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39話 100万度の炎

 

「はぁ……ねぇトール。アンタに頼みがあるんだけど……」

「何だよ頼みって?」


「実は今度、学会の発表があるのよ。でも、熱量が足りなくて研究が完成出来ないの。アンタの炎で何とかしてくれないかしら?」

「熱量って、何度くらい必要なんだ?」


「うーん。だいたい100万度くらいかしら。こんなのを頼めるのは、あんたくらいしか居ないのよ。どうかしら?」


(なんだ、たったの100万度か)

「いいぞ、お易い御用だ!」


「助かるわ! じゃあ、あたしの家に来てちょうだい。詳しくはそこで話すわ!」

「わかった」


 そんなわけで、俺はメルダの研究の手伝いをすることになった。


「ごちそうさん。店が上手くいくといいな!」

「ええ。今までの分を取り戻すくらいに頑張りますよ! また、いつでも来てくださいね!」


 酔い潰れた二人が大人しくなったところで、俺達は店を出た。

 おっさんが見送る中、ダルスはフォンを、ドラムはオルガを背負い、店の向かいの宿屋へ入ると、俺達は泥のように眠るのだった。


「この金貨、ぜーんぶアタシのものだわさ!!」

(お前だけのものじゃないだろ……)


 そして、部屋にはフォンバカの寝言が響く。

 俺はその寝言へ密かに突っ込みながら、意識を手放した。


 ※ ※ ※


 翌朝、俺達は海上都市サッティンバーグにあるメルダの家へ向け飛翔していた。

 まだ日が出て間もない早朝だ。


 《ふぁ〜ぁ。たまには朝にのんびり飛ぶのも悪くねぇなぁ〜》

 《朝日が丁度良い目覚ましになるのである!》


 俺は大欠伸をしながら顔面に受ける向かい風を感じ、音速の空中散歩を楽しんでいた。

 だが、その快感に水を差すかの如く、早朝から悶絶する奴が二名居る……


「はぁ……またアタシ、ダルスになんてことを……」

「げ、元気出せよ……な?」


 左足から重苦しい溜息が響く。

 枯れ草のように萎びたフォンに、ダルスが苦笑しつつ声を掛けた。

 そして、ドラムの足には干物のようにぶら下がるオルガが項垂れている。


「うぅ……オレは……オレはやっぱり……オレは……」

「うんうん。今は悩むと良いのである!」


 ドラムは何故か頷きながら、独自の解釈を進めていた。


「「はぁ〜」」


 フォンとオルガの湿った溜息が空を駆け抜ける。

 俺とメルダは溜息を吐く二人をジト目で眺めながら、俺達はメルダの家へと向かうのだった。


 ※ ※ ※


 俺はメルダの家の上空で人型に戻り着地する。

 家の中へ入ると、テーブルの上に拳大の石が置かれていた。


「メルダ、この石って……」

「そうよ。今回あんたにお願いするのは、この鉱石を100万度に熱して欲しいの」


「ただ熱するだけでいいのか?」

「うん。この鉱石はサルマトランで採れるものなんだけど、石自体はそんなに珍しいものじゃないわ。ただ、これに魔術式を刻み熱することで、特殊な金属に変わるはずなの! 細かい事はあたしがやるから、あんたは鉱石を5分間、熱してくれればいいわ!」


「わかった。じゃあ早速始めようか」

「問題はどうやって熱を逃さないようにするかだけど……」


「ああ、それなら問題ない。熱するのは俺の体内でやろう。それなら1億度までは出した事があるからな!」


(ん? そういえば何で俺はプルトニーを焼き殺した時に“1億度”とわかったんだろうか? ……まぁいいや)


「いっ、1億度って……非常識だわ。そんな温度、魔法でも出せないわよ……」


今回もお読みくださりありがとうございます。

ブックマークや評価を頂けると嬉しいです。


執筆中に106件目のブックマークを頂きました!

ありがとうございます!

次回の更新は31日の予定です。


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