第35話 カルムの真実2
「いや、本人だよ」
「えっ、はっ、はぁぁ!!!」
カイナは盛大に驚愕したが、これは当然だろう、先にもいったがカルムは世間的には男で通っているからだ。
「ど、どういうこと」
「カルムというのは偽名で、本名はカルミナ、男装した女性冒険者だったんだ」
今のこの話を聞いたら世界中が驚くであろう事実だ。カイナのように……
「うそでしょ。信じられない、それに、私の前世が、そのカルムってことなのよね」
「ああ、そうだ」
「それが、信じられないわよ。確かに私もカルムと同じく槍遣いだけど、でも、槍遣いなんてどこにでもいるじゃない」
「そうだな。俺の村にも俺以外全員がそうだし、よく村に槍遣いがやってくるからな」
「そうよ。それともなに、私がそうだっていう証拠があるの」
カイナがある意味俺が待っていたような言葉を言った。
「ああ、それが、その槍だよ。その槍、カルムが長年愛用した槍で、俺たちは便宜的にカルムの槍と呼んでいる」
「えっ、カルムの槍。じゃぁ、これをカルムが……」
カイナはそれこそ宝物のように持ち直して、槍を見つめている。
「まぁな。それで、あまり知られていないけど、武器とかって長年愛用して大事にすると、武器自体が持ち主を主と認めて所有者として名前が刻まれるんだ」
これは俺もレーヴェと出会ってはじめて知ったことだった。
「そんなことが、それで、この槍はカルムの名が……いや、本名はカルミナなのよね」
「そういうことだ。まぁ、俺が持っていた時はカルミナの子孫ってことで、俺の名前が仮登録されていたけどな」
これもレーヴェから聞いたことだ。鑑定スキルで見たらしい。
「それが、カイナが持った瞬間カイナに名前が変わった。ほら、カイナが持った時わずかに光っただろ。あの時だよ」
「あの光が……、あれ、でも、なんでノーランにそんなことがわかるの。だってそれって、鑑定スキルじゃなきゃ、無理よね……はっ、まさか」
カイナは気が付いたようだ。
「まぁな、その鑑定スキルだよ」
「すごい、ノーラン、そんなスキルを、というか本当にあったんだ」
カイナは驚愕しているが、それもまた当然だろう、何せあることすら疑われているある意味伝説級のスキルだからな。
「らしいな。でもまぁ、正確には俺のスキルじゃないけどな」
「? どういうこと」
カイナは意味が分からないという感じだ。
そこで、俺は真実を伝えるために傍らに立てかけてあったレーヴェを手に取りカイナに見せた。
「鑑定スキルを持っているのは、これ、俺の剣なんだ」
「えっ」
目が点になるカイナ、まぁ、普通剣にスキルなんてないから当然の反応だろう。
「名はレーヴェボルグ、神々が打ち上げた神剣であり、インテリジェンスソードなんだよ」
『初めまして、カイナ、レーヴェボルグよ。レーヴェでいいわ』
俺の紹介に合わせてレーヴェが念話で自己紹介をした。
「えっ、えっ、今、どこから、女の子の声が、えっ、うそでしょ」
カイナは混乱している。
「今のは念話だよ、最初はびっくりするけどな、俺もそうだったし」
事実として俺もカイナのよう反応をした。
「そんな、まさか、本当に、この剣が……」
カイナはまじまじとレーヴェを見つめてきた。
『あら、そんなに見つめられると、照れてしまうわね』
「ご、ごめんなさい」
レーヴェがからかったのでカイナが委縮した。
『ふふっ、冗談よ』
レーヴェもなんだか楽しそうだ。
「本当に、インテリジェンスソードなんですね」
カイナが急に敬語になった。多分レーヴェが神剣だということが影響しているのだろう。
『ふふふっ、別にかしこまらなくてもいいわよ。神剣といっても私は剣、ノーランの道具なんだから。主より敬われたら困ってしまうわ』
確かに、レーヴェの言う通りだろうな。
「そう、そうね。わかったわ、レーヴェ、よろしく」
どうやらカイナはこの状況を受け入れたようだ。
「それで、レーヴェ、本当に私は、ノーランの先祖である、槍遣いカルムことカルミナさんなの」
『ええ、間違いないわ。あなたが今持っているその槍、カルムの槍の所有者は間違いなくあなたの名前が刻まれているもの』
「そっか、私が……ねぇ、ノーラン、私の前世ってどんな人だったの」
「カルミナのことか、そうだな、村に伝わる話だと、やさしく、厳しい人だったとある」
「そうなんだ」
それから、俺はカイナに乞われるままカルミナの真実を語った。
カルミナが活躍したのは今から約200年前、その時の世間といえば、男尊女卑が激しかった。そのためカルミナのように女性冒険者は生きにくかったとされる。
例えば依頼を受け、いざ依頼人に会いに行くと女性だというだけで、その依頼を撤回してくることもしばしはだし、パーティーに女性が混じっているとその女性を娼婦のように扱い差し出すようにと迫る不届きものまでいた。
そんな時代だからこそ、多くの女性冒険者は男装し男性冒険者としてふるまっていた。
カルミナもまた、その1人だった。
それからのことは、誰もが知っているようなことを成し遂げ稀代の冒険者として名を売ったというわけだ。
そんな功績をあげたことで、パーティーの1人であり、テルミント家の4男であった、バラック・ド・テルミントが貴族に叙勲されマルコーダ領を領地として賜った。
一方、その時すでにバラックと恋仲にあったカルミナだったが、孤児であり、平民であった出自の問題で主にバラックの周囲から猛反対を受けた。
それでもバラックはカルミナと一緒になることを望んだそうだ。
そして、カルミナもまたそんなバラックを愛していた。だからこそ、カルミナはバラックのために身を引くことを決意。
そうして、静かにバラックの前から消えたという。
まぁ、そのあと、現在のカルム村があるあたりで暮らし、1人の子供を産んだ。
そう、その子孫が俺というわけだ。
「ねぇ、もしかして、その子って」
カイナが気付いたように、その子の父親はバラック、つまり俺はミルダルタ領主であるマルコーダ男爵とは縁戚関係にあるというわけだ。
といってもマルコーダ家はそんなこと知らないだろう。
事実、バラックはカルミナを探し続けて5年、ついに見つけたときカルミナのそばにいた5歳ぐらいの子供を見て、自分とは別の男と一緒になったと勘違いした。
それでも、バラックはカルミナに対して最大限の支援をして、カルム村を作ったということだ。
「……それが、カルムことカルミナの真実だよ」
「そんなことが、それが、私の前世」
カイナは思わぬ自身の前世に感慨深い表情をしていた。




