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5話 殺されそうになったんだ。その時に俺は

 俺達は、居酒屋のような店に来た。

 しかし、店頭で何やら揉めている……


「おい兄ちゃん! 料理がマズかったらタダにするのは常識じゃねーか!」

「そうだそうだ! 兄貴の言う通りだ! タダにしろ! タダに!」


見るからにチンピラな二人の人間が、店員にイチャモンをつけている。


「困りますよお客さん…… ウチも商売なんですから……」


 店員は及び腰だった。

 だが俺は腹が減っている。

 何だか知らんが早く飯が食いたい。

 だから助けてやる事にした。


「ちょっとお二人さん?」

「「ああん?」」


 チンピラ共は俺に掴みかかって来たので、俺は敵意を無くし全身炎ぜんしんほのお化した。


「ひっひぃ! 兄貴! 燃えてる!」

「うっおう! お前も燃えてんじゃねーか!」


 二人は慌てて炎を消そうとする。

 無駄だけどね、炎出してるの俺だし。


「てっ、てめえ! 何をしやがった!」

「兄貴ぃ! まずいっすよ!」

「お兄さん達、そろそろ帰った方が良いんじゃない? お店の人も困ってるよ?」


 そして全身炎ぜんしんほのお化を解除すると、炎は跡形もなく消え去った。


「おっ覚えてろ〜!」

「待ってよ兄貴ぃ〜!」


 チンピラ共は鼻水を垂らしながらヨロヨロと逃げていく。


「あっ、ありがとうございます! どうぞ中へ! お礼させていただきます!」


 俺達は店の中に案内され、四人掛けのテーブルに座ると、チャーハンのような物が出てきた。


「こっ、これは…… チャーハン?」


 俺が不思議そうに呟くと、店員は説明を始める。


「ハンチャーという私の創作料理です。コメを火で炒めて具材を混ぜました」


 どう見てもチャーハンだった。

 とりあえず一口食べてみよう。

 俺達は同時にハンチャーを口に入れると……


「「「「まっず!」」」」


 俺達は全く同じタイミングで同じ事を言った。

 あのチンピラが文句を言うのも頷ける。

 俺は不味すぎる料理が頭に来たので店員に詰め寄った。


「おい! 何だこれは! まず過ぎるぞ!」

「おかしいですね…… 私は美味しいと思うのですが……」


 どうやら店員の味覚が壊れていたようだ。


「こんなものは食えん! 厨房を貸してくれ!」

「わっ、わかりました。食材もありますので自由に使ってください……」


 コックの性だろうか?

 俺は料理がまずいことは許せない。

 だから自分のチャーハンを作る事にした。

 俺の様子を見て店員は肩を竦めている。


 厨房へ入り材料を確認した。

 コメ、卵、青ねぎ、醤油、塩、こしょう、ごま油、そして紫色の謎の肉。


「おい、これは何の肉だ?」

「はい、これはナゾの肉です」

「おっおう?……」


 どうやらこの世界にはナゾという生物がいるらしい。

 気味が悪いが食えない事は無いだろう。

 不思議に思いつつもナゾ肉を材料に加えた。


 材料を切り、油をフライパンへ投入する。

 ここで俺は思う。


(片手だけ炎化出来るのかな?)


 意識を集中すると、片手だけが燃え上がる。

 どうやら出来るらしい。

 気を良くした俺は、調子に乗って敵意を薄めた炎を豪快に放つ。

 

「ひいい! 店が燃えるー!」


 燃え盛る炎を見て店員は腰を抜かす。

 当然だが店を燃やす気なんて全くない。

 豪快に燃え上がる中、フライパンに程良い敵意を込めてコメを炒めた。

 そしてチャーハンが完成する。


 俺は中華料理店でコックをしていた。

 チャーハンなんて寝ながらでも作れる。

 勿論味も絶品だ。


「あんたも食え!」


 店員を含めた四人の前にチャーハンを出す。

 全員が一斉にチャーハンを口に入れた次の瞬間……


「「「「ん!……」」」」

(勝ったな……)


