第44話 アルバーの真実1
『お疲れ様です。ノーランさん、カイナさん。そして、お久しぶりね。レーヴェ』
森の中にたたずむ神殿のような場所に出たと思ったら、急にそんな優し気な声が聞こえてきた。
「えっ」
「な、なに」
『まさか』
「ふふっ、初めまして、ノーランさん、カイナさん」
そして俺が振り向くとそこには声に恥じない本当にやさしそうに美女……いや、なんかそんな表現ではできなそうな人物? が立っていた。
「あ、あなたは?」
『お、お母さま!!』
「えっ!」
レーヴェ不意に母と呼んだ。レーヴェがそんな風に呼ぶ人物? は1柱しかいない。
「「まさか、レイフ様!」」
それはほぼ同時だった。俺とカイナは同時に叫ぶと同時に跪いた。
「いえいえ、お2人とも、顔をあげてくださいな。出ないと困ってしまうわ」
レイフ様はそんな俺たちを見て本当に困ったといった声を出しているが、今の俺たちには見る余裕はない、なにぜレイフ様と言えば世界最高神の女神であり、俺たち人族の魂を生み出した、偉大な母でもある。
「さぁ、お顔をあげて、私によく見せて」
そんな女神がそんなことを言ってくるのだからたまらない。
「い、いや、しかし」
それでも俺たちは戸惑った。
「さぁ」
それでもレイフ様はそう言ってきた。
これ以上押し問答をしても逆にレイフ様に失礼に当たる。
だからこそ俺たちは意を決し顔をあげることにした。
「うふふ、ようやく顔を見ることができましたね。さぁ、立って、そこに椅子を用意したから座って頂戴」
レイフ様がそういうと神殿の中に椅子とテーブルが現れ、その上にはティーセットとお菓子まで出てきた。
「は、はい」
俺たちは勧められるままその椅子に座った。
ほんと、どうすればいいんだ、これ。
国王と謁見するなんてこと自体、小さな村出身の俺には考えもしなかったことだ。それが、その国王を飛び越え、女神と謁見している。
ちょっと、意味が分からない。
「そう、緊張しないで、ほら、レーヴェなんてこんなに甘えて」
そういわれて、そちらを見てみると、何やらレイフ様に抱き着く1人の少女、いや、美少女か、赤いドレスを身にまとっている。
あれ、どこかで見たような。
というか、ちょっと待て、今レイフ様、レーヴェと言わなかったか。
俺がどういうことだと思っているとその少女が答えた。
「ここは、夢のような世界なのよ、だから私もわかりやすく人型になているってわけよ」
それは間違いなくレーヴェの声だった。
「レーヴェ、なのか」
「そうよ」
「まじかよ」
「レーヴェって、そんなにかわいかったんだ」
カイナも、レーヴェの可愛さに驚愕している。
「そうよ。でもまぁ、これは、疑似的なものであって。本来はいつもの剣なのだけど」
「ふふふっ、ノーランさんとカイナさんがレーヴェとうまくやっているようで安心したわ」
「お母さま」
レーヴェは少し嬉しそうだ。その表情は年相応に見えるな。
「ところで、レイフ様、なぜ、俺たちを……」
俺はレイフ様に用件を尋ねた。
「そうでしたね。今回お2人を呼んだのは、ほかでもありません、先ほど、カイナさんの前世、つまりエレナさんとカルミナさんの姿を見ていましたね」
「はい」
「実は、あの光景は、あの子の台座に宿った記憶を、レーヴェを通してみることができたものなのです」
聞けば、あの光景はレイフ様が見せてくれたものではなく、たまたま、あの場所にエレナとカルミナの転生者であるカイナと、カルミナの子孫であり、レーヴェの使い手である俺がそろっていたからこその奇跡的な現象だったようだ。
「ですので、今度は、ノーランさんの前世である。アルバーさんについてお話ししようと思ったのです。レーヴェ、あなたも聞きたいでしょう」
レイフ様は人化したレーヴェの頭をなでながらそういった。
「ええ、知りたいわ」
「俺も知りたいです」
「ふふっ、わかりました。では……」
レイフ様がそういうと周囲の景色が変わった。
といっても、俺たちは椅子に座ったままでテーブルとその上のティーセットもそのままだ。
「これは?」
「……」
「うふふふっ、これは、この世界の過去を映像としてこの場所に投影したものです。今見えているのはノーランさんの故郷近くにあるミルダルタのあたりですね」
レイフ様が言っていることは俺にはよくはわからないが、ミルダルタの近くということはわかった。
しかし、俺の知るミルダルタとは似ても似つかない、何せ本当に小さな村? のような場所だったからだ。
「ここが、ミルダルタ、ですか」
「ええ、といっても、400年近く前、ですが」
400年前、俺はそれを聞いて納得した。400年前、それはミルダンジョンができたばかりのころであり、カルミナたちが生まれる前、つまりまだ領主がいないミルダルタというわけだ。確かにその頃はいま見ているように村にもならないような場所だった。
「そして、あそこにいるのが、アルバーさんです」
俺はそう言われてそっちを見た。
そこにいたのは、40代半ばぐらいの大剣を背負った歴戦の勇士といった風の男だった。
「あの人がノーランの前世? へぇ、結構かっこよさそうじゃない」
カイナがそういっているが、確かに少し渋さが見え隠れしているような人物だった。
って、あれ、俺の前世なんだよな。そう思うと急に自画自賛しているような気分になってきた。
「ふふっ、そうですね。アルバーさんはこれからお仲間とともにミルダンジョンに挑もうとしているのです」
ミルダンジョン、それはミルダルタ近くにできたダンジョンであり、俺とレーヴェが出会った場所だ。
「本来なら、ここでアルバーが、私のもとに来るはずだったのよね」
「ええ、ですが、ちょうど来たようですね」
レイフ様がそういったとき、数人の騎士がアルバーたちの前に立った。
『んっ、ナンバル王国の騎士が、俺になんのようだ』
アルバーによると、その騎士たちはナンバル王国の騎士らしい。
『貴様がアルバーだな』
騎士は偉そうにアルバーに確認をとっている。




