30話 放射線耐性
【2019.09.16 砂臥 環様からファンアートを戴きました!】
【2020.01.09 カラー版を戴いたので差し替えました!】
龍人の村でのグドラとダルスの戦闘が終結し、俺達はようやく落ち着きを取り戻した。
そしてふと、俺はあることを思い出す。
「そうだ。ダルスとオルガがプルトニーに攻撃を受けた後、俺が戻った時に楽になったと言ってたよな?」
「そうっす!」
「ああ……」
辺境の研究所で戦闘の際に、ダルスとオルガはプルトニーの攻撃を受けて瀕死の重傷を負ったが、俺がプルトニーを消化した直後から怪我が回復していた。
【放射線は通じぬか】
プルトニーは確かにそう言っていた。
血呑みの儀式を乗り越えた四人が、放射線耐性を獲得したのか確認したい。
廃村となった龍人の村は丁度良い練習場だった。
「一つ実験をしたいのだが…… この実験は危険が伴う。重傷を負うかもしれないが、俺には成功する確信がある。みんな、協力してくれるか?」
「もちろんだわさ!」
「了解っす!」
「ああ……」
「当然である!」
仲間達は俺の話に了承し頷いた。
そして俺は覚悟を決める。
「じゃあみんな、俺を囲むように立ってくれ! あー、それとグドラ。危険だからお前は離れてろよ!」
「なっ、なんだ貴様! ワレがこれ以上遅れを取ると思っているのかっ! もうワレは逃げぬぞっ!」
「そうか。警告したからな」
「ガッハッハ! ワレを嘗めるでない!」
やはりこのドラゴンは頭が弱いようだ。
そんなグドラを横目に、俺は目を瞑り、全身が輝くように意識を集中する。
すると、身体の中心から何か湧き上がるものを感じる。
ゆっくりと目を開き、少しずつ湧き上がるものを放出していくと、体が薄っすらと黄色く光り出した。
「みんな、体に異常は無いか?」
仲間達は首を横に降る。
そして俺は放出量を段々と上げていく。すると……
「パキパキパキ……」
周囲の木々が乾燥し、ひび割れるような音を立てて枯れ始めた。
「ぐおぉ! な、なんなのだこれは!……」
木々の様子を見て、グドラはおろおろと後退する。
そして俺は光の放出を止めると、体は全身炎化の赤み掛かったオレンジ色に戻る。
「よし、終わりだ。みんな大丈夫か?」
四人が肯首する。
どうやらダメージは受けていないようだ。
これで俺の予想が確信に変わった。
「お前達はどうやら、放射線耐性を獲得したようだ」
「放射線耐性……って何っす?」
俺はプルトニーの知識を手繰り寄せ、放射線について説明する。
どうやら現時点で俺ができることは、放射線を浴びせた対象を焼くことと、生物であれば体内を破壊することらしい。
他に思考誘導が出来そうだが、仲間達に思考誘導を掛けた場合、世界保守連盟の人間のように殺さなければ思考誘導を解除出来ない可能性がある。
それは余りにもリスクが高い為、今回の実験はここまでとした。
「なるほどっす……」
「アンタ、わかったフリして、実はわかってないんだわさ?」
フォンがダルスを挑発し始めた。
挑発はいつもの事だが、この流れは誰かが被害を受けるやつだ。
俺は慎重に動向を伺う。
「そ、そんな事ないっす! お、オイラは理解してるっす!」
「ははーん? 目が泳いでるんだわさ?」
「なっ、なんだと? お前だって理解してないんだろ?」
「なっ、なんですって!? アタシはしっかりと理解出来てるんだわさ!」
フォンは顔を赤らめると、ダルスに向けて右ストレートを放つ。
ダルスはいつもの事だと言わんばかりに、ニヤニヤと軽快にフォンの攻撃を躱す。
すると、そこへ……
「ぬうぅ。お前達の力はよくわからぬのだ。もう、実験とやらは終わったのか?」
俺達の様子を伺いに、グドラがノシノシと歩み寄る。