 俺はドヤ顏をした。


「トール様! なんなのさ! この食べ物は!」

「オイラこんなに美味いコメなんて食った事ないっす!」

「オレは…… 感動しているッ!……」

「私の料理は……」


 どうやら店員は俺の料理との格の差を実感したようである。

 まさかこんな所でドヤ顏が出来るとは思わなかった。


「幾らでもあるぞ! どんどん食え!」


 俺も着席し、大量に作ったチャーハンを頬張る。

 やっぱり美味い! そんな幸せに浸っていると……


「参りました! これはサービスです!」


 店員が大量の酒をテーブルに置く。


(後でチャーハンの作り方を教えてやるか)


 そう思いながら酒を口にする。

 若干味に違いはあるが、普通のビールだった。

 テーブルを見渡すと、オルガとダルスは笑顔でチャーハンを頬張りながら酒を飲んでいた。

 そんな中、フォンだけは酒に手をつけない。


「フォン、どうした? 酒は嫌いか?」

「いや…… 実はアタシ、お酒飲んだこと無いんだわさ……」


 フォンは未成年に見える。

 この世界でも未成年飲酒はダメなのだろう、そう思ってオルガに聞いてみる。


「なあ、酒って飲んじゃ行けない制限はあるのか?」

「いや、そんなものは聞いたことがない。子供でも飲むだろう」


 飲んでも良いらしい。って、子供も飲んで良いのか!

 流石は異世界、俺の常識は通用しなかったようだ。

 そして俺は、フォンに酒を勧める。


「なぁフォン、一口飲んでみないか?」

「う、うん、じゃあ一口だけ……」


 フォンは酒を口に運んだ。すると……


「なんだわさ! お酒ってこんなに美味しいとは思わなかったわさ!」

「気に入ったようで良かった。沢山あるからどんどん飲めよ!」


 俺は調子に乗ってフォンに酒を勧めた。

 いや、勧めすぎたのだ……


※ ※ ※


 30分ほど経過し、気が付くと俺達はテーブルで寝ていた。


「おい、お前ら大丈夫か?」

「ううん、大丈夫っす……」

 

 大丈夫なのはダルスだけだった。

 俺はまずフォンを起こす。


「フォン! おいフォン! 起きろ!」

「ううん…… 五月蝿いわね!…… あっ、トール様…… アタシぃ、なんでぇ、いっつもいっつもぉ……」


 まずい、これは完全に酔い潰れている。

 フォンは後回しにしよう。

 次はオルガを起こした。


「オルガ! おいオルガ! 起きろ!」

「トール様! うっ…… うわぁん!」


 なんとオルガは俺を見た瞬間泣き出した。

 どうやらこいつは泣き上戸らしい。

 とても面倒くさい……


「トール様! オレなんて、オレなんて、役に立たない奴で、存在価値なんて……」

「いやいや、そんな事はないぞ。お前は仲間だ! 難しいことは考えなくて良いんだよ……」


「トール様!…… うわぁん!」

 (ダメだこりゃ)


