第60話 最凶最悪の海賊船長ヒュリップ対カイナ
カイナが海賊船内を突き進み、女性たちがとらわれていると思わしき船底あたりにたどり着くと、そこには船長のヒュリップが待っていた。
ヒュリップは、ガタイのいい、凶悪そうな顔をした男で、カイナたちを見た瞬間目元をいやらしくしつつ、凶悪に笑った。
「くその役にも立たない連中だな」
ヒュリップは、部下であったはずの海賊たちに悪態をついた。
「お前が、ヒュリップね」
「だったら、なんだ」
「あなたを倒せば、すべてが終わるというわけね」
目の前に立つのがこの船の船長であることを聞いたカイナは、こいつを倒せばいいと考えた。
「はっ、俺にかなうと思っているのかよ」
しかし、例のごとくヒュリップは自分が負けるとはつゆほどにも思っていないようだった。
それもそのはず、レイラの鑑定スキルで確認したところ、戦斧スキルレベルがなんとカイナと同じ5だったのだ。
しかも、カイナやノーランたちと違い、このヒュリップはどうも1から鍛え上げた5ということらしい。つまり、そこには多くの経験が加わっているということにもなる。
通常に考えればカイナでも勝ち目があるかどうかわからない相手だった。
だが、カイナには神剣たるレイラがある。レイラの力と自身の持つ力をフルに使えば何とかなる。カイナはそう考えた。
「それは、やってみないとわからないわよ」
カイナはそういった後後ろを振り向いてナーヤに言った。
「ナーヤ、こいつの相手は私がやるわ。ナーヤたちは女性たちを」
「……わかった。気を付けてね、あいつかなり強いよ」
「大丈夫、わかっているわ」
ナーヤは少し考えた末、ヒュリップが相手だと自分たちは邪魔になるという判断を下し、素直に従うことにした。
「おいおい、まさか、てめぇ、1人で俺に挑もうっていうのかよ」
「ええ、そうよ。あなたぐらいなら私1人で十分だからね」
カイナはそういって挑発し、ヒュリップの攻撃がナーヤたちに向かわないようにした。
それから、ナーヤたちは女性たちを救うべく船倉に入り、それを見届けてからカイナも戦いに集中することにした。
『行くわよ、レイラ』
『ええ、いつでも、いいわ』
「はぁぁぁぁぁ」
カイナは気合を入れてからヒュリップに躍りかかった。
カイナの攻撃は、腰だめにためた片手剣のままのレイラを横なぎに払った。
ガキーン
ヒュリップはそれを戦斧で受け止めた。
「ほぉ、やるじゃねぇか。ほぉら」
ヒュリップは、まだカイナを格下と思っているようで落ち着いて対処していた。
「こっちよ」
だが、この攻撃が止められるのはカイナも織り込み済み、すぐに跳ね上げられた剣を振り下ろした。
「クッ、はっ」
ヒュリップは格下とみていたカイナがまさか、はじいた剣を振り下ろしてくるとは思っていなかったのか対処が少し遅れた。
それでも、何とか回避することは出来ていた。
「へぇ、やるじゃない」
カイナは、素直に感心した。
「でも」
カイナはすかさず、次の攻撃、さらに追撃と次々に攻撃を加えていった。
「くっ、この、やろう」
ヒュリップもたまらずカイナに攻撃を入れるがカイナはしれに対処して見せた。
「てめぇ、まさか、同じレベルかよ」
ヒュリップはこの攻防でようやくカイナが自身と同レベルであることに気が付いたようだ。
それもそのはず、ヒュリップはこれまで自身と同じレベルの者を相手にしたことがなかった。
「今頃気が付いたの、そうよ、私もレベル5よ」
カイナはヒュリップにそう答えた。
「ちっ、ざけやがって、だが、見たところてめぇ、転生スキル保持者かよ。だったら、1からやって来た俺の方が上だぜ」
ヒュリップの発言は当たり前の物だ。でも、やはりそれは普通の相手だったらだろう。
「そうね。確かに私は転生スキル保持者よ。でもね。あなたじゃ、私にはかなわないわ」
カイナはそう言いつつレイラを手に突きを放った。
「へぇ、バカが、距離が足らないぜ」
そうカイナは片手剣の状態のレイラでは到底届かない距離から突きを放ったのだった。
「これでいいのよ」
『レイラ』
『任せて』
ここでカイナがレイラに指示を出した。
「な、なにっ」
ヒュリップは驚いた、なぜなら、その瞬間なんとレイラが片手剣からいつもの槍の姿に変化したのだ。
そう、カイナが突きを出した距離は片手剣では届かないが、槍なら間合いに入っていた。
つまり、ヒュリップはそれに対処ができずに食らってしまったのだ。
「グッ、くそっ、なんだ、今のは」
「悪かったわね。私の武器は普通じゃないのよ。それと、いいことを教えてあげるわ。私は様々な武技スキルを持っているのよ。それもすべて5でね」
「な、なんだと、ごほっ」
ヒュリップは驚愕しながら血反吐を吐いた。
「これまでことを悔いながら死になさい」
カイナはそういってから、槍を回して穂先で切り裂きに行った。
しかし、さすがに歴戦の海賊、それに対処して見せた。
「ぐっ、くそがっ」
ヒュリップはすかさずカイナの懐に入り込み戦斧を振り下ろした。
カイナはそれをレイラの柄でガード、しかし、その時レイラが真っ二つに斬られてしまった。
「死ねぇ」
それを見たヒュリップは勝機と見た。
「残念ね」
「ぐふぁ」
真っ二つに切れたと思ったレイラだったが、実はこれはカイナの作戦だった。
カイナには双剣スキルがある、そしてレイラは形状を変化させることができる。つまり、わざと分裂し、双剣の姿になっただけだった。
だからこそ、とどめを刺そうと戦斧を振り上げ無防備になった、ヒュリップの心臓と腹部に双剣を刺し込んだのだった。
こうして、最凶最悪と呼ばれ恐れられた海賊ヒュリップス船長ヒュリップの波乱万丈の人生は終わりを告げた。
「ふぅ、終わった」
カイナは、素早くレイラを片手剣に戻してから1息をついた。
「あれ、もう、終わったの」
とここで、ナーヤがカイナのもとにやって来たのだった。
「ええ、何とかね。そっちは?」
「こっちは予想通りってとこだよ。これから船に運ぶよ」
「わかったわ。ノーランに伝える」




