第23話 技術系スキル
グルベイズのギルドに拠点移動の報告に行ったらなぜか、ブロスという大男にいちゃもんをつけられた。そして、なぜかわからないが、その男と模擬戦をすることになった。
というわけで、訓練場でブロスと対峙しているわけだが、俺はなんとなしにブロスを観察してみた。
俺の背の高さは大体標準ぐらいで、それほど高いわけでもないが低いわけでもない。そんな俺が見上げるほどにブロスはでかい。それは背の高さだけではなく、その身にまとう筋肉も際限なく鍛えられており、もはや筋肉の鎧を身にまとっていると表現しても問題ないぐらいだ。そのためか、鎧は俺と同じく革鎧、そして何より目を引くのが、そんな大男のブロスと同じぐらいの長さがある大剣だろう。
その剣の素材は鋼製みたいだが、名工の作のようでレーヴェも感心する出来栄えとなっている。
もし、レーヴェを手に入れる前の俺がブロスと対峙したらたぶん、というか間違いなく一目散に逃げていただろう。
「よし、お前ら準備はいいな」
俺がブロスを観察しつつそんなことを考えているとギルドマスターがそう言ってきた。
「いつでも、いいぜ」
ブロスは自信満々にそういった。
『ふふっ、すごい自信ね』
自信たっぷりに言うものだからレーヴェが思わず笑ってしまっている。
「俺もいつでも」
俺はそんなレーヴェを気にする風もなくそう言った。
「では、これよりEランクノーランと、Fランクブロスの模擬戦を始める。立ち合いはグルベイズ冒険者ギルド、ギルドマスターザガンが務める。ルールは、負けを認めるか、死亡し魔法陣が発動する。または戦闘続行不可能と俺が判断した場合とする。それでははじめ」
実に簡単なルールを説明した後、合図が出された。
「いいことを教えてやるぜ」
開始の合図が出されたというのにブロスはにやけながらそう言ってきた。
「なんだ、突然」
「俺の大剣スキルレベルは4だ。Fランクと思って侮ったな」
その瞬間訓練場に集まった俺以外の全員が驚愕した。
俺以外というのは、俺はレーヴェの鑑定ですでに知っていたからだが、ほかの連中はそうはいかない。
その理由は、魔法などの能力系スキルは適性や習熟度によってレベルが上がっていくのに対して、剣術などの技術系スキルは適性や習熟度のほかに鍛錬が必要不可欠となる。
そして、そのレベルについて説明するとまず1はそのスキルに該当する武器をある程度振れ、扱えれば身につくが、2となるとそこに才能が必要となる。その才能がなければいくら鍛錬を積み重ねても1のままだ。実際、俺の槍術スキルは子供のころから鍛錬を繰り返してきたというのに1のままちっとも上がらない。
そうして、才能があるものだけが鍛錬の末2に上がることができる。ちなみに俺の幼馴染たちは全員この2だったし、これは冒険者でいうと、だいたいFランクとEランクあたりに多いレベルといえるだろう。そういうことからも俺が以前パーティを組んでいたグロウたちはこのレベル2というわけだ。
それから、次の3に上がるためには、多くの実戦経験と、より多くの鍛錬が必要となる。
そのために俺の村の大人たちが大体3となるし、冒険者でいうと、大体Dランクが大体このレベルだ。つまり、俺たちのEランクの昇級試験で試験官を務めたナーヤとサイトスはレーヴェの鑑定で技術系スキルはレベル3だった。
これらからも予想できるかもしれないが、4というのは3となるよりも更なる鍛錬が必要になるのは言うまでもないだろう。その必要な鍛錬は熾烈を極め、ほとんどの人が3どまりとなるわけだ。だから4以上に上がるのはほんの一握り村では父さんだけだったし、冒険者でいうと、大体C、Bランクの人がこの4という場合が多いと聞いたことがある。
そういうことからも、ブロスが言った4というレベルの衝撃度は計り知れないものとなる。
おそらく、このブロス、元傭兵ということだったが、相当な修羅場を潜り抜けてきたんだろう。
こうして、俺がスキルレベルについて考えているうちにブロスが動き出して、俺の目前まで迫ってきていた。
「うぉうりゃぁ」
雄たけびとともにブロスは大剣を振りかざし斬りかかってきた。
もし、こちらの剣術スキルが3以下だったら、次の瞬間真っ二つになっていただろう。
しかし、俺には通用しない。
俺は、それにレーヴェを合わせそらせると、素早く体をブロスの横に滑らせると、そのまま薙ぎ払った。
「ぐぉ、な、なんだと」
ブロスは思わぬ反撃を受けて驚愕した。
だが、俺の攻撃はそこで終わらない、
すぐさまレーヴェを右わきに構えブロスとの距離を詰め、一閃。
「ふん」
気合の声とともにレーヴェを振りぬいた。
「ぐぉぅぁぁ」
先ほどの攻撃による衝撃と予想外の反撃で、スキができていたブロスはよけることができず、まともに俺の攻撃を受けてしまった。
「バカな、レベル4の俺が、負けるはずが……」
ブロスは最後にそういったので、俺はある事実を教えることにした。
「悪かったな、俺の剣術スキルのレベルは5だ」
ブロスはその言葉を聞いたかは知らないが、気を失い倒れてしまった。
そう、ブロスの4と俺の5、レベルは1つしか違いがないが、ここには度し難い壁が存在する。どういうことかというと、5に上がるためには、鍛錬や才能のほかに精神面が大きく左右するといわれており、この精神が伴わなければいくら鍛錬をしても5に上がれない。しかし、俺のように前世で5以上の高レベルに到達したものは、今世では5から始めることができる。これは、前世で5以上に上げることができたものに対する神々からの褒美だといわれている。
「……ブロスが気を失ったことで戦闘続行は不可能と判断する。よって勝者、ノーラン」
それを見た、ザガンがそう宣言したことにより急遽始まった俺とブロスの模擬戦は終わった。
余談だが、本来俺に斬られたブロスは真っ二つになるはず、にもかかわらずそうならなかったのはひとえにレーヴェのおかげだ。模擬戦が始まった時俺もレーヴェもブロスを斬るつもりはなかった。そのためレーヴェの形態変化能力を利用して刃を丸くしておいたのだ。そのため、現在のレーヴェはオリハルコン製の棒のようなものとなっていた。
「す、すごいです、ノーランさん」
「すげぇぞ」
「すごすぎだろ、レベル5って、ありえねぇ」
「初めて見たぜ。あんな高レベルのやつぁ」
見学者達も口々に俺をほめたたえてきた。
「なるほどな、まさかとは思っていたが、剣術レベル5か、道理で悪魔族を討伐できるわけだな」
ここで、ザガンが突然そんなことを言ってきた。
「おいおい、まじかよ」
「悪魔族って、うそでしょ」
「いや、でも、確かにレベル5なら……」
「ありえなくはない、か」
「それよりも、あいつ何もんだよ」
おかげでそんな声が響いていた。
これは、しばらくここではあちこちから声がかけられそうだな。
俺は、そんな声を聴きながら今後の面倒さを嘆いていた。