 そう思ったとき、フォンが突然起きてダルスに絡み出す。


「ちょっとダルスぅ! アンタ優しいじゃない…… この前アンタ、仇討ちしてくれるって言ってたじゃない?…… あれ、痺れちゃった……」

「とっ、トール様! フォンが! フォンの奴が壊れたっす!……」

「トール様! オレは、オレは…… うわぁん!」


 なかなかカオスな状況になった。

 俺は何も出来ず、フォンに呑まれるダルスを笑顔で眺めるのだった……


※ ※ ※


 更に30分程経ち、店を出ると俺達は肩を貸し合い宿屋へ向かう。

 そして宿屋へ入ると、泥のように眠った……


※ ※ ※


 翌朝、頭を抱える二人の姿が。


「ああああ…… アタシ、ダルスになんて事を……」

「オレは、オレはどうして……」


 昨晩の醜態を思い出し悶絶する二人を、俺とダルスは優しく見守った。


 店員にチャーハンの作り方を教え忘れたが、まあいいか。

 今度来た時にでも教えてやろう、店が残っていれば。


※ ※ ※


 俺達は強化スライム討伐の報告をする為に、城に向かって歩いていた。

 俺の後ろにはがっくりと肩を落とすフォンとオルガの姿が……


「なっ、なあ、気にするなよ。オイラは気にしてないからさ……」

「あああ、もうアタシ、二度とお酒なんて飲まない……」

「なあオルガ、もっと自信を持てよ。俺はオルガも大切な仲間だと思ってるんだから、自分を過小評価するなよ!」

「あっ、ああ…… オレはダメな奴だ」


 ダメだこりゃ。

 酒は抜けたのに、精神的ダメージが抜けていない。

 二人が回復するまで、そっとしておこうと思う。


 城に着くと、兵士に謁見を申し込む。

 すると、すぐに城内へ案内された。

 案内してくれたのはダルスに凄まれ失禁した兵士だ。

 ダルスが兵士を軽く睨むと、慌てて目を逸していた。

 部屋の前に到着し、俺は国王カシミア・スコットンに謁見する。


「よく来たね! 昨日の強化スライムの件は聞いているよ。あの強化スライムを灰にするなんて凄いじゃないか!」

「しかし、指揮していたガーゴイル、ガイルを取り逃がしました。申し訳ない」


 ガイルを逃したら、また強化スライムを送り込んでくるだろう。


「いやいや、その時はまた、やっつけてくれればいいよ。頼りにしてるからね!」

「わかりました。しかし、俺達はこれから魔王シェリー・スカイラインを倒しに天空都市スカイラインへと行かなければなりません。いつまでもこの国に居ることは……」


 強化スライムの襲撃を待つわけにはいかない。

 目指すは魔王シェリーの討伐、これを忘れてはならない。


「そうかそうか。それならば仕方ないね。では、今回の成果による報酬を出そう」


 王様は兵士に目配せすると、兵士は小さな袋を俺に差し出した。


「今回の報酬だよ。また何かあったら、よろしくね!」


 俺は袋を受け取り中を覗き込んだ。

 大量の金貨が入っている。

 おそらく約束の100枚だろう。


「こんなに沢山、宜しいのですか?」

「いいんだよ。強化スライムの被害額はこんなものじゃないから。魔王シェリーの討伐は強化スライムの被害と関係があるんだよね? それなら金貨100枚は立派な報酬だよ」

「わかりました。それなら有り難く頂きます」


 俺は袋を仕舞い、王様に感謝の意を述べて城を後にする。


※ ※ ※


「トール様! 報酬はどのくらいなんだわさ?」


 案の定フォンが金貨の枚数を聞いて来た。

 前回アスラン王国で金貨100枚を言い渡された時、面白い顏をしたからな。

 今回はどんな反応をしてくれるのか……


「金貨100枚だ!」

「っぱーん!」


 やはり今回もフォンが倒れた。

 仰向けになりニヤニヤした顔で空を見上げている。

 その表情にオルガとダルスはやれやれと肩を竦めた。


※ ※ ※


 いろいろあったがこの国は楽しかった。

 特にあの居酒屋にはまた行ってみよう。

 店があればだけど……

 獣人差別があるようだが、普通に街を歩く分には気にならなかった。

 そんな思い出に浸りながら、俺達はカシミア王国を後にする。


「フォン、次はどっちに進めばいいんだ?」

「うーんと、鉱山都市サルマトランから天空都市スカイラインへ行けるんだわさ!」


「なら、次は鉱山都市サルマトランか!」

「そうね! ここからは1日も掛からずに着くんだわさ!」


 こうして俺達は、鉱山都市サルマトランへ向けて歩き出す。

 魔王シェリー・スカイラインを倒す為に。


いつもお読み頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] チャーハンを不味く作れるハンチャーがどんな味なのか気になる( ;´Д`) 酔っ払ったフォンがちょっとえっちで可愛かった。
2020/10/14 19:10 退会済み
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