「ちょ、ちょっとそこを退くんだわさ!!」
ダルスが攻撃を躱したことで、フォンの“右ストレート”が行き場を失い、グドラへと進撃する。
「ぬ? ワレと力比べをしようというのか? ガッハッハ! 面白い! 受けてたとぉぉぉぉー」
「「「「「あっ!」」」」」
グドラは意気揚々とフォンの“力比べ”を受ける。
そして、グドラの拳がフォンの拳と重なった次の瞬間。
「ドゴーン!!」
爆風と共に、グドラは樹々を薙ぎ倒しながら弾き飛ばされていった。
その様子を見て、フォンの顔が引き攣る。
「あっ……やっちゃったんだわさ……」
「あーあ。お前、後でグドラに謝っとけよ〜」
そして、ダルスは飄々とフォンを窘めた。
「むぅー!……はぁ〜……」
フォンは恨めしそうにダルスへ視線を向けると、がっくりと項垂れるのだった。
※ ※ ※
暫くすると、グドラが空から降下し戻ってきた。
目には涙を浮かべ、恨めしそうにフォンを見つめている。
「ぐ、グドラ、ごめんだわさ……」
「もう、ワレ、心折れたのだ……」
唯一の強みである腕力までもフォンに負けたグドラは、精神的な蹂躙を受けていた。
肩を落とし、穴があったら入りたいと言わんばかりのグドラの表情からは、哀愁が漂う。
気まずくなった俺は、そろそろこの場を離れようと思い始める。
「そ、そろそろ俺達は戻ろうか?」
「そ、そうだわさ! 戻るんだわさ!」
「そ、そうっすね! 戻るっす!」
「そ、そうである。戻るべきである!」
「そ、そうだな……」
すると、グドラは深い溜息を吐き、割り切った表情で顔を上げる。
「ふぅ……もういいのだ。ワレは完敗した。清々しい程にな。こうも一方的だと、悔しさの欠片もないのだ!」
どうやらグドラは然程、精神的ダメージは受けていないようだ。
その表情に俺達は安堵する。
「じゃあ、何かあったらオイラ達に言うっす!」
「もう、無闇に喧嘩するんじゃないぞ!」
「今度はもっとよく考えて行動するんだわさー!」
「もう他種族を見下すでないぞ!」
「……」
「……わかったのだ。お前達もまた来ると良いのだ!」
こうして俺はダルスとフォンをぶら下げると、手を振るグドラを背に、俺達は龍人の村を飛び立つのだった。
(しかし、フォン……それは、お前が言えるセリフじゃないぞ……)
※ ※ ※
俺達は上空へ向けて、のんびりと音速で飛翔している。
しかし、グドラから逃げるように龍人の村を後にした為、俺達はこの後に向かう場所を決めていなかった。
俺達はプルトニー討伐の報告の為、鉱山都市サルマトラン王国で開催される臨時虹会に召集されている。
その臨時虹会が、いよいよ明日に迫っていた。
明日の朝にメルダと会場で待ち合わせをしているので、理想はこのまま鉱山都市サルマトランへ向かうべきだろう。
しかし、魔王シェリーに龍人の村が滅んだという報告をしておきたかった。
《この後の予定なんだが……》
四人の視線が俺に集まる。
《魔王シェリーに龍人の村の事を報告したい。だから天空都市スカイラインに向かおうと思うが良いか?》
《わかったわさ!》
《了解っす!》
《問題ない》
《わかったのである……》
矢張りドラムは覇気がない。
グドラには強気に出ていたが、心底は不安で仕方なかったのだろう。
そんなドラムの様子に俺はそっと目を細め、天空都市スカイラインを目指すのだった。
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※放射線ついて、実際の影響と異なる描写が多々ありますが、拙作では地の文で説明を行った能力が影響を及ぼします。
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