第63話 隠れたギルドと問題発生
ニンモート西側の街ナイヘルへと入った俺たちだったが、俺もカイナも旅人の格好と身分証をもって街に入っている。
なぜ、こんなことをしなければいけないのかというと、それは、単純にこの街を収める大名が130年前のある時を境に冒険者を憎むようになったからだ。
そう、130年前、勇者王国で事件を起こした1人の男。その男は大名の息子だった。そして、その大名こそがここナイヘルを収める大名ヘルモートだったのだ。
冒険者たちに息子が無残に殺されたことで、自身が収める地にギルドがあるのがどうしても許せなかった。そこで、ヘルモートはギルドに対して兵を使って襲撃、ギルドをつぶしてしまった。
といっても当時のギルドマスターもバカではない、当然それを察知して冒険者たちを逃がし、自身も逃げた後だった。
ということがありこの街では冒険者がおらず、冒険者が街に入ることもできなくなった。だから、俺とカイナがこんな旅人の格好となったというわけだ。
そんなわけで街を歩いていると、不意に声をかけられた。
「なぁ、あんたら、旅人だろ、どうだ、俺たちの一緒にハンターにならないか」
振り向くと2人の男がそんなことを言ってきた。
「ハンター?」
「そうそう、この街は冒険者がいないだろ、だから俺たちみたいなハンターが脅威になる魔物とかを狩っているってわけだ。どうよ」
なんてこと言っているが、実はこのハンター、俺たちはすでに前の街のギルドで情報を得ていた。
それによると、ハンターとは冒険者がいないこの街独自の組織で、確かに魔物などを狩っている連中のことだが、狩っているのはそれだけではない、この連中が狩っているのは人族以外の他種族もだ。しかもその狩り方というのが、村を襲撃し、そこの住人をすべて女子供関係なしに殺害し、家を破壊しながら金品があれば根こそぎ盗むという本当に盗賊すら真っ青になる残忍な連中だ。
しかも、最悪なことにこれらの行為は領主であるヘルモートが許した行為、つまり合法だというから始末に置けないだろう。
ちなみに、こいつらを俺たちが今この場で始末した場合、ギルドとしては称賛したいが、いかんせんハンターは大名に雇われている連中でもある。
つまり、逆に俺たちが捕まるという事態となる。
実に厄介な連中となる。
「へぇ、そいつは、すごいな、でも、俺たちはそういうのに興味がないからな、他を当たってくれ」
とりあえず俺はそういって断った。
「そうね、私たちそこまで長くこの街にとどまる気もないしね」
「そうかい、それは残念だ」
男たちはそういって去っていった。
『あれが、ハンターか』
『見た感じは、普通ね』
『でも、あの連中は、人族以外を人間と思っていないんでしょう』
『らしいな』
男たちが去った後、俺たちは念話でそんな会話をしていた。
「まぁ、とにかく、例の場所、行くか」
「そうね。情報知りたいしね」
『私もなんだか、この街には興味がわかないわね』
『そうね。レーヴェの言うとおりね』
なんにでも興味を示すレーヴェもレイラもこの街に至っては興味がなくさっさと用事を済ませたいみたいだ。
「なら、行こう」
こうして、俺たちはこの街の唯一の目的地であるスラム街にやって来た。
実はこの街、半分ぐらいがスラム街というかなり治安が悪い街となっている。
そして、なぜ、俺たちがスラム街にやって来たかというと、それは、今俺たちの目の前の建物に理由がある。
その建物の外見は一言でいえばかなりボロい、本当にここがそうなのかと疑いたくなるが、間違いないだろう。建物の感じも聞いていた通りだし、その前に立つ男の人相もそうだし、何より、遠くからある場所に立ちこの建物を見ると、かなり小さいが、ギルドの紋章が見えてくるという仕掛けがあるんだけど、それも見えた。
「だれだ、お前ら、ここをどこだと思っていやがる」
ガラの悪そうな男がすごみながらそう言ってきた。
それを見た俺たちは、懐から冒険者カードをちらっと見せた。
「けっ、入りな」
男はガラ悪く俺たちを迎え入れた。
「よう、悪いな、ここではああしないとまずいんでな」
建物に入った瞬間ガラの悪かった男がそう言ってきた。
どうやらさっきのはガラの悪い演技をしていたようだ。
「気にしてないさ、事前に聞いていたし、ああしないとならないからな」
「私も気にしていないわよ」
「そうか、それで、お前さんたち、なんでここに来たんだ」
「ああ、ギルドマスターに届け物だ」
「それなら、直接渡してくれ、今日はいるからよぅ」
それから階段をしばらく降りてい行くと扉の前にやって来た。
「おーいギルマス―、客だー」
ドアをノックしてから男がそういた。
「おう、はいれぇ」
中からそんな声が聞こえたので俺たちは中に入った。
「おう、誰だぁ」
「Dランクのノーランとカイナだ、勇者王国の王都ギルドマスターハッサンからの届け物を持ってきた」
「おう、ご苦労さん。それで、なんだ」
「まずはこれを」
俺はそういって異空間収納からハッサンから預かっている書類を取り出して渡した。
「ほぉ、異空間収納か、ずいぶんとうらやましいスキルじゃねぇか」
「まぁな、それと物資もいくつかあるけど、どこに出す」
「どのくらいの量だ」
「かなりの数だな」
ハッサンからは書類だけではなくかなりの数の物資を預かっている。というか俺の異空間収納を活用すべく大量に持たされたわけだ。
「そんなにか、しょうがない、隣の部屋に出してくれ」
「了解」
俺はそう返事して言われた部屋に行き、そこに預かってきた物資を大量に異空間収納から出していった。
「ギルマス―、大変だー」
俺が物資を大量に出していると、隣のギルドマスターの部屋に誰かが勢いよく入ってきたようだ。
「なんだ、何があった」
「ハンターのやつらが、シュエクの森に入りやがった」
「なんだとー、あそこには犬人族の集落があるはずだぞ」
どうやら、ひと騒動ありそうだ。
それを察した俺は残りの物資を急いで出してから、隣のギルドマスター室に戻った。




