31話 激辛餃子
俺達は天空都市スカイラインの城門に到着すると、兵士に魔王シェリーへの謁見を申し込んだ。
するとすぐに城内に通される。
そろそろ俺達は顔パスが効くようになったのだろうか?
そして、魔王シェリーの鎮座する部屋へと案内された。
「なんじゃ、また厄介な話か?」
魔王シェリーは俺達を見回すと、いつもの事かと言わんばかりに肩を竦めた。
俺は苦笑しながら口を開く。
「じっ……実は、龍人の村がガイルによって滅ぼされていました。今回はその報告に来たんです」
「何じゃと!? 近頃龍人の姿が少ないと思っておったが、まさかっ!……」
どうやら龍人の村の事は知らされていなかったようだ。
俺は龍人の村で起きた事を報告した。
そして魔王シェリーはドラムへと視線を向ける。
「お主も災難じゃったのぅ……」
「……我輩、プルトニーに記憶を消された為に、あの村についての思い入れが無いのである。しかし……」
魔王シェリーは怪訝な表情でドラムを見つめ、ドラムは俯きつつ言葉を続ける。
「記憶が無くとも、あの光景を見た時の衝撃は凄まじかったのである。もしも……もしも記憶が戻った時、我輩は自我を保つ自信が無いのである……」
「「「「「……」」」」」
ドラムの言葉に誰一人、掛ける言葉が見つからず、場を静寂が支配する。
そして暫しの時が過ぎ、魔王シェリーが重い口を開く。
「まぁ、あれじゃのぅ。まだ全員が殺されたと決まったわけではないからのぅ。あまり気負う事はないじゃろ……」
恐らく魔王シェリーは、龍人達の行く末を理解しているのだろう。
しかし、それを告げるのは今のドラムには酷に思えたのか、ドラムを励ます言葉を並べた。
俺は魔王シェリーの気遣いに感心し、俺達は城を後にする。
※ ※ ※
俺達は城を後にすると、宿屋に入った。
矢張り、ドラムを纏う空気は暗く重い。
「なぁドラム。魔王シェリーも言っていたが、そんなに気負うなよ。お前が責任を感じる事なんて何一つ無いんだからな……」
「うーむ……我輩はこれからどうすれば……」
肩を落とすドラムを見兼ねて、ダルスが鋭い視線をドラムへと向ける。
「この先に何があるかはわからねぇっす! でも、オイラ達は仲間っす! それはこの先も変わらないっす!」
「仲間……であるか……」
「龍人達が殺されたと決まったわけじゃない。何処かで生きてるかもしれないだろ? 希望は捨てずにいこうぜ!」
「そうで……あるな……」
……何の根拠もない。
龍人達が生きている確率なんてゼロに近い。
俺にはこの程度しか、ドラムに掛けてやれる言葉が無かった。
ドラムは不安な表情で一点を見つめている。
しかし、俺には一つだけ人を笑顔にさせられる方法がある。
……それは料理だ。
ドラムは龍人の子供の惨劇を見て嘔吐してしまっている。
空腹では前向きな思考など出来るわけがない。
腹が満たされてこそ、先を見据えた考えが出来るというものだ。
今回、俺がドラムの為に作る料理、それは餃子だ。
だが、ただの餃子ではなく激辛餃子にする。
気分が落ち込んでいる時は、刺激の強い物を食べるのが良い。
こんなこともあろうかと、地球では特に調味料を幅広く買い揃えていた。
えげつない程に辛い餃子で、ドラムの気分を変えてやろうと思う。
俺は全身炎化すると、腹から木皿と“ニチー”のビニール袋を取り出し、薄力粉、強力粉、キャベツ、ニラ、酒、みりん、オイスターソース、ごま油、鶏ガラスープの素、生姜、ニンニク、醤油、激辛ソース、ナゾ挽肉をテーブルに並べた。
まず、木皿へ薄力粉と強力粉を入れ、体内で沸騰させた水を注いで混ぜる。
そして、纏まってきたら表面にごま油を塗り、少し寝かせる。
次に、ニラとキャベツを微塵切りにして木皿へ入れる。
なお、キャベツには炎を纏わせ、弱火程度の敵意を込めて軽く火を通した。
そして、微塵切りにしたニラやキャベツとナゾ挽肉、調味料、激辛ソースを入れて混ぜると餃子のタネが完成する。
寝かせておいた皮の素を適度に切り分け、円形に薄く伸ばしてタネを包み込む。
そして、表面にごま油を塗ると生の激辛餃子が完成した。
木皿に生の激辛餃子を並べて水を入れる。
そして、炎を纏わせ蒸し焼きにすると、こんがり焼けた激辛餃子が完成した。
「出来たぞ、食え!」
四人の前に大量の激辛餃子を置くと、四人同時に激辛餃子を口に放り込んだ。
すると……
「うん! 美味しいんだわ……さ?……ひぃ!」
「美味いっ……す?……ひぃ!」
「美味い……な?……ひぃ!」
「美味であ……る?……ひぃ!」
四人は背筋を伸ばし、硬直する。
数瞬の後、四人は涙目になると一斉に俺を睨みつけた。
「なっ、なんだわさ! これは!」
「こんなの食えないっす!」
「オレは……何を食っているんだ……」
「これは……食べ物であるか?」
どうやら四人は辛いものが苦手なようで、涙目になりながら水を口に流し込んでいる。
「全然治らないんだわさ!」
「口が壊れるっす!」
「オレは……もうだめだ……」
「アガガガガガ……」
しかし、激辛ソースの原料は唐辛子だ。
唐辛子の辛味は油溶性であり、水を流し込んでも辛味は治らない。
だが、辛味対策を怠る俺ではない!
俺は腹から木鍋とチーズを取り出すと、チーズを鍋に盛る。
そして、小指程の大きさの、炎の竜巻を鍋の中心に放ち、弱火程度の敵意を込める。
すると、チーズがドロドロに溶けた。
「これに浸して食ってみろ!」
四人は訝しげに激辛餃子を溶けたチーズに浸して口に含む。
すると……
「「「「……!?」」」」
四人は目を見開き、俺を凝視した。
「なんだわさ! 全然辛くなくなったんだわさ!」
「これなら食えるっす!」
「美味いぞ!……」
「これは……幾らでもいけるのである!」
唐辛子系の辛さはチーズなどの乳製品で中和することができる。
四人はそんな事を知る由もなく、額に汗を流しながら、激辛餃子フォンデュを頬張るのだった。
※ ※ ※
食事が終わると、俺はドラムに視線を向けた。
「なぁドラム。少しは気分も晴れたか?」
「……いつまでも悩んでいても仕方ないのである。我輩はもっと前を向かねばならないのである!」
「その意気だ! 前を向いていれば良いことだってあるさ。気を落とさずに行こうぜ!」
「うむ。希望を持つのである!」
こうしてドラムは普段の調子を取り戻し、俺達は明日に備えて眠りに就くのだった。
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