には攻撃的なものが一切ないからだ。


「まあ確かに、この国のあり方については私も疑問に思うところはあるよ。けど、国を変えるってお姉ちゃん一人じゃ厳しいんじゃない?」

「あら、誰が私一人っていったの? 私にはティスっていう気のしれた友達と、結人様っていう素晴らしい方がきっと手伝ってくれます!」


 自分で言っていて、かなり勝手なことを言っているなとリアはクスリとおかしくなる。その様子に気が付いたシリカは目を輝かせ興味津々で目を文字通り輝かせながらリアの手を握る。彼女は幽霊であるためひんやりとした感触がリアの手を包み込んだ。


「なになに? その結人って人、リアお姉ちゃんが好きな人なの?」


 いきなり核心を突く質問にリアは赤面する。一言もそんなことを言っていないのになぜばれたのかしらっ!? しかし、爛々と瞳を輝かせたシリカはより一層詰め寄ってくる。


「ゆ、結人様は、勇者で……その、異世界のお方ですし」

「けど、好きになるのにそんなもの関係ないんじゃないの? いいねー、恋かー。私も肉体があれば恋してみたいな―。ねえ、リアお姉ちゃんは、その人のどこを好きなの?」


 だめだ、聞く耳を持ってくれそうにない。彼女はすでに死んでいる為、生前に色々とやりたかったこともあるのだろう。女の子なのだから恋をして、好きな人と結婚し赤ちゃんを産んで、そんな何気ない幸せを夢見るのも頷ける。もっとも、今のご時世、ほんとに好きな人と結婚できる人というのはほんとにごく一部で、だいたいは生まれた時に許嫁がいるか、政略結婚させられるのが一般的だ。


「どこを好きって言われても、その、結人様は優しいですし、頭撫でてくれたりもしますし。あと、ずっと大切にしてくれそうですし」


 自分で言っていて、リアは赤くなった顔をさらに赤くする。結人のことを自分が好きだと意識し始めたのは結人と離れてからだった。彼いつも優しく笑った時の顔がとても好きだった。結人が優しいのも、頭を撫でてくれるのも自分が特別ではないからというのは承知している。だが、そういったことも含めて()()という存在を好きになってしまったのだ。好きになってしまった以上、自分の気持ちに嘘はつきたくない。


 今のリアでは結人やティスの足手まといでしかない。いつか、彼や、姉妹同然のように育ってきたティスとまた再開できる日に備えて、肩を並べて共に戦うことが出来るように、今は少しでも力をつけてみんなの役に立ちたいとそう願わずにはいられなかった。

~おもちろトーク~

リア 「シリカはどうして亡くなってしまったんですか?」

シリカ「うーん、覚えてないんだけど、けどこれでよかったなって思う」

リア 「どうして?」

シリカ「だって、リアお姉ちゃんにこうして出会うことが出来たから!」


いつもお読みいただきありがとうございます。

前回から新キャラとして幽霊のシリカちゃんが登場しているわけですが、魔法が使えるなんてびっくりですよね! リアは魔法を習得することが出来るのでしょうか?


 皆さんはもしも一つだけ魔法が使えるとしたら、どんな魔法が使ってみたいですか? 感想覧からぜひともお教え願えればうれしいです(^^♪

なかなかに暑い日々が続くかと思われますので、皆様体調等崩されませぬようにご自愛ください。



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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