第52話 アルバーの故郷
「どうせ、カサブラに行くんなら、そのあと、ニンモートに行く気はないか」
カイナの神剣であり、レーヴェのあなたる剣、レイラボルグを手に入れた俺たちにハッサンがそんなことを言った。
「ニンモートって、海の向こうの島国のか」
「ああ、実はあの国はギルドでも少し注目している国でな。お前らにはその調査をしてほしいんだ。それに、いくら姿が違ってもしばらくはこの国に近づかない方がいいだろうしな」
「そうだな。そうするか」
俺はカイナに確認するために見た。するとカイナも了承のようでうなずいた。
「それで、ニンモートの何を調べるの」
カイナが尋ねた。
「お前ら、人間主義って知っているか」
「人間主義、なんだそれ」
俺はそれを知らなかった。
「人間主義っていうのは、やつらがそう名乗っているだけで、実際には人族至上主義者ってことだ」
「人族至上主義者?」
「どういうこと、それって、人族最高ってこと」
カイナもよくわからないようだが俺もよくわからない。
「まぁ、ある意味そんなところだ。やつらの主張はレイフ様に作られた俺たち人族以外は人間ではないという考えでな。それ以外の種族を毛嫌いしているんだよ」
なんだそれは、意味が分からない、人族も獣人族も魔族もドワーフだって、みんな確かに創造主は違う、人族は最高神でありレーヴェやレイラを生み出したレイフ様だ。しかし、獣人族は獣神ライノット様で、魔族は魔道神アークトーラ様、ドワーフは鍛冶の神であり、レーヴェとレイラを打ち出したドルード様がそれぞれ善神が生み出している。
「なんでまたそんなことになっているのよ」
カイナも理解できないようだ。
「俺にもわからねぇ。まぁ、とにかくそんな連中がいるんだが、実は、ニンモートは支配層にこの人間主義がいるんだよ。でも、ニンモートにも人族以外も住んでいる。この意味は分かるか」
ハッサンがそういった瞬間俺とカイナは理解し青くなった。
「それってかなりやばくないか」
「そうだ、だから、ギルドとしては彼らを逃がすことを計画しているんだよ。それで、お前らに頼みたいことは実際にどんな扱いを受けているのかってことだ」
なるほど、確かに、必要なことだな。
「わかった、引き受けるよ」
「おう、頼んだぞ」
こうして俺たちはこの依頼を受けカサブラに行った後ニンモートに行くことにした。
それから数日俺たちはカサブラにやってきていた。
「ここがアルバーの故郷か」
「けっこういいところね」
『そうね。こういう街で、アルバーは育ったのね』
レーヴェもじっくりと街を眺めているようだ。
『あらあら、うふふ、レーヴェったら』
それを見たレイラも嬉しそうにレーヴェを眺めていた。
『あっ、お姉さま、あれが饅頭よ。この国では各地によって中身が違うのよ』
『あら、そうなの、それじゃ、この街のはどういうものかしらね』
レーヴェはこのほかにもこれまで俺が教えてきたことをレイラに教えている。
こうしてみると、本当に仲のいい姉妹だな。
「アルバーのことを調べるなら、まずはギルドよね」
俺がそんなことを考えているとカイナがそう言ってきた。
「だな、故郷ということはここで登録しているはずだし、たぶんその際の書類もあるはずだ」
俺もそうだったようにギルドに登録するためには書類を書かなければならない。これは、アルバーがいた400年前も変わらないはずだ。
それから、俺たちはレーヴェたちが気にしているし、俺も気になっていたので饅頭を買い、それを食べながらギルドに向かった。
ギルドに入り、移動の報告をした後俺たちはまっすぐ資料室に向かった。
「400年ぐらい前にいたアルバーって冒険者について調べたいんだけど、資料はあるか、あとこれ」
俺は資料室にいる管理人にそういってハッサンから受け取ったメダルを見せた。
「アルバー、そいつはまたずいぶんと昔のやつを調べるんだな。しかもそいつは、王都のギルマスか、仕方ないちょっと待っておれ」
そういったのは、かなり年を取ったハイエルフの爺さんだった。
ハイエルフというのはエルフからさらに進化した存在で、その寿命は言うに400年以上といわれている。
しかも、これは世の中の女性陣が一番羨ましがっている部分ではあるが、エルフというのは若い時が長く、寿命が近づくと一気にふけるという。つまり、この爺さん400年ぐらい生きていることになる。
「ねぇ、思ったんだけど、もしかしたら、あのおじいさん、アルバーを知っているんじゃない」
カイナも俺と同じことを思ったようだ。
「俺も今、そう思ったよ。聞いてみるか」
「そうね」
それから少しして、大量の資料を車に乗せ、それを引く若い人族の男とともに戻ってきた。
「これで全部だ。登録時の書類もいるか」
「ああ、頼む。それと、爺さん、聞いてもいいか」
「あん、もしかして、わしがアルバーを知っているかってことか」
爺さんも俺たちが聞きたいことが分かったようだ。
「ああ、知っているのか」
「そうさなぁ、確かに、アルバーとは会ったことがある。といっても、まだわしが子供のころの話だ」
それから、爺さんがアルバーについて語りだした。
とても優しく、それでいて、強く子供たちのヒーローだったようだ。
「わしらは、みんな憧れたもんじゃよ」
懐かしそうにそういった。
「そうか、そういえば、アルバーって、家族とかいたのかしら」
「家族か、そうだなぁ、確か、この街に嫁さんと子供がいたはずだぜ」
「えっ、それ本当か」
もしかしたらアルバーの子孫がいるかもしれない。
「おう、確か、あの一族はしばらく冒険者を続けていたなぁ。でも、今は、確か、店をやっているはずじゃ」
店、つまり。
「この街に今も子孫がいるのか」
「おう、いるぞい」
まじか、是非にあってみたいものだ。
「なんていう店だ」
「アルベイラって店だったとおもうぜ」
アルベイラ、後で行ってみよう。
その後は、爺さんが持ってきた資料を読みふけった。
というか資料が膨大過ぎて、読み終えるのに数日かかってしまったのは愛嬌というものか。




