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36話 魔王になるか?編最終話 成果

今回も5500文字となってしまいました。

長文ですがよろしくお願い致します。

 

 俺は無事、魔王種への進化を遂げた。

 心なしか身体が軽く、転生した直後を思い出すような感覚だ。

 暫くこの余韻に浸りたいところだが、手放しでは喜べない問題がある。


 眼下に広がる赤い森だ。

 原因を探ろうと視線を上げると、赤い液体を垂れ流し浮かぶ巨大な生物が目に入る。


(あれが、リヴァイアサンか……いやいや、デカ過ぎるだろ! あと、あの赤い滝は……まさか血か?)


 俺は真下に浮いているフォンに『思念通話』を飛ばす。


 《おいフォン! あのデカいのって、魔王フェスタだよな?》

 《トール様! もう本当に大丈夫なんだわさ?》


 《ああ、心配掛けたな。現状を教えてくれ!》

 《良かったんだわさ……魔王フェスタはアタシが支えてるんだわさ!》


 《アタシがって……あのデカいのをか!? フォン、お前大丈夫か?》

 《なんとか……でも、そろそろ限界だわさ……》


 フォンは俺に顔を向けると、顔の至る所から出血していた。


 《お、お前、それはまずいだろ! 今楽にしてやるからな!》


 俺はフォンと魔王フェスタを『空間収納』へと飲み込もうと炎を放つ。

 まずは魔王フェスタへと炎を纏わせる。

 すると、以前とは比べ物にならないほどに、炎の回りが速くなっていた。

 10kmもある巨体を、僅か数分で包み込んでしまう。

 一瞬にして魔王フェスタの巨体は俺の体内へ飲み込まれていった。

 そして、フォンも俺の体内に飲み込まれていく。


 ※ ※ ※


「ぬっ? ここは何処だ?」


 どうやら魔王グラハムがくっついて来たようだ。

 血を吸った蚊のように膨れた外見がとてもシュールだ。


「ここは俺の体内だ。これから魔王フェスタを治療する! 腹を開けるから離れていてくれ!」

「腹を開けるだと! うーむ。ならば、これからフェスタに鎮痛剤を投与する。少し待っていろ!」


 暫くすると、魔王グラハムの体が縮んでいき、刺さっていた長い牙が抜かれる。


「これで良いだろう。数時間は切り刻んでも痛みは感じぬはずだ! 薬が切れる頃にまた声を掛けてやる!」

「ああ、助かった。後は任せてくれ!」


 どうやら魔王グラハムは牙から鎮痛剤を投与していたようだ。

 もしかすると、体内で薬品を精製出来るのかもしれないな。


「……魔王フェスタは、助かるんだわさ?」

「まだ、わからない。だが、良い状態ではないな……」


 魔王フェスタは意識が無く、とても危険な状態だ。

 炎で巨大なメスを作成し、魔王フェスタの開腹を行う。

 そして、内臓を覗き込むと酷く破損していた。


(これは……助からないか……)


 そう思った時、一つの妙案を思い付く。


(破損は酷いが腐敗はしていない。もしかしたら、肉体を再構築することができれば助けられるかもしれない……)


 俺は、素材さえあれば物を複製出来る。

 破損した内臓を素材に、新たな内臓を作成することを思い付き、この妙案に賭けることにした。

 だが、リスクはとても高い。

 何故なら相手はリヴァイアサンだ。

 普通の人間や獣人なら数分で処置が終わるが、全長10kmもある巨体を手術するとなると、数日掛けても終わらない可能性がある。

 そうなれば、いくら魔王と言えど体力が持たないだろう。

 事態は時間との闘いだった。


 魔王フェスタの血管内へ炎を流し、意識を集中させ『視点変更』で臓器の状態を正確に把握していく。

 そして、胃、腸、肝臓などの臓器を炎で削り取り『複製修理』で新たな臓器を作成し置き換える。

 作業が順調に進み、ふと気が付いた。


(作業の速度も上がっている……)


