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63話 ご注文は

お陰様で、本日で連載一周年を迎える事が出来ました。

ここまで辿り着く事が出来たのは、読者様の応援があった為に他なりません。

誠にありがとうございます!

今後ともイフリートの建国日記をよろしくお願い申し上げます。

 

 ドラムとグレイン達が熱い握手を終えた直後、店の扉がゆっくりと開く。


「おはようございますニ」


 私服姿のニャイがラビと挨拶を交わす。

 その姿にオルガは見惚れていた。


「おはようニャイ! アンタにお客さんが来てるよ!」

「お客さんニ?」


 ラビがオルガの座るテーブルを指差すと、ニャイはゆっくりと視線を向けた。

 するとニャイは自分を凝視しているオルガと目線が合う。


「あっ……」

「ニャッ!?……」


 だが、ニャイは顔を赤らめオルガから目線を逸らすと、そそくさとスタッフルームへ駆け込んでしまった。

 ニャイの所作にドラムとグレインは口元を緩める。


「おい、見たかニャイの顔。ありゃ間違いなくオルガに惚れてるぜ!」

「うむ。確実に脈はあるのである。後は……」


 ドラムは横目でオルガを見遣る。

 するとオルガはピクリと身体を震わせた。


「一歩踏み出すだけである!」

「むっ……」


 そして、ばつが悪そうに目を逸らす。


 そんなオルガを他所に、ドラムはグレインへ熱い視線を向けると、グレインはドラムへ向け強く頷いた。

 二人の仲を取り持とうとする意気込みが伺える。


「ホール入りますニ!」


 その直後、着替えを終えたニャイがスタッフルームから姿を現わす。


「ほれ、オルガ! 行くのである!」

「おう、オルガ! 今しかねぇぞ!」

「う、うーむ……も、もう少し待て。もう少ししたら……」


 だが、オルガは二人から背中を押されるも、腰を上げようとはしない。

 テーブルの左右へ視線を行き来させているオルガに痺れを切らしたドラムは席を立った。


「おーい! 注文である!!」

「はーい、今行きますニ!」


 ドラムはニャイへと手を挙げると声を張り上げた。

 オルガは目を見開きドラムを凝視している。

 心の準備が整っていないオルガは慌てて姿勢を正す。

 その間にもニャイはドラム達のテーブルへ向かってくる。


「さあ、今である!」

「そうだ! 今しかねぇ!」


「お待たせしましたニ!」


 ニャイはオルガに目を合わさぬよう、ドラムから注文を取ろうとする。

 だが、ドラムは黙々とオルガを睨む。


 《ここで行かねば男ではないのである! 》

 《いや、まだ心の準備というものが……》


 二人は思念通話を繰り広げるが、側から見ればドラムがオルガを睨んでいるだけの状態だ。

 ニャイは不思議そうに首を傾げている。


 《いい加減にするのである!! ここで動かなければ帰りは置いて行くのである! 値段の高〜いワイバーンタクシーで降りて来れば良いのである!! 今を逃せばもう知らぬ! 後は一人で何とかするのである!!》


