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~涙するにもほどがある!17~

 クシロス卿が出て行った後、吊るされていた鎖が下ろされ倒れこむリアを抱きかかえるような形でさっきの人物が受け止める。顔を間近で見ることが出来て初めて誰か気が付いた。


「ルシウス。あなた……でしたか」


 ルシウスと呼ばれたこの青年は、藍色の髪と瞳をしていて、女性であれば振り向かずにはいられない美貌を持った好青年だ。体には重々しい鎧を身に着け、その鎧の胸のあたりには十字架をドラゴンが守るようにして絡みついている聖光教会の証であるエムブレムが輝いている。腰にはネア・セリニと呼ばれる魔法剣を帯剣していて、これはかつてティスの師匠だった人のものを預けられているというような形だ。ティス本人は好きにしてくれて構わないと言っていたが、むげにできるはずもなく使わせていただいている始末である。


 彼はリアが最高司祭として聖光教会に仕えていた際、側近の騎士としてよく働いてくれていた。リアがもっとも信頼を寄せる者の一人である。といってもティスの次位にだが。


「駆けつけるのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。リア様がご不在の間、何とか聖光教会の威厳を保ち続けてまいりましたが、私が不甲斐ないばかりにそれもいつまでもつか……そんな事より今はここから出てゆっくり休んでください。部屋をご用意してあります」


 リアはずっと気になっていた聖光教会の現状を聞いて少し安心するとともに、ルシウスに対して深く感謝した。だが、安心したせいもあってかリアは声を発することなくルシウスの腕の中で深い眠りへと落ちていったのだった。





 リアが目を覚ますとそこはふかふかのベッドの上だった。ボロボロになっていた祭服は誰かが着替えさせてくれたのか、白いワンピースのような服に着替えさせられている。胸のところには、聖光教会の証でもある十字架を守るドラゴンのレリーフが金の刺繍で描かれていた。ずっと眠っていたせいで身体が重だるかったが、気分はすっきりとしていた。手首に食い込み血が流れていた傷跡は回復魔法を使ってくれたのか、傷跡一つ残っていない。


 リアはベッドから立ち上がり、自分が靴を履いていないことに気が付く。ふかふかの絨毯の感触が足の裏に直接伝わり、気持ちがいいような少しこそばゆいような不思議な感覚だ。リアは胸に手を当て少し不安そうにあたりを見渡してみた。部屋自体はそれほど広くはなかったが、石造りの壁面に埋め込まれた窓からさしてくる太陽の光がこれほどまでに暖かく感じたことはないと、改めて生きていられたことに感謝した。今は火は灯されていなかったが暖炉があり、その上にも聖光教会を象徴するレリーフが飾られている。どうやらここは聖光教会の中にある一室のようだ。


「だれか、いませんか? ルシウス?」


 声を掛けるとドアが二回ノックされルシウスが顔をのぞかせる。その顔を見た瞬間何とも言えない安心感がリアの胸に溢れかえった。


「お目覚めですか! 今すぐお食事を用意します。リア様は五日間も眠っておられたのです。さすがの私もご心配いたしました」

「私はそんなに眠っていたのですか!? どおりでお腹がペコペコなはずです。あの、お食事をしている時で構わないので今この国の状況や何が起こっているのかなど教えていただけませんか?」

「はい。現在リア様が置かれている状況なども含めてご説明いたします。まずは食事の準備をしてくるので、少しの間待っていてください」






 ルシウスは意外とすぐに銀のトレーにお皿を乗せて帰ってきた。


「リア様、久しぶりの食事なのです。よく噛んでゆっくりお食べください」


 小テーブルをベッドの横へもってきて、そこへ運んできてくれた食べ物を見てみると、昔ここでよく食べていたパンとスープだった。パンはグリコパタータという甘い野菜を練って生地に織り交ぜているのでパン自体がほんのりと甘く香ばしいのだ。それと一緒に持ってきてくれたスープにも見覚えがあった。中に七種の野菜が入ったスープでほっこりとする味わいに誰しもが思わず気を緩めてしまう、そんなスープだ。


 リアはいただきますと祈りを捧げ、一口パンを千切り食べる。その懐かしい味わいに思わずこみあげてくるものがあり必死にパンをかむことに集中しその思いも一緒に飲み込んだ。スープも昔と変わらずにとてもおいしかった。


「では食べながらで構わないので、現状リア様が置かれている状態からお話しします」


 ルシウスは真剣な面持ちで少し声を抑えて説明してくれた。


「現在あなた様は、王都ゲネシス国王アドルフ様の命により捕えられています。王の目的は表向きは勇者の再召喚ということです」


 国王の命令というのはとても信じられなかった。なぜなら、リアが知っているアドルフ国王はとても聡明なお方で誰に対しても優しく、皆に慕われる誰しもが理想とするお方だったからだ。とても誰かをさらい幽閉しようなどと考える方ではない。


「ルシウス、表向きは、ということは裏の真意があるということですか?」


 リアの問いかけにルシウスは深く真剣な面持ちで頷いたのだった。

~おもちろトーク~

ルシウス「では今の現状を……リア様!?」

リア  「ひゃんとひいてまふよ」

ルシウス「食べ物は逃げないので少しずつでお願いします」



いつもお読みいただきありがとうございます。

クシロス卿が憎い!と思った方もいたのではないかと思いますが、無事にリアが保護されて一安心ですね!

この世界の人物や食べ物、出てくる装飾品など意味のあるものが多いので、もしよろしければその辺りも注意してお読みいただけるとさらに面白いかもしれません♪


日頃、評価やブックマーク、いいねやご感想などほんとにありがとうございます。

皆様の声援が執筆するうえでこの上ない力となっております!


小説に関係のない質問なども受け付けておりますので、良ければご感想時にでもお気軽に書いていただければと思います。また、Twitterもやっております(自作品の宣伝、他作品様の応援など)。フォローなどしていただけると幸いです。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] リア…まずは良かった…。ルシウスか…敵か味方か…。王の真意やいかに! [気になる点] 前回は質問に答えて下さり、ありがとうございました。作者様の作品の映像的な部分がわかった気がしました。も…
2022/04/18 05:12 退会済み
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