 血管内の炎は無数に分岐し、様々な臓器を並行して置き換える事が出来るようになり、以前と比べて驚くほど効率良く作業が進んでいる。

 頭で考えるよりも早く、まるで微塵切りをするかの如く、直感で炎を操作できるようになっていた。

 そして、2時間程が経過し、臓器や体内組織の置き換えが終了する。


「よし…… 終わったぞ!」

「何!? もう終わったのか!」

「早いんだわさ!」


「ああ。俺も丸一日は掛かると思っていたが、思いの外早く終わった。後は意識が戻るのを待つだけだ」

「うーむ。恐るべき治療速度だな……」

「良かったん……だわ……さ……」


 治療終了を告げると、魔王グラハムは驚愕する。

 しかし、フォンは俺の言葉を聞き終えると、意識を失ってしまった。


「お、おいフォン! おいっ!」


 俺は必死に呼び掛けるが、フォンはピクリとも動かない。

 フォンも開腹しなければならないかと、炎のメスを作成した時、魔王グラハムが動く。


「待て!」


 すると、懐から怪しい液体を取り出し、フォンの頭からジャバジャバと掛けていく。


「おい、フォンに何をした!」

「なに、回復薬だ。この状態では飲む事が出来ぬからな。此奴は貴様の為に無理をしていた。目を覚ましたら労ってやれ」


 魔王グラハムはそう言うと、静かに瞑目した。

 どうやら俺はこの魔王に借りが出来てしまったようだ。


 ※ ※ ※


 臨時虹会の会場へ戻ると、人間国側の兵士や国王が顔を青ざめながら俺の様子を伺っている。

 俺は腹に手を突っ込み、魔王グラハムを吐き出す。

 そして、会場内の全員へ向けて頭を下げた。


「仲間達が居なければ、この国を滅ぼす所だった。どんな罰でも受ける。申し訳ない!!」


 人間達が騒めく中、魔王シェリーが俺の肩を叩き口を開く。


「トールよ、フェスタはどうしたのじゃ?」

「治療が終わり、今は俺の中で眠っている。暫くすれば目を覚ますはずだが……」


 すると、魔王シェリーは瞑目し呟く。


「そうか。では、人的被害は無いな」


 そして、勢いよくテーブルへ手をついた。


「良いか皆の者、トールが此度の進化により齎した被害はゼロじゃ。この事実は軽視できぬぞ!」


 どうやら俺に対して酌量の余地があると訴えかけているようだ。

 人間達が俺を訝しむ目で見つめる中、魔王シェリーは俺に鋭い視線を向ける。


「トールよ、お主は一国を滅ぼせる力を得た。この力をどのように使うつもりじゃ?」


 魔王シェリーの質問に、この場の全員が固唾を飲んで俺を注視する。


「俺の……この力は……」


 しかし、このような質問が来る事を予想していなかった俺は、困惑し口を紡ぐ。

 そんな時、体内で動きがあった。


(うぅ……アタシ……あれ、どうしてここに居るんだわさ?)

(気が付いたか! お前は俺の中で気を失ってたんだよ。魔王グラハムがお前に回復薬を掛けたんだ)


(そう……アタシ、護り抜いたんだわさ! この国を、アタシ達の居場所を……)

(ああ……みんな、お前達のおかげだよ。ありがとな!)


