第41話 墓参り
「ノーラン、準備出来た?」
俺が泊っている部屋の外からそんなカイナの声が聞こえてきた。
「ああ、今行く」
『カイナ、ずいぶんと張り切っているわね』
「まぁ、自分の前世だしな」
今日は、これからデリルに旅立つことになっている。
カイナとしては早くデリタルダンジョンに行きたいのだろう。
『まぁ、私も、お姉さまが安置されていた場所には興味あるわね』
カイナだけでなくレーヴェも早く行きたいようで少しそわそわしている感じがする。
「そんじゃ、行くか」
こうして、俺は部屋を出てカイナと合流した後デリバールを旅立った。
そして、今デリルの街が見えてきた。
「デリルについたら、まずは宿をとって、明日ダンジョンに潜るぞ」
「そうね。私としては早く行きたいけど、さすがにこの時間にダンジョンに行くわけにもいかないわね」
カイナが残念そうだが、それは仕方ない、ただいま夕方を越えそろそろ夜の闇がやってくる時間。こんな時間にダンジョンに潜るなんて普通にありえない。
というわけで、宿をとり、その日は休むことにした。
そうして、次の日ついにデリタルダンジョンに潜る時が来た。
「ついに、やって来たのね。私の前世のさらに前、エレナが最期を迎えた場所」
カイナは感慨深そうにダンジョンの入り口を眺めていた。
「そうだな。それをカルミナが見つけた場所だ」
『ええ、お姉さまが安置されていた場所ね』
俺たちはそれぞれの思いを言ってから、いざ、ダンジョン内に入っていった。
そんな俺たちの胸にはそれぞれ一輪の花が刺さっている。
この花は、このデリタルダンジョンに入る際の習慣みたいなものらしい。
なんでも、このダンジョンの最奥には墓が1つあり、そこには謎の女性エレナの名が墓標として刻まれているという。
そして、このダンジョンに入った冒険者は、その最奥の墓に1輪の花を供える。すると、その後の冒険者の仕事がうまくいくというジンクスがある。
ちなみにこのエレナという女性が謎とされているのは、俺とカイナが調べた通り、出身国と冒険者だったということ以外はわからないからだ。
そして、その墓は一体だれが作ったのかも誰も知らないらしい。
まぁ、ぶっちゃけ俺とカイナはわかってはいるんだけど、それでも俺たちはこの花を供えなければならないと思う。カイナの前世だし、俺にとっては先祖の前世であり、相棒の前世。そして、レーヴェの姉たる剣の本来の持ち主だからだ。
勢い込んで攻略を開始した俺たちだったが、いきなりちょっとした壁にぶつかった。
「うおぅ」
「気を付けて、そこ罠あるわよ」
『危なっかしいわね』
そう罠だ。ダンジョンにつきものの罠、俺は今それにかかりそうになった。
考えてみれば俺は魔法を使うが剣士、カイナも武器なら何でもできるが戦士。ダンジョンに必要な盗賊系のスキルを持っていない。
そういやぁ、前にミルダンジョンに入った時はケイトがいたから、すっかり忘れていた。
といっても、俺もカイナも全く罠の位置などが分からないわけではない。
一応冒険者のたしなみ程度だが、罠察知と解除技術は多少ならある。
まぁ、本職には言うに及ばずだけど……。
『仕方ないわね。私が手伝ってあげるわよ』
ここでこれまで黙ってみていただけのレーヴェが手伝ってくれるらしい。なんでもレーヴェの鑑定スキルを使えば大体の罠の位置、解除の仕方などが鑑定することでわかるようだ。
「助かる」
「そうね。お願いレーヴェ」
こうして、俺たちはレーヴェのおかげで罠に関しては問題なくなった。
また、ダンジョン内の魔物は、これは全く問題なかった。出てくるのは事前に調べた情報通り、ダークスパイダーが多くいた。
この魔物は蜘蛛の魔物で大きさは人間の子供ぐらい、ダンジョンのような暗闇を好む性質がある。
この魔物の最悪なところは、子供を産むことだろう、しかもその子供は生まれた瞬間はこぶしぐらいのサイズだが、1日もすればその4倍ぐらいになり、1週間もすれば親と同じぐらいのサイズになる。
それゆえか、この子供とにかく食欲が旺盛で、目についたものは兄弟や親以外なら何でも食べる。
だから、この魔物に出会ったらまず周囲を確認して子供がいないかを確認する。
まぁ、小さくてもこぶしぐらいだから見落とすことはないだろうが、この魔物は蜘蛛だ。そのため、天井に張り付いていることもよくある。
そんなときは、ウィンドカッターを大量に作り出して、はなってやればそれで終わる。
しかし、親に関してはウィンドカッターでは倒せない。なぜなら親ともなればその骨格は硬く普通の刃では届かない。といっても、レーヴェを持つ俺とカルムの槍を持つカイナにとっては全く問題なかった。
というわけで、次々に倒していき結構いい時間になってきた。
「そろそろ、ここらで休むか」
「そうね。そうしましょうか」
それから、俺は周囲に結界魔法を張った。
これは、以前ミルダンジョンでも張ったものだが、これを張るとその中には魔物は入っては来られないというものだ。
この魔法はやはり夜の見張りなどが必要なくなるというメリットがあるために、これまでも結構使てきた。
もっとも、この魔法使わなかったとしても、眠る必要がないレーヴェが大体見ていてくれるから必要ないっていえば必要ないけど、周囲の目というのもあるからな。さすがに周囲の目がある中でレーヴェに頼るっていうのもおかしいだろう。というわけで使いまくっているうちに結構レベルが上がり、以前より強度も精度も上がっている。
「ほんと、その魔法便利よね。私なんて今まであまり野営できなかったのよね」
カイナがこの魔法を見てそういったが、それはそうだろう、1人だと見張りの交代ができない。
そんな感じに数日が経ちついに最奥の部屋にたどり着いた。
俺としては前回の反省を活かしてとにかく中に入る前に確認をする。
「……よし、誰もいないな」
そういってから部屋の中に入っていった。
そこは、やはり何もない空間ミルダンジョンと同じだ。ただ違うのは悪魔族はいないという点だろう。
そして、横の壁を見ると、そこにはさらなる空間が見えた。
「あそこか」
「ええ」
『あそこが、お姉さまが……』
俺たちは緊張の面持ちで破られた壁の中に入っていった。




