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~涙するにもほどがある!23~

 ノエルに跨るティスの腰辺りにしがみつきながら結人はオピスが出かける前に言っていたことを思い出していた。魔王なのだから命令すれば誰も逆らえないと……。でもそれって、俺が死にに行けと言えば皆そうしてしまうということなのだろうか? それは、すごく寂しいなと感じる。彼らが魔族だから、弱肉強食の世界だからというのももちろんあるだろうが、魔族も人も一度死んでしまえばそこで終わりなのだ。できる限り自身の命は優先してもらいたいと切に願う。


 そんな中ティスが指さす方に目を向けると、そこには太陽に照らされ光り輝く海が広がっていた。潮の懐かしい匂いが鼻をくすぐり、思わず深呼吸してしまう。ラビアが書いてくれた地図を思い出し対岸にアクアウルプス(水の都)がある大陸が見えないかと目を凝らしてみたが、うっすらとそれらしい影が見えるだけで、どれと断定できるわけではなかった。地図上だとかなり近いように思ったが、実際にはかなりの距離があるようだ。


 ラプソディアは例のごとく悪魔のような羽を羽ばたかせて少し前方を飛んで行く。オピスはどのように移動しているのか見えているわけではないが、本人曰く地上から普通に追いかけるから大丈夫とのことだった。


「結人殿、例の洞窟が見えてきたので、この辺りで下へ降りるぞ。振り落とされないようしっかりとつかまっていてくれ」

 

 その言葉を合図にノエルは急降下を開始したので、体がふわっと浮き上がるあの妙な感覚に襲われながらリア救出作戦に意識を集中することにした。






 ティスはあっという間にするするっとノエルから降りてしまった。結人がノエルから降りているとオピスが向こうの茂みからやってくるのが見えた。想像はしてたけど、あの大きさで蛇のような動きをされると、見ていて気持ちのいいものではないなと思う。同じことを思ったようだが、ティスは思いっきり口にしていた。


「少し気持ち悪いな……。だがノエルについてこられるスピードは驚愕に値する」


 いや、確かに思ったけど、もうちょっと言い方とか気を使ってやれよと思わなくもない結人であったが、今までのオピスもオピスだったなと思い直し突っ込まないことにした。


「結人様、では予定通りオピスに偵察に行ってもらうということでよろしいですか?」


 ラプソディアはここから百メートルくらい離れたところに木々の間から見える洞窟を指さしながら確認する。結人はラプソディアに頷き返すとオピスに向き直った。


「オピス、一つ約束してほしい。何かあったらまず第一に自分の命を優先すると。そして絶対に無茶はしないと」


 それは一つじゃないのでは? とみなが突っ込みを入れたかったに違いないが、結人の真剣な雰囲気に飲み込まれ誰も何も言わなかった。


「オピスだけじゃない。ここにいる全員自分の命を最優先にしてほしい。リアの救出も大事だけど、皆揃ってこそだと思うから。遠足は帰り着くまでが遠足だっていうだろ?」


 異論はないようで、皆頷き返してくれた。


「遠足という言葉の意味は分かりませんが、結人様が言わんとすることは心得ました。それではオピス、作戦通り偵察をお願いします」

「少し変わった魔王様の頼みだから自分の命を優先にさせてもらおうかね」


 ほんとに変わった魔王様だよ。などと言いながらオピスはどこか嬉しそうに音もなく去っていった。おそらく洞窟へは回り込んで接近するようだ。オピスが偵察に向かってくれている間に残っている三人でリア救出の作戦をもう一度確認しておくことにした。


「じゃあもう一度確認しておくけど、自分の命を最優先に、敵でもできる限り殺さないでほしい。これは単純に命だからって言うのもあるけど、ここからリアがすでに連れ出されていた場合など話を聞けるものが残っていないと手がかりがなくなっちゃうから」

「まったく、結人殿は無理難題を平気で言ってくれるな」


 ティスは口ではそう言っていたが、どこか口元に笑みを浮かべている。ラプソディアはそんな結人とティスを見ながらくすくすとおかしそうに笑いながら、一枚の黒光りする鱗を差し出してきた。


「結人様、これを。城でオピスから託されていたものです。私に何かあった時は、鱗が形を保てなくなるはずだと。その際の判断を結人様に託すと言っていました」


 渡された鱗は五百円玉程度の大きさで、ぱっと見黒色なのだが、光の当たり方次第で緑や青色、紫と変わりとても綺麗だった。結人は渡された鱗を大事に握りしめ、洞窟の方へ向き直りオピスの無事を祈った。





 洞窟の周りには見張り一人いなかったが、オピスは念のため洞窟の上部から中を覗き込むような形で様子を伺っていた。身体は擬態で周りの風景と同化しており、種族特有の隠ぺいのスキルで完璧に気配を消している。


「そうだわ。無事にリアとかいう人間を助け出して来たら、ご褒美に結人様と愛の契りを結べないかお願いしてみようかしら」


 オピスの思考はどうやら結人のことでいっぱいのようで、キャハハハと笑いながら楽しそうに洞窟の中へと姿を消していったのだった。

~おもちろトーク~

ラプソディア「結人様、あちらをご覧ください」

結人    「あれがリアが連れ去られた洞窟か」

ティス   「いや、ラプソディアはどうやらその手前の目玉キノコを言っているようだぞ」



いつもお読みいただきありがとうございます。

結人達一行はリア救出と生きこんでいるが、この先いったいどうなるのか。次話もお楽しみいただけると幸いです。


今に始まったことではないのですが、肩こりに悩む毎日(;^_^A

どうにかして改善したいものですね(笑)何かいい方法などがあればお教えください。



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お答えできる範囲でお答えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ救出作戦開始!結人は優しいなぁ…。 うふふ、何気にティスにひっついてる事に気付いてるのかな?普通なら「ラッキー!」だけど結人は考えてなさそう。そういうところも好感持てます。そういえ…
2022/05/30 08:36 退会済み
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