 そして、腹の中に手を突っ込みフォンを吐き出すと、俺の中で一つの答えが湧き上がる。


「決めた! 俺の力は……何かを護る為に使う。それが仲間なのか、若しくは別のものか、それは解らない。だけど、国や世界を征服する為には絶対に使わない。力で抑えつけるのは虚しいだけだからな!」


 すると、白服の男が俺の前に立ち、指をさして嗤う。


「はっ! くだらない。そんな考えでは他者から利用されるだけですよ。力は己を更なる高みへと押し上げる為に使うものです。弱者を食いつぶし、利用してこそ本領が発揮されるのですよ!」


「俺はそんな力の使い方はしない。だが、俺が護るものを害する奴には容赦しない。その時は全力で返り討ちにしてやる!」


「面白い! その考えがいつまで続くのか、見せていただきましょう! ……さぁ行きましょうか、陛下……」

「ちょちょちょっと待つでおじゃる“サキ”よ……」


 白服の男は足早に出口へと歩き出す。

 そして、俺に振り返り呟いた。


「あなたの信念が何処まで通用するのか、楽しみですよ。イフリートさん……」


 こうして、タナトス国王と“サキ”と呼ばれる男は退室した。


(サキ……得体の知れない何かを持つ男。この男とは、また何処かで逢うような気がする……)


「サキ……タナトス王国の参謀じゃ。奴が現れてからタナトスの治安が悪化したのじゃ。あの国王だけではあそこまでの政策は打てぬだろう。かなりのやり手じゃが、あのやり方は好かぬのぅ……」


 魔王シェリーがサキについて説明する。

 俺が出口を眺めていると、アスラン王国の女王アスラン・ディープシーベットが詰め寄ってきた。


「先程、一万人を“殺した”と言っていたな。詳細を説明してもらおうか。内容次第では……」


 内容次第では敵に成り得ると言いたいのだろう。

 だが、俺達の力に対抗できる軍事力を持ち合わせていない為に、最後まで言葉を続けることが出来ないのは明白だ。


「わかった。説明させてもらう……」


 俺は世界保守連盟で起きた事を説明した。

 思考誘導されていた人間を一万人殺し蘇生させた事や、人間国と魔王シェリーの関係悪化に関する報告書も含めた全てを。


 説明が終わると、体内で再び動きがあった。


(ううっ……ここは何処だべ?)

(ここは俺の体内だ。すまないが、そのままでは出すのは難しい。人型に戻ってもらえないか……)


 魔王フェスタの意識が戻った。

 だが、全長10kmもの巨体をこの会場へ吐き出すわけにはいかない。

 人型になるように頼むと、魔王フェスタはシュルシュルと縮んでいき、見慣れた人型となった。

 そして、腹に手を突っ込み魔王フェスタを吐き出す。

 その動作を訝しみながら、女王が口を開く。


「蘇生させたじゃと? そんな話信用出来るわけなかろう?」


 女王が怪訝な表情で俺を見つめる中、魔王フェスタが声を上げる。


「いや、トールの言っている事は本当だべ。実際、オラはこうして助けられたべ。トールが居なければ、オラは死んでいたかもしれねぇべ」


 俺が攻撃してしまった事を棚に上げ、俺を庇ってくれている。

 魔王フェスタにも、借りを作ってしまったようだな。

 そして、女王は諦念の表情で話す。


「ふぅ……どうやら妾達人間には手をつけられぬようじゃな。もうよい。この件は不問としよう」


 その言葉に俺は胸を撫で下ろし、人型へと戻った。

 こうして、本当の意味で臨時虹会が終了し、人間国王や兵士達が退室していく。

 だが、魔王達は退室する気配がない。

 俺は怪訝な表情で様子を伺っていると、魔王シェリーが口を開く。


「トールよ、お主はこれで晴れて魔王種となったわけじゃが、一つ提案があるのじゃ」

「提案……とは?」


「うむ。妾達はこれで対等な関係となったのじゃ。つまりな、呼称を変更しようではないか」

「ちょっと言ってる意味がわからないんですが……」


 いきなり何を言い出すかと思えば、呼称変更?

