32話 臨時虹会
翌朝、俺達は天空都市スカイラインを立ち、鉱山都市サルマトラン王国へ向けて飛翔していた。
臨時虹会の会場前でメルダと待ち合わせをしているのだ。
会場となる城の前に到着し、メルダを待っているのだが、集合時間を過ぎてもメルダは一向に現れる気配がない。
おそらく研究に没頭し、時間を忘れているのだろう。
「なぁみんな。メルダが来ないんだが、ちょっと迎えに行ってやろうか!」
「きっと今ごろ慌ててるんだわさ!」
「パンでも咥えて向かってるっす!」
「忘れているのかもしれないぞ……」
「急がなければ、始まるのである!」
俺は全身炎化し、四人を体内に飲み込む。
そして海上都市サッティンバーグへと光速で飛翔した。
数秒後、メルダの家の前に着いた俺は扉を叩く。
「メルダ! まだ居るのか? 迎えに来たぞ!」
「えっ! もうこんな時間!? ちょっと! まずいじゃないの!……あっ!」
「ドーン!」
「いやぁぁぁー! ちょっと! それはまずいわよ!……」
家の中からは爆発音が響き、メルダの叫び声が木霊する。
そして窓からは黒煙が上がり、俺は苦笑した。
「おーいメルダ、大丈夫か?」
「だっ、大丈夫よ! 今行くわ!」
暫くすると、中からパンを咥えたメルダが飛び出した。
どうやらダルスの予想が正しかったようだ。
「まっ、待たせたわね。さぁ行くわよ!」
「?????……」
額に汗を浮かべたメルダは、杖を横にし詠唱を始めるが、俺はそれを止める。
「まぁ待て。メルダも俺の中へ入れ!」
メルダの返答も聞かず、メルダの足元に炎を纏わせ体内へ飲み込むと、鉱山都市サルマトランへ向けて飛翔した。
※ ※ ※
「ちょっと! いきなり飲み込むんじゃないわよ! 心の準備ってものがあるでしょ! 詠唱だって途中じゃないの! 変な呪文になっちゃったらどうすんのよ!」
メルダは俺の体内へ放り込まれると、空間を飛び回り抗議した。
そんなメルダを仲間達が窘める。
「よぉメルダ! やっぱりパンを咥えてるっす!」
「あはは! やっぱり慌ててたんだわさ!」
「もしかして、忘れてたのか?」
「う〜ん。研究熱心である!……」
「もーっ!! あたしだって忙しいのよ! わ、忘れてたわけじゃないのよっ!!」
四人は、にやりとメルダを眺めると、メルダは顔を赤く染めて反論した。
「「本当にぃ〜?」」
「ほ、本当よっ!!」
フォンとダルスがジト目でメルダを見つめると、恥ずかしそうに抗議する。
その顔には微笑が混じり、どこか嬉しさが感じられる。
そんな遣り取りが体内で響き、メルダは仲間達との再会を楽しんでいた。
そして数秒後、鉱山都市サルマトランへ到着する。
「着いたぞ! 今出してやるからな!」
※ ※ ※
臨時虹会の開催される建物の前で、五人を腹から吐き出した。
「うおっ!」
「うげっ!」
「うわっ!」
「うぎゃ!」
「いやっ!」
五人が勢いよく地面に積み上がる。
「も、もう少し優しくして欲しいんだわさ!」
「毎回これじゃ辛いっす!……」
「そんな事言われてもなぁ。五人纏めて吐き出すのは大変なんだぞ〜」
フォンとダルスから怒られてしまった。
怒る気持ちもわかるが、『空間収納』から五人だけを選別するのは意外と難しい。
齧ったスイカに含まれている種を、選んで吐き出すようなものなのだ。
「すまんな……」
「「「「「ぬ〜……」」」」」
俺は平謝りすると、五人からジト目で見られてしまった。
そんな遣り取りを経て、俺達は建物の中へと入っていく。
※ ※ ※
俺達は受付で臨時虹会へ参加の旨を伝えると、会場となる部屋へ通された。
すると、室内には各国を象徴した色の服を着た兵士達が、壁際に並んで立っている。
そして、兵士達の前には各国の国王や魔王が着席し、談笑していた。
談笑といっても飽くまで国益などの戦略的な会話だ。
会話の内容まではわからないが、何やら難しい話をしている。
しかし、魔王シェリーの周囲には人間国王の姿はなく、異様な空気が漂っていた。
見知った国王や魔王の中に、見知らぬ人間が一人座っている。
おそらく、タナトスの国王だろう。
肌は白く小太りで、歳は45歳くらいだろうか。
如何にも時代劇で“まろ”と言い出しそうな風貌をしている。
(こいつがあの、タナトスの国王……)
国民を貧困に追いやり、悪行を野放しにする国。
俺はタナトスに対して負の印象しか持っていない。
そんな国の王の顔を、俺は静かに心へ焼き付けた。
「来たな……」
そして、魔王シェリーが呟くと、各国の王達や兵士達が一斉に俺達へと視線を向ける。
その態度は様々で、人間国側は怪訝に凝視し、魔王国側は歓迎の表情をしている。
《俺達、凄い見られてるな……》
《やっぱりあの報告書は本当だったんだわさ!》
《人間国と魔王シェリーとの関係悪化というやつか》
《あの様子だとオイラ達も疑われてるっす……》
《まずは誤解を解くべきである!》
どうやら、世界保守連盟で発見した報告書の内容は事実のようだ。
今回の臨時虹会を招集したのは魔王シェリーであり、俺達は魔王シェリーに呼ばれた形になる。
つまり、人間国側からすれば、俺達は魔王シェリーの手下だと思われていても不思議ではないのだ。
人間国側では未だに強化スライムを差し向けた犯人が魔王シェリーだという事にされているのだろう。
俺達はその誤解を解かなければならなかった。
「さて、今回の主賓が揃ったことじゃし、始めるかのぅ」
魔王シェリーが口上を述べると、臨時虹会が開会する。
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本当は虹会終了まで進めようと思ったのですが、とても2日では描ききれないと感じまして、今回は少し短めとなってしまいました。
執筆中に86件目のブックマークを頂きました!
ありがとうございます!
次回の更新は12日の予定です。
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