第45話 アルバーの真実2
『貴様がアルバーだな』
ナンバル王国の騎士が突如、ミルダンジョンに挑もうとしているアルバーたちの前に合われた。
『そうだけど、なんだ』
『勅命である。我がナンバル王国王子ガイナル様による悪魔王討伐が行われる。貴様にその戦いに参加する栄誉を与える』
どこまでも偉そうな物言いだ。
『悪魔王だと、へぇ、そいつはすげぇな』
『悪魔王か、いつかは倒すべきだと思ていたが』
『まさか、王子様が名乗り出るとはな。どうだ、アルバー』
アルバーの周りの連中はやる気十分だった。
『相手が悪魔王なら断る理由はないな。それに、ナンバルは俺の故郷、その王子が出向くっていうなら、それに付き合わないのはまずいだろう』
アルバーのその言葉でどうやら決めたようだ。
「つまり、これがアルバーが私のもとに来なかった理由なのね」
レーヴェは悔しそうに騎士たちを見た。
「そうみたいだな」
すると、すぐに風景がまた変わった。
「今度はなに」
カイナがそういうと、そこはまるで陣営のごとく多くの騎士たちが立っていた。
そこに騎士に連れられて、アルバーたちもやって来たようだ。
『S級冒険者アルバー以下5名です』
『入れ』
そういわれ天幕の中に入っていった。
『貴様がアルバーか』
『はっ』
入るなりアルバーは跪きそういった。
そして、その対面にいるのは誰あろう、エレナを殺害したナンバル王国王子であり、のちの勇者王となるガイナルだった。
『俺のために励むがよい』
『承知しました』
『さがれ』
アルバーとガイナルのやり取りは短い。まぁ、国の王子と、港町の息子では立場的にこれでもありえないことだろう。
そうして、その場面は終わり、次の場面に切り替わった。
そこは大きな城の中で、おそらく悪魔王の城だろう。
「ここに、悪魔王が?」
「ええ、そうです」
俺の何気ない疑問にすぐにレイフ様が答えてくれた。
『うぉおぅらぁぁぁ』
悪魔王の城を見ているとそんな雄叫びが聞こえてきた。
「これは」
そこにあったのは、この世の者とも思えぬ戦いを繰り広げているアルバーとその仲間たちだった。
そして、その床には、複数人の騎士たちの死体が転がっている。
「……ゴクッ」
「……す、すごい」
「これが、悪魔王」
とてつもない強さだった。アルバーはまるで俺の前世とは思えないほどの強さだ。しかし、そんなアルバーでも悪魔王の相手では何かが足りない。
「そうか、今のアルバーにはレーヴェがない」
そう、アルバーはレーヴェではなく普通の大剣を使っている。そのため決定打にかけているのだ。
『くそっ、ぐはぁ』
『ダジルー』
アルバーの仲間の1人が倒された。
こうして、次々に仲間たちは倒れていった。
そして、ついにアルバーは満身創痍となった。
『はぁ、はぁ、はぁ、まさか、悪魔王が、ここまで、とは』
「ふむ、アルバーといったか、人間にしてはなかなかの強さであった。だが、これで終わりだ」
悪魔王がそういうと剣を振りかざしてアルバーに斬りかかった。
「あぶねぇ」
俺は聞こえるわけもないのにアルバーにそういった。
そして……。
『ぐはぁあ』
アルバーはついに倒されてしまった。
『はぁ、はぁ、貴様の力は厄介だ。封印させてもらった』
なるほど、俺の剣術スキルはこの時に封印されたようだ。
『後ろが空いてるぞ』
その時だった。これまで俺たちと同じく静観しているだけだったガイナルが突如悪魔王の背後に現れた。
そう、実はガイナル、俺たちがここに来た時もそうだったがずっと数人の男たち、まぁ、エレナを殺害した時も見た連中が囲む中で戦いの行く末を見ていた。
将としてならそれでもいいかもしれない、しかしこの戦いは1人でも多くの戦士が必要だったことだろう。しかもガイナルはレーヴェの姉たる剣、目覚めていないといってもその神剣を持っている。それを使い戦いに参加しているだけでも、何人か助かったやつらがいるかもしれない。
それにガイナルは、エレナの弟子であることからも実は剣術スキルが8と結構高レベル、少なくとも今の俺よりも強いはずだ。
にもかかわらず静観、本当にふざけたやつだと思う。
「あいつ、まさか」
カイナの予想通り、ガイナルはアルバーたちとの戦いで、精魂尽き果ててきていた悪魔王の背後に神剣を突き刺したのだ。
その光景はまさにエレナを殺害した時の光景そのもであった。
『がはっぁ、貴様はぁ』
「やりやがった」
そう、これで、悪魔王は倒れた。
つまり、俺たちが知る勇者王による悪魔王討伐では、勇者王が多くの騎士たちと数人の仲間たちとの協力で倒したことになっている。
しかし、その真実は違った。
真実は、アルバーたち高位冒険者たちに悪魔王と戦わせ、疲弊した悪魔王を背後から殺すという。戦略としては間違っていないが、何かしっくりとこない戦いだったということだ。
しかも、俺たち後世には英雄たちとして、アルバーたち冒険者たちの名が刻まれてない、そうだ、ガイナルは意図的にアルバーたちを歴史から消し去ったということだろう。
だからこそ、アルバーの記録もミルダルタにいたところから存在しなかったということだ。
ほんと、あのガイナルという奴は最悪だ。
というか隣から、不穏な空気が流れてきて、俺としてはそっちが気になってしょうがない。




