第31話 さらばアーバイト王国
「今日から、お前はDランクだ」
ギルドマスター室に入るなり、いきなりザガンからそう言われた。
「はっ、いきなりなんだって、ちょっと待て、Dランクって、俺がか」
いきなりすぎて軽く混乱していた。
「そうだ、お前がだ。昨日あれから、国内のギルドマスター達と会議をしてな」
聞けば、ギルドマスターともなればほかの支部との情報交換が重要となる。
そのため、各ギルドマスター室には古代魔法を用いた設置型の通信魔方陣があり、それを使えばその情報交換ができるらしい。
といっても、ここグルベイズのギルドマスター室にあるのは国内のギルドマスターたちと話ができるもので、ほかの国とはできないらしい。
しかし、王都のギルドとなれば、他国との連携が必要となるために他国の首都との通信ができるようだ。
まぁ、とにかくそれを用いて昨日から、国内のギルドマスターたちと会議をしたようだ。
それにより、悪魔族を2体討伐した俺が、いまだにEランクであることはさすがに問題だろうとなった。
「ということから全員一致でお前のDランク昇級が決まった。というわけだ」
なるほど、俺としてはありがたい話だ。
「そういうことか、俺としてはDランクになることが今の目標だからなありがたい話だな」
こうして、俺はついに当初の目的通りDランクに昇級することができた。
『つまり、これでようやくお姉さまがいるらしい、ナンバル勇者王国に入れるのね』
レーヴェも心なしかうれしそうだ。
『そういうことだな』
「あとはサニマに任せてある」
「わかった」
それから、俺はサニマとともに受付に戻りDランク昇級の手続きをした。
「おめでとうございます。ノーランさん」
そう言ってサニマが冒険者カードを差し出してきた。
「おう、ありがと」
俺は少し照れながらカードを受け取った。
「これから、どうされるんですか。やっぱり、ここを出られますか」
サニマが少しさびしそうにそう聞いてきた。
「そうだな。そのつもりだよ」
「そうですか、さびしくなりますね。でも、ノーランさんならすぐに活躍を耳にしそうですけど、だから、期待して待っていますね」
サニマはさびそうな表情から一遍笑いながらそう言った。
「あははっ、その期待に応えられるように頑張るよ」
それから、俺は旅立ちの準備をするためにギルドを後にした。
Dランクに昇級した次の日、さっそくグルベイズを発つことにした俺は西門にやってきていた。
『これで、やっとお姉さまに会えるわね』
『そうだな、思ったよりすぐだったのはありがたかったよな』
『そうね。まぁ、悪魔族を2体も倒したんだから当然よね』
『そうかもな』
そんな会話をしながら門を出た。
グルベイズを出て数日、いくつかの宿場町や村、街を経由してついに今、アーバイト王国とナンバル勇者王国との国境の街ベルザーラに到着した。
この街は中央にある大きな壁で街を東西に分断されており、東側がアーバイト王国で、西側がナンバル勇者王国となる。
その行き来は街のど真ん中にある門でしかできない。
ということで、まずはそこに向かう必要があるだろう。
しかし、新しい街というのは、レーヴェにとって新鮮であるらしく、あちこち寄り道を強いられてしまった。
『あら、あそこにあるものは何かしら?』
レーヴェが指示したものは上部をねじり、真っ白で湯気をあげ柔らかそうものだった。
『あれか、……なんだろうな、食べ物だろうとは思うけど、見たことないからなぁ』
何かわからなかったので、聞いてみることにした。
「これ、なんだい」
「お兄さん、この街初めてかい」
「ああ、今しがたついたばかりだよ」
「そうかい、だったら知らないだろうね。これは、饅頭っていうものでね。勇者王国では一般的なものなんだよ」
「へぇ、それで、どんなものなんだ」
「この白い生地の中に様々な食材を入れて蒸すんだ。まぁ、うちのは、豚肉を甘辛く似たものを入れているんだけど、これは各地や各家庭で違うんだよ」
聞けば、かなりうまそうな食べ物らしい。しかも、中身が各地や各家庭で違うというこれはぜひ、いろいろ食べてみたいものだ。
そう思いつつ店のおばちゃんから饅頭を受け取りさっそく食べてみた。
『どう、おいしいの』
「うまいな」
「そうかい、それはよかったよ」
『こういう時、ものが食べられるノーランがうらやましいわね』
レーヴェは軽く恨みがましくそう言った。
そういわれても、俺としては困る、剣である以上これは仕方ないことだからだ。
それからも、ことあるごとにレーヴェに聞かれ、答え、知らなければ聞く、そんなことを繰り返しているために中央門にたどり着くのにかなり時間がかかってしまった。
そして、中央門にたどり着いた。
「やっと、ついたな」
俺は思わずそうつぶやいてしまった。
『あそこを通ったらナンバル勇者王国に入れるのかしら』
『ああ、あそこの検問を抜けたらな』
検問、国境を守るだけあって、街に入るものとは物々しさが違う。
街に入るときは検問といっても結構緩く、警備兵もフレンドリーだったりする街もある。
しかし、今目の前にいる警備兵はかなりの緊張感をもって行っている。
まぁ、当然といえば当然だろう、変な奴を国から出せばアーバイト王国の沽券にかかわるし、逆に変な奴をこの国に入れるわけにもいかないから、当たり前だろう。
というわけで、俺の番がやって来た。
「次」
「これを」
俺は冒険者カードを見せた。
「冒険者か、ほぉ、その年でDランクとはなかなか優秀なようだな。よし、通れ」
結構あっさりと通ることができた。
これがDランク冒険者というわけだ。
『これで、もう入ったの』
レーヴェは、ここを通ればすでにナンバル勇者王国だと思っているようだ。
『いや、ここは、どちらかというと、どこの国でもない場所だ』
『どういうこと』
俺はレーヴェに説明した。
今の検問はアーバイト王国のもので、この先にはナンバル勇者王国の検問もある。そして、その先がようやくナンンバル勇者王国というわけだ。
そして、ここはというと、そのどちらでもないいうなれば緩衝地帯というわけだ。
『へぇ、それじゃ、すぐにそこも抜けましょう』
それから、ナンバル勇者王国の検問もあっさりと抜けて、ついにアーバイト王国を出て、ナンバル勇者王国に入ったのだった。




