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~涙するにもほどがある!24~

 洞窟の入り口ではキャッキャ、うふふしていたオピスだったが、中に入ると種族の中でも群を抜く隠ぺいスキルを活かし、するすると洞窟内の()()()音もたてずに進んでいく。しばらく進むとオピスの耳に何やら話し声が聞こえてきた。この気配は人……?


「今回の獲物は儲かりそうなやつが多いですね、お頭」

「そうだな。今回捕まえた例の女は物好きな貴族に高値で売りつける。間違えても奴隷市場に卸すんじゃねえぞ。他の奴は、まあ、たいしたやつはいねえから全員奴隷行きでいいだろう」


 話をしている人間が見える位置まで進んだオピスはそっと様子を窺った。そこは、天井がどこまでも高く、闇に溶け込んで見えないくらいに開けた場所だった。例の話をしていた男たちはやはり人間で、ドーム状になったその部屋の中央で話し込んでいた。その壁伝いには松明がいくつも灯されていて辺りの様子がはっきりと見て取れる。松明と松明の間には、壁を繰り抜いて作った牢屋がいくつも存在していて、牢屋の中には、獣耳を生やした獣人を主とした多種族が何人も入れられていた。女子供が多い印象だ。順番に確認していると一人耳のとがった普通の人などでは到底及ばないくらい整った顔立ちの髪の長い青年のエルフが捕まっているのが確認できた。


「結人様が探しているような人族の女は見当たらないわね。それにしてもエルフが捕らえられているなんて何かの間違いじゃないのかしら?」


 オピスの懸念はもっともで、エルフは魔族や人族、獣人族などとは違い妖精族に値する。この世界の奴隷たちは皆主人の命令に逆らえないようにクリエンテラと呼ばれる隷従の紋を体のどこかに刻まれる。それは魂を縛り付ける呪詛のようなもので、皆種族こそ違えど、魂の根源が同じということの証明でもある。だがしかし、エルフにはそれが効力を発揮しない。故に妖精や精霊は魂の本質や生まれ持った核となる部分が根底から違うのである。


「妖精や精霊なんかはクリエンテラ(隷従の紋)なども効かないでしょうに……捕まっているのには何かわけがある? どっちみちこのままここにいるわけにはいかないわね。戻って結人様に報告を」


 その時だった。オピスの背後に()()()()()が生じ、「グラキンケア(氷槍)」という喉を押しつぶしたような声とともに天井に張り付いていたオピスめがけて凍てつく氷の魔法が放たれた。それは、槍の穂先のようにとがっていて、刺されば致命傷を負うか、死につながることは間違いなかった。


 だが、オピスも油断をしていたわけではない。突然の不意打ちだったので意表を突かれはしたが、彼女は「アネコス(風壁)」と呪文を唱え、オピスの身体を取り巻くように発生させた風の壁を創り出し、飛来して来た数本の氷を叩き落した。オピスは隙なく、次どこから攻撃が来てもいいように身構えたのだが次の攻撃がくる様子はなく、今の魔族の気配も周りと完全に同化していてどこにいるのかよくわからない。見失った? とにかく一度外に出て結人様に報告をしなければ。攻撃してきたのは間違いなく魔族だ。飛んできた魔法もオルクスから成り立っていたので間違いないだろう。魔族と人間が同じ場所にいて、同じ魔族であるオピスに攻撃を仕掛けてきたということは、何かしら裏があるに違いない。オピスは気を引き締めたままもと来た道を戻っていったのだった。





 洞窟の前まで移動し、草むらに隠れるようにして結人達三人はオピスの帰りを待っていた。結人は落ち着きなく草むらから顔だけのぞかせてはひっこめて深呼吸をするといった動作を繰り返していた。ティスはある程度こういったことにも慣れている為そこまで辛くはないが、不慣れな結人は精神をすり減らしていることだろう。 

 

「ラプソディア、オピスが気配を殺すことに長けているのは身をもって知ったわけだけど、オピスよりさらに気配を消せるやつとか、気配を見破る力に長けている魔族ってのもやっぱりいるんだよね?」

「ええ、それはもちろん。魔族とひとくくりにしてもその種類はかなりのものが存在すると言われています。ですが、オピスの能力は魔族の中でも上位に入ることは間違いないので、よほどのことがない限りは大丈夫ですよ」


 そうラプソディアに言われても胸の奥でずっと何かがざわつき、嫌な想像が頭から離れないでいた。そんな中ティスが洞窟の方を見ろと合図をくれたので、皆でそちらを注視していると、何かを警戒しながらよたよたと洞窟から出てくるオピスの姿を見つけ安堵する。


 だが、どうも様子がおかしい。普通偵察を終えたならその場になどとどまらないだろう。ましてやオピスが今いる場所は洞窟の入り口付近なのだ。だが、オピスはそこに立ち止まったまま動かなくなってしまった。


 その時、動けないでいるオピスの背中側から胸の方へと何かが貫通し引き抜かれる。手だ! 何者かがオピスの胸を刺し貫いたのだ! 鮮血をまき散らしながらオピスの身体はその場に力なく倒れて、渡されていた鱗はさらさらと灰のようなものに変わって消えたのだった。

~おもちろトーク~

オピス 「私の気配に気が付くなんてあなた何者?」

ミミック「・・・」

オピス 「返事してくれなきゃ、私が一人でしゃべってるおかしな人みたいじゃない」


いつもお読みいただきありがとうございます。

いったいオピスの身に何が起こってしまったのか!? オピスを刺し貫いた魔族とはいったい何者なのか!?

次話もよろしくお願いいたします!


最近私のスマホが壊れかけているような……(´;ω;`)

というのも、今までつながっていたブルートゥースがつながらなくなったり、Wi-Fiつないでいるとメッセージ送受信しなくなったり……つらたんです(汗)。



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間と魔族が協力してる…?隷従の紋<クリエンテラ>など、興味深いです。 それと魔法!ファンタジーなら、やっぱり魔法!氷に風、素敵。 [気になる点] 以前、結人が無詠唱で魔法を放った事ありま…
2022/06/06 06:43 退会済み
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