第25話 スラム街
はぐれオークを討伐してから3週間がたった。
あれからもいくつかの依頼を直接受け、こなしていった。
その内容は大体が討伐で、たまにFランクパーティーとともに護衛依頼などだった。
まぁ、それらは特筆するようなことではないが、それなりに大変なものが多かったが、何とかこなしていった。
そして、今日もまたどんな依頼をもらうんだろうと思いながら俺はギルドに向かって言った。
「ああ、ノーランさん、待ってましたよ」
俺が入るなりサニマから声をかけられた。
「今度はどんな依頼だ」
俺も慣れたもので、サニマがなんで待っていたのかをすぐに理解した。
「今日は、ちょっといつもと違いまして、お父……じゃなかったギルドマスターから直接説明します」
確かにいつもと違ういつもはサニマから依頼票を渡され、その場で受けるか否かを答えてきた。しかし、今回はギルドマスター自らの説明ときた。これは何か嫌な予感がするな。
『私もそう思うわ。なにかある気がするわねぇ』
レーヴェもそう感じたようだ。
『まぁ、とにかく話を聞いてみよう』
『そうね』
念話でのレーヴェとの会議を終えた俺はサニマに連れられてギルドマスター室に向かった。
「ノーランさんを連れてきました」
サニマがギルドマスター室の前でノックをしてからそう告げた。
「おう、入れ」
「失礼します」
サニマが先に中に入り俺はそのあとに続いて入っていった。
「よう、ノーラン、朝から悪いな」
「いや、いいけど、なんだ突然ギルドマスターから直接説明って、いやな予感しかしないけど……」
「まぁ、そうだろうな。だが、まぁ、話は聞いてもらうぞ」
有無を言わせないように話を始めた。
「わかっているさ。それで、どんな依頼なんだ」
「お前にはスラムに行ってもらう」
スラム、この街に入った時にミルダルタ出身だと名乗る爺さんから近づかないほうがいいと警告された場所だ。
「スラム、近づくなって警告されたけど、いいのか」
「普通のEランク冒険者だったら、俺も止めるぜ。だがな、お前なら問題ないだろう。それに俺の使いで行くことになるからな、何の問題もない」
聞けば、ギルドマスターのザガンは元々スラムの出身だそうだ。
実はスラム出身の冒険者は結構いるらしい、ザガンもかつてスラムから冒険者となり、めきめきと腕をあげてついにギルドマスターに出世したらしい。
そして、ザガンの使いなら問題ないというのは、何でもスラムを現在牛耳っているガイエルという男とザガンは幼いころからの付き合いのある親友だということだった。
「私も、昔からガイエルおじさんにはよくしてもらっているし、娘さんのマルティナは妹みたいなものなのよ」
ここでこれまで黙って聞いていたサニマがそういった。
まぁ、父親同士が親友ならそうだろうな。
「まぁ、そういうことだから、頼むぞ」
こうして、俺はギルドマスターからの直々の依頼ということで一路スラムに向かうことにした。
『ずいぶんと、ボロボロね。本当にここに人が住んでいるのかしら』
レーヴェが疑うのも無理はない、グルベイズの街は古い街だけあって、確かに古さはある。しかし、そこはきちんと整備されており、人が住むのには全く問題がない。
それに対して、今俺の目の前にあるものはどう考えても廃墟としか見えない。
『さすがに、ここは誰も住んでないだろ。と思うぞ……たぶんだけど……』
言ってて少し自信が無くなってきた。ほんとに住んでないよな。
「おい、小僧、ここは、お前のような奴が来るところじゃねぇ。とっとと帰りな」
俺が、スラムに入ろうとすると突然入り口近くに立っていた男が声をかけてきた。
「そうしたいけどな、ガイエルってやつに呼ばれてきたんだ。どこにいる?」
ガイエルの居場所はザガンからスラムの最奥だと聞いていたが、具体的な場所は聞いていないここに来るまでどうするかと思っていたがちょうどよかった。この男に案内させよう。
「あ˝てめぇ、ざけんなよ。てめぇみたいな小僧をガイエルさんが呼ぶ分けねぇだろう。それに、ガイエルさんを呼び捨てだと。死にてぇのか」
『あら、怒らせてみたいよ』
俺としてはそのつもりはなかったんだけどな。
『そういえば、ザガンから何か預かっていなかった』
俺がどうしようかと悩んでいると、レーヴェがそういった。
言われてみれば確かに、ザガンから預かっていたな。
そう思い懐から1枚のコインを取り出して、男に見せてみた。
「! なっ、これは! ……ちっ、くそが」
コインを見た瞬間男は驚くとともに舌打ちを打った。
「ついてこい」
そして、どうやら案内してくれるようだ。
「ああ」
『初めから、見せておけばよかったわね』
『確かに、そうだったな』
レーヴェの言う通りだ。といっても、ただ忘れていただけだけど……。
それから、男について歩くこと数分、男が屋敷のようにでかい建物の前で止まった。
「ここだ、いいか、ガイエルさんの前で呼び捨てなんかするんじゃねぇぞ。そうすりゃぁ、てめぇの命だけじゃなく、案内した俺の命までやばいんだ」
どうやら、ガイエルというのは相当に恐れられているようだ。
「わかった、気を付けるよ」
俺は適当に返事をして屋敷の中に入っていった。
「くそが」
そんな俺を見て後ろから案内してきた男の悪態が聞こえてきたが、とりあえず無視して中に入ることにした。
『大きいわね。ほんとにこれ人の家なのかしら』
『ここって旧市街だったはずだから、もともと、貴族とかが住んでたんじゃないか』
『貴族ねぇ、ほんと、人間ってよくわからないわね』
確かに同じ人間でもこんな矢相木に住むやつもいれば、ここに来る途中で見たような、ボロ屋に住んでいる奴もいる。
「同感だ」
俺も思わずつぶやいていた。
「さてと、とりあえず中に入ったけど、ガイエルってやつはどこにいるんだ」
「お前が、ザガンが送り込んできたやつか。確か、ノーランだったか」
俺の独り言を言っていると、上の方から声が聞こえてきた。
ふと見上げると、そこには、無精ひげを生やし、ドワーフみたいな体躯をしていながら、その大きさは、でかいとしか言いようのない男が立っていた。




