第57話 船の上
アルバ―の子孫であるノイスの好意で、アルベイラ商会の船に乗せてもらえることになった。
そこで、港を歩きその船を見つけノイス達の叔父であり、アルバ―の子孫でもある船長に話をつけて船に乗り込んだ。
そこには、すでに複数人の冒険者が乗っており、どうやら俺たちが最後のようだ。
そして、打ち合わせをしていた会議室に入るとそこには俺も驚く人物がいた。
「あれ、君は、ノーラン?」
「ああ、そうだな、確かに、ノーランのようだな」
「あれ、ナーヤに、サイトスじゃないか、なんでここに」
そう、そこにいたのは、俺が以前Eランク昇級試験を受けた際に、試験官としてついた2人だった。
「ノーランこそ」
「俺は、ニンモートに行ってみようと思ったからだけど、でも、2人は」
そう、ナーヤとサイトスは狐人族と魔族、つまりは人族ではない。
「ああ、ノーランも知っているんだね。でも大丈夫だよ、あたしたちが行くのは港町だけだからね。そこに行ったらすぐに引き返してくるからね」
俺の言わんとしていることが分かったようでナーヤがそう答えた。
「なるほど、全域ってわけでもないってことか」
「そうだ。人間主義者と名乗る連中が支配層にいるのは、全体の半分も満たないからな。それに、幸いというべきか、ニンモートの天帝と呼ばれる、王のような存在がいるんだが、その方は人間主義者ではないからな、といっても、人間主義者を黙認している点ではあまり救いはないが」
確かに、それは救いではないようだな。ちなみにニンモートの天帝というのは、王のような存在ではあるが、直接政治は行っていない、ニンモートで政治を行っているのは、主に大名と呼ばれる貴族たちの中で選挙が行われ、選ばれた人物だ。
そして、これは幸いだろう、今現在選ばれている大名は人間主義者ではないという話だった。
「だから、人間主義者ではない人が収めている地域ならあたしたちも問題ないってわけ」
ということらしい。
「なるほどな」
「ところで、ノーラン、その子は、ずいぶんかわいいけど」
話に一区切りついたところでナーヤがカイナについて尋ねてきた。
「ああ、俺の今の相棒でカイナっていうんだ。見ての通り槍遣いだよ」
「初めまして、カイナです」
俺が紹介するとカイナが一歩前に出てそういった。
「それで、カイナ、この2人は狐人族のナーヤと魔族のサイトス、Eランク昇級試験の時の試験官だったんだ」
「そうそう、あの時は大変だったよね。まさか、何もないはずの最奥に悪魔族がいてさ」
「そうだな。あれは、死ぬかと思ったものだ」
「おい、ちょっと待て、お前ら、今悪魔族っていったか」
ナーヤが悪魔族といったことで、これまで黙ってみていたほかの冒険者たちが色めき立った。
「ああ、言ったぞ」
それにサイトスが無愛想に答えた。
「まじかよ、お前ら、よく無事だったな」
「まぁね、あの時は、本当に死ぬかと思ったよ。でも、ノーランのおかげで助かったんだよね」
「ああ、ノーランがいなければ俺たちは全滅していただろうな」
「ちょっと待て、ということは何か、そいつ、ノーランだっけ、そんなに強いのかよ」
「そういうこと、だから、今回はだいぶ楽になると思うよ」
「ああ、確かにな、だが、ノーランばかりに頼ってもいられないだろう」
「ハハハハツ」
俺としても笑うしかない。
「ところで、ノーラン、カイナちゃんとはどこで知り合ったの」
ここでナーヤが空気を換えるためかカイナと俺の出会いを聞いてきたが、それ意味はないが、まぁ、答えるしかないだろう。
「ああ、勇者王国に入ったところだよ、そこで、悪魔族と戦っててさ」
「悪魔族、またかよ」
「えっと、どういうこと」
ナーヤもさすがに驚きながら聞いてきたのでカイナと倒した悪魔族の話をした。
「えっと、カイナちゃんも相当な強さがあることはわかったよ」
「ああ、まさか、悪魔族を倒せるものが2人か」
「もう、なんでDランクなんだよ」
とこんな感じに集まっていた連中はみんな驚き、つかれてしまったようだ。
という話をしているうちに出発の時刻となり、俺たちはそのまま出航となった。
そうして、海の上、進むこと数時間がたった。俺はというと、のんびりとほかの冒険者たちと釣り糸を海にたらしていた。
「どう、釣れてる」
ナーヤが暇なのか声をかけてきた。
「そこまで多くないけどな」
そういって隣においてある桶を指出した。その中には、4匹の魚が入っていた。
「へぇ、4匹か、まずまずってところだねぇ」
「だな」
釣果としては多くもなく少なくもない数だった。
「そういえばさ、ケイトちゃんたちはどうしたの」
「ああ、あの3人は、あの後さすがに続けるのは無理だったからな、引退して故郷のカプレス村に帰ったよ」
「へぇ、そうなんだ、ケイトちゃんも」
ナーヤが言うよにグロウとゴラスは無理だがケイトはやろうと思えば冒険者を続けられた。
「ああ、ケイトも一緒だよ」
「それはそうか。仲のいい兄妹だったからね」
「だな、まぁ、もしあっちの方に行くことがあったら顔出してやってくれ、俺もそのうち行こうと思っているし」
「そうだね。そうするよ」
そのあとほかの冒険者たちも集まってきて話をしたり、数人で釣り対決をしたりと穏やかで平和なひと時だった。
そんな時間から数日、これまでの航海はまさに平和そのものだった。何かトラブルをあげるとしたら、せいぜい、数名激しい船酔いに悩まされただけだ。
ちなみに俺もカイナも船酔いは幸いなかった。どうやら俺たちはそういったことには強いらしい。
『カイナはどこに行ったのかしら』
そんなことを考えているとレーヴェがカイナがどこに行ったのかと尋ねてきた。
「ああ、何でも女性冒険者だけでやることがあるみたいでそっちに行っているぞ」
『あら、そうなの、何をしているのかしら』
「確か、海賊に出会ったときに必要なことらしい」
それの詳細を聞いた時それは確かに、俺たち男では何の役にも立たないし、むしろ邪魔になるだろう。
「海賊だぁー」
「海賊が出たぞー」
その時船内にそんな声が響いた。
どうやら、海賊が現れたようだ。
「急ぐぞ」
俺はそういうとレーヴェを手に取り素早く船室を出た。