 ドラムはオルガへ最後通告を終えると、静かに目を閉じた。

 黙するドラムにニャイは苦笑し困惑している。


「ま、また何かありましたら呼んでニ……」


 ニャイは踵を返すとカウンターへ向け歩き出す。


「ま、待ってくれ!」


 だが、オルガはニャイを引き止めた。

 ドラムはカッと目を見開き、グレインは力強く拳を握りオルガを見つめる。

 オルガはゴクリと唾を飲み込むと重い口を開く。


「ご、ご注文は何かニ?……」

「オ、オレ……きみが好きだ! きみの事が頭から離れない! オレと……オレと付き合ってくれないか!」


 顔を真っ赤にするオルガと、状況が飲み込めずキョトンとするニャイ。

 だが、次第に内容を理解すると、ニャイも顔を真っ赤に染めていく。

 そして客の全員が静かに二人の動向を伺っている。


「ニャニャッ!? こ、これは凄いご注文が来たニ……」


 オルガは真剣な表情でニャイを見つめ、ニャイはオロオロと辺りを見回す。


「ニャ? ニャニャ!? みんな……こっちを……見てるニ……ッ」


 ニャイは全員の視線が自分達へ集中している事に気付く。

 そして緊張のあまり目を回し、足が竦み倒れてしまう。


「ニャァァァァ……」

「おっと……」


 だが、バランスを崩したニャイをオルガが抱き抱える。

 その姿はまさにお姫様抱っこの状態だ。


「すまない、オレが変な事を言ったばかりに……今の事は忘れてくれ……」


 オルガが申し訳無さそうに肩を落とすと、ニャイは両手で顔を覆いながら呟く。


「……ご注文、承りましたニ」

「……えっ?」


 ニャイの返答にオルガは目を丸くし、固まってしまう。


「……つ、つまり、それは……」

「これから……よろしくお願いしますニ……」



『『うおおおお!!』』



 ニャイはオルガの告白を承諾した。

 直後、静寂な店内に歓声や指笛が鳴り響く。


「やるじゃねぇか、オルガ!」

「これは目出度いのである!」

「アンタ、よく言ったよ!」


 グレインやドラム、そしてラビがオルガの肩を叩き、オルガは照れ臭そうに頭を下げた。

 ニャイは更に顔を赤くするも、手の隙間からは幸せそうな表情が垣間見える。


 暫くして歓声が落ち着くと、オルガはそっとニャイを降ろした。


「ニ、ニャイ……これから、よろしく頼む……」

「ウ、ウチの方こそ、お願いしますニ……」


 ニャイはオルガの胸にそっと顔を埋めると、オルガはニャイを優しく抱きしめる。

 そして店内は再び歓声が響き、二人の関係を祝うのだった。


目出度めでてぇな! 目出度ぇじゃねぇか!」


 ふとグレインが声を上げる。

 全員の視線がグレインへと向けられる。


「なぁみんな! こんな時は飲むしかねぇよな! 飲めよ! 今日は俺の奢りだ!!」

『『うおおおおおおおお!!!!』』


 店内は三度歓声に包まれる。

 ドラムとグレインはオルガへ肩を組み、笑顔で二人の門出を祝った。


「ふう、こりゃあ今日は忙しくなるねぇ!」


 そしてラビは静かに溜息を吐くと小さく口元を緩ませた。

 オルガは客達に次々と声をかけられる。

 揶揄われ、諭され、人生とは何かと熱く語る者も居た。

 そのいずれの話にもオルガは真剣な表情で聞き入り、その様子にグレインは苦笑し、ドラムはうんうんと頷く。

 そんな店内をニャイは忙しなく駆け回り、料理や酒を運んでいく。

 こうして“人間お断り”の居酒屋は今日も獣人達の他愛のない会話が響き、異世界の夜は静かに更けていった。


 ※ ※ ※


「グレイン、ご馳走さん!」

「おう! 気ぃつけて帰れよ!」


 閉店時間となり、客達はグレインへ挨拶を交わすと各々の家路へと就いていく。

 そんな中、ドラムはオルガと肩を組み、酔い潰れたオルガを介抱している。


「うおおおお! ドラムよぉ! オレはぁ! 幸せだぁ!!」

「うむ。それはもう50回は聞いたのである……」


「うおおおお! グレイン! オレはぁ! 幸せだぁ!!」

「おうおう。よ、良かったな……」


「うおおおお! ラビぃ! オレはぁ! 幸せだぁ!!」

「こんな時間に叫ぶんじゃないよ。近所迷惑じゃないかい!」


「うおおおお! ニャイぃ! オレはぁ! オレはっ! うわぁぁぁぁん! ニャイィィィィ!」

「大声を出さないで欲しいニ。恥ずかしいニ……」


 グレイン、ラビ、ニャイの四人は悪酔いするオルガをジト目で眺めていた。

 だがドラムは隣で暴走する仲間を余所に、ラビへと視線を向ける。


「ラビよ、何故我輩達に協力してくれたのであるか?」

「ん? ニャイは頑張ってるからね。昼間は自分の研究を、夜はアタイの店をね。この子はアタイの家族さ。家族の幸せを願うのは当然の事だろう?」


「うむ。我輩も仲間には幸せになって欲しいのである。協力、感謝するのである!」


 真剣な眼差しで感謝を述べるドラムに、ラビは恥ずかしそうに目を逸らす。


「よ、よしなよ。そんな水くさい。それにね、アンタ達はトールの……魔王の側近なんだろう? そんな優良物件なかなか無いからね。さっさと抑えておきたいのさ!」

「そうであるか……」


 しっしっしと前歯をチラつかせながら笑うラビをドラムは苦笑しつつ、内に秘めたラビの優しさに感謝した。


「では、我輩達も帰るのである!」

「おう! 気ぃ付けろよ!」

「ウッカリ落とすんじゃないよ!」


 そして二人に見送られながら、ドラムは腕にオルガをぶら下げて海上都市サッティンバーグの宿屋へ向け飛び発つ。


「うおー……オレはぁ……幸せ……だぁ……」


 ふと足元の仲間を見遣ると、オルガは既に眠りに就きながら寝言を口にしている。

 その様子にドラムは目を細めながら。


「うむ。来て良かったのである!」


 静かに呟く。

 そしてドラムは宿屋へ戻りオルガを寝かせると、自身も直ぐに意識を手放した。


 ――こうして、異世界の一日目が終了した


今回もお読みくださりありがとうございます。

ブックマークや評価を頂けると嬉しいです。


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ありがとうございます!

次回の更新は20日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一周年おめでとうございます! そして、オルガもおめでとうぅう!!
[良い点] おおおおおーっ! オルガおめでとう! 自分のことのように、うんうんと感慨深くうなずきました。 幸せな恋愛はいつ見てもいいものですね。 連載一周年、おめでとうございます!
[一言] 連載一周年おめでとうございます! そしてオルガアアアア!!!! 今回のMVPはドラムですね( ˘ω˘ )
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