 意味がわからない。

 だが、魔王グラハムが発する言葉でその意味を理解する。


「トールよ、貴様は鈍いな。我等を呼び捨てにして良いと言っているのだ。我の事は今日からグラハムと呼べ!」

「!?……そ、そんないきなり言われても……」


「お主は妾達に対して、普段から敬語すらまともに使っていなかったじゃろ。何を今更躊躇うことがあるのじゃ!」

「で、でも……」


「気にすることはねぇべ。オラ達は皆魔王種。気ぃ使うことなんか無いんだべ!」

「わ、わかった……じゃあ……フェスタ……」


「それで良いべ。おめぇ達が困ったら、オラ達を頼れば良い。オラ達が困った時は助けてくれるべ?」

「ああ。もちろんだ!」


 俺は三柱さんにんの魔王と固い握手を交わし、今後の協力関係を約束したのだった。


「そうじゃ、忘れておった!」


 落ち着いたところで“シェリー”が声を出す。


「トールよ、この壁の修理代はお主持ちじゃからな!」

「はぁぁぁぁぁぁー!?」


 声を上げたのは俺じゃない。

 俺が答えるよりも速く、フォンが割り込んで来た。


「なんでだわさ! アタシ達あんなに頑張ってこの国を護ったんだわさ! それなのに、それなのに……」


 フォンは涙目で魔王達に熱い視線を送っている。

 だが、誰一人としてフォンに目を合わせない。

 俺は苦笑しながら、全身炎イフリート化する。


「で、修理代はいくらなんだ?」

「うむ、ざっと金貨100枚じゃ!」


「っぱーん!」


 聞き慣れた音が室内に響いた。

 足元へ目を向けると、顔を青ざめたフォンが口を開けて倒れていた。

 そんなフォンを余所に、腹から金貨100枚を取り出し、シェリーへと渡す。


「うむ、確かに受け取ったのじゃ。ではこれで、なんの問題も無く臨時虹会は終了じゃな。もう好きにして構わぬぞ!」

「ああ、わかった」


 そして、床で放心状態のフォンを見兼ねたダルスがちょっかいを出す。


「あーあ、金貨バカには呆れるっす!」

「なっ、なんですって!」


 フォンが踵を支点にニュッと起き上がるとダルスへ拳を上げた。

 すると、ダルスはニヤニヤと挑発する。


「ほれほれ、金貨バーカ!」

「ちょっと待ちなさいよ! バカダルス!!」


 そんな低レベルの喧嘩を、オルガとドラムとメルダはジト目で眺めていた。

 そして、俺は気になっていた事をグラハムに尋ねる。


「なぁ、グ……グラハム」

「なんだ?」


「ヴァンパイアって、陽の光に当たっても問題無いのか?」

「ん? ああ、我は魔王だからな。少々目に染みるが大したことはない。幼児は火傷をするがな……」


「そうなのか……」


 地下都市に棲んでいるからには、日の光が全くダメだと思い込んでいたが、そうではないようだ。

 素朴な疑問だが、少しスッキリした気分となる。


「金貨バーカ!」

「うっさいんだわさ! バーカ!」


 そして俺は二人バカどもの襟を引っ張り、俺達は会場を後にするのだった。


今回もお読み頂きありがとうございます。

よろしければ、ブックマークもお願いします。


こちらに裏話や設定を描かせて頂いております。

興味がありましたらご覧ください。

https://book1.adouzi.eu.org/n1248fm/


現在の戦闘力です。

トール500000

フォン200000

ダルス180000

ドラム160000

オルガ55000




今回で、今編最終話となります。

次回から新展開です。

更に広がっていく世界を

お楽しみいただけますと幸いです。

次回の更新は28日の予定です。


執筆中に、ついに!

100件目のブックマークを頂きました!!


偶然にも、今編最終話にて

素晴らしい数字に到達出来まして

ここまでお読みくださった皆様に

心から御礼申し上げます。

そして、今後ともどうか

イフリートの建国日記を

よろしくお願い致します。


ここまでの物語はいかがでしたか?

もし、面白かったと感じましたら

評価をつけてくださると嬉しいです。

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