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~涙するにもほどがある!7~

「ああ。それは私も考えていた。奴らが何者なのかわからないが、ただの人ではあるまい。あの強さもだが、体からは魔物の触手のようなものが生えてきたし、最後にリアを連れ去った老人からはまるで生気が感じられなかった」

「人じゃないというのも手掛かりになるか。もう一つ確認なんだけど、あいつらが唱えてた呪文って、普段リアやティスが使うものとは違ってたよね? 呪文って種族によって違うものなの?」

「種族によって使う言葉が違うという点で言えばそうなるのかもしれない。だがこの場合、術によって違うといったほうが正しいだろう。魔法、精霊術、呪術などが代表としてあるが、それらは唱える語がそもそも違う。それは根本となる力が違うからだと言われている。だが、あいつらが唱えていた術の系統もわからないうえに、言語も聞いたことがないものだった」


 ティスがこれ以上分からないとなると残りはラプソディアだ。これは結人の勘だが、ラプソディアは質問をすればちゃんと答えてくれる気がする。ここは、変な意地を張らずに聞くべきなのだろう。結人はひとつ小さくため息を吐き出し、ラプソディアに歩み寄った。


「あの、ラプソディア()()? 色々とお尋ねしてもいいでしょうか?」


 結人は相手を刺激しないよう丁寧に物腰柔らかく尋ねるよう努力したつもりだったが、緊張のあまり棒読みになってしまったうえに、誰がどう見てもイケメンの執事という見た目とは裏腹に、醸し出されるあまりの威圧感に思わず敬語になってしまった。この威圧感怖すぎるんですけど! 信じられないとでもいうかのように慌てたティスが間に割って入り、声を潜めて結人をラプソディアから遠ざける。


「結人殿! 奴は魔族だぞ! 魔族に声をかけて無事でいられる保証などどこにもないし、仮に会話になったとしてもリアが連れ去られるのを黙ってみていたような奴だ! ましてや、襲ってきた奴らの仲間じゃないと言い切れる保証もない」


 そこまでの会話がどうやら聞こえていたのだろう。ラプソディアがいきなり会話に入ってきたので結人もティスも少し気まずい。


「そう警戒しないでいただきたい。といっても人族と魔族、その垣根が深いことは重々承知しているのでいきなりは無理なご相談かもしれませんが。彼女、リアさんでしたか。彼女を助けようとしなかったのは事実ですのでどう思われようと構いません。ですが、私は魔族の代表としてリガーレ様……結人様をお迎えに来ているのです。立場上簡単に人族の味方をするわけにはいかないのですよ」


 というか、思った以上に普通に会話になる。それに、かなり話しやすいと感じてしまった。ティスは怪しいセールスでも見るかのようにいまだ信用していない目をしていたが、一応話は聞いているようだ。


「それとひとつ言っておくと、私はあいつ等の仲間ではありません。あいつ等からは、人族や魔族とは違う気配を感じました」

「人でも魔族でもない……? ラプソディア、他に感じたことでも、わかったことでも何でもいいから話してくれないか?」


 結人はリアを助ける手がかりが少しでも見つかればと思い懇願する。ラプソディアは押し黙ったまま顎に手を当て少し考えこんだ。こういうさりげない仕草の一つ一つが絵に描いたように様になっている。


「そうですね。私個人としては色々とご協力して差し上げたいのですが、先ほども言ったように魔族の代表として来ているのです。結人様、私と魔王城までお越しください。そこで魔王の儀を執り行えば私が味方しようが誰も魔王様に文句は言いません。それに、城にはエテルノと呼ばれる、いわいる書庫がありますので何かお役に立てるかもしれません」


 ラプソディアと話す感じ、少なくとも敵ではないように感じる。仮にこいつのいうことが本当だとしたら、魔界へ行ってリアの居所を探るのも悪くはないのではないだろうか? 


「それはつまり、俺に魔王になれってことか?」

「はい。リガーレ様のお力をその身に宿した時点であなた様はすでに魔王としての素質をお持ちです。普通のものは強すぎる力に自我を保ってはいられないでしょう」


 ティスの様子を窺ってみると、黙ったままこくんとひとつ頷く。どこまでも共に! という強い意志が感じられてとても頼もしく安心できる。


「俺たちが魔族の領地に行って無事でいられるという保証は? 魔族と人族、あまり友好関係ではないと聞いている。まして彼女は普通の人間だ。仲間を死地へ送り込むような真似は出来ない」


 だが、ラプソディアはそんなことかとでも言いたげに少し肩をすくませる。


「それは大丈夫ですよ。あなた様が魔王の儀を執り行えば、手出しをするものは誰一人としていません。儀を執り行う祭壇へ向かうまでは、私の名のもとそこの彼女も保護するように配慮いたしますので」


 リアが連れ去られた以上、助け出すのは急務だ。リアの居所を探し出すことが出来るというのであれば魔王にでも何にでもなってやる。リアは結人が魔王になったなんて言ったら怒るだろうか? それとも笑って流してくれるだろうか? どちらにしても無事に助け出し、また声を聴くだけだ。


 結人は一人静かに胸に誓ったのだった。

~おもちろトーク~

ティス   「結人殿! イメージイラストを描いてもらったようだな!」

結人    「そうなんだよ。見るたびに顔がにやけちゃって」

ラプソディア「どうやらTwitterの作者様のページで見られるみたいですよ」


いつもお読みいただきありがとうございます!

おもちろトークでも書かせていただきましたが、主人公である結人のイメージ画像を描いていただけました!Twitterで「ゆるふわ@小説家になろう」と検索していただければ、イメージ画像を見ることが出来るので気になる方は是非お越しください。ちなみに、他作品の応援や、自作品の宣伝が主なツイートとなっております。


「いいね」機能が追加されたということで、早速つけていただけて嬉しい限りです。評価やブックマーク、誤字報告もしていただき、いつもほんとにありがとうございます。

今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします♪


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― 新着の感想 ―
[良い点] 三人の話し合いの様子、緊張感が伝わってきていいですね。人族でも魔族でもない…あの三人の正体やいかに! [気になる点] イメージイラスト、拝見させて頂きました! 結人…なんかスタイリッシュで…
2022/02/07 06:04 退会済み
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