44話 驕らぬ魔女と驕る魔導師
歓声を抑えるように、メルダはスッと手を挙げる。
「でも、残念ながらオリハルコンの量産は難しいの。精製したオリハルコンは、このひとつだけ。魔術式や温度など改良の余地はあるから、もし量産が出来れば世界はもっと豊かになるわ! あたしの発表は以上よ」
メルダが一礼し壇上を降りると、嵐の様な拍手が鳴り響いた。
暫くして拍手が鳴り止むと、髭を蓄えた老人が壇上へ上がる。
「えー、ヘックション! では、今回の最優秀賞を発表する! 最優秀賞は……」
何処からともなくドラムロールが鳴り、発表者に魔法の光がスポットライトのように当てられる。
そして……
「最優秀賞はメルダ! テーマは金属の新たな可能性について!」
すると、スポットライトがメルダに集まり、再び嵐の様な拍手が鳴り響く。
メルダは照れるように壇上に上がると、手を挙げた。
やがて拍手が収まり、メルダが語る。
「とても栄誉ある賞を頂き光栄に思うわ。そして、今回の受賞に驕らずに日々精進していきますっ!」
会場内は三度凄まじい拍手が鳴り響く。
そして、メルダが壇上を降り、学会はお開きとなった。
……と、要約するとこんな感じになる。
本当はもっと堅苦しい部分もあったのだが、俺にはよくわからなかった。
※ ※ ※
俺達は会場の外でメルダを待っている。
暫くして、メルダがトロフィーを片手に、笑顔で会場から出てきた。
「お待たせ! みんなのおかげで受賞出来たわ! 本当にありがとう!」
「おう! おめでとう!」
「目出度いのである!」
「よかったな!」
「拍手が凄かったっす!」
「メルダは大人気だわさ!」
各々が笑顔でメルダを出迎えた。
だが、祝いの言葉だけでは少々寂しい。
仲間の輝かしい成果を祝うには、あそこに行くしかないな。
「よーし! メルダの受賞を祝って飯に行くぞ!」
俺は声を上げ仲間達が頷いた直後、会場から若い男が出てきた。
やたらと偉そうに解説していた奴だ。
「おいメルダ! 何でお前の研究が最優秀賞なんだよ!」
「ハワード! あんたの研究は自己満足なのよ!」
どうやら若い男の名はハワードと言うようだ。
口調からしてメルダと知り合いらしい。
「なにっ、自己満足だと?」
「あたし達の命題は、研究で成果を上げる事だけど、それは当然のこと。さらにその先の実用性まで考えないといけないのよ! 魔導師のあんたなら理解できている筈よ?」
「ふっ、バカ共にレベルを合わせろと言うのか? 笑わせるな。……メルダ、お前裏で買収しただろ?」
「ばっ……なんですって? そんな事するわけないじゃない!」
「どうだか。既に理論として確立しているものを、今更発表して何になる。そんな稚拙な研究で賞を取っている時点で買収を疑うだろ?」
「あんたねぇ……」
なんだこいつは。
自分の欠点を棚に上げて、メルダに濡れ衣を着せようとしている。
あまりに勝手な言い分に、俺は頭に来てしまった。
「おいお前! 魔導師ハワードとかいったな。さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言ってんじゃねぇ! お前の逆恨みにメルダを巻き込むな!」
「ボクは飽くまで客観的に意見したまでだ! ボク達の話に割り込むな! だいたいお前こそ何者だ?」
「俺は……イフ……」
俺はメルダへと視線を向けた。
すると、メルダが首を横に振っている。
本当の事を言うな、という事だろう。
「俺は、メルダの友人だよ……」
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