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剣と少年  作者: 敦
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第20話 新たな装備

 カルガンの街にやってきて、1週間がたった。

 ついに今日、レーヴェの鞘と俺の防具が出来上がる予定の日だ。

 そのため、朝からいそいそとカルツの店に向かった。


「おう、来たか、出来てるぜ」

 店に入るなりカルツがそういって声をかけてきた。

「おっ、ほんとか、見せてくれ」

 俺も待ち遠しかったせいか、少し食い気味にそういった。

「こいつだ」

 そういってカルツがカウンターの下からまず出したのは鞘だ。

 見たところ、革製のようだった。

『へぇ、悪くなさそうね』

 レーヴェも見た目は気に入ったようだ。

 俺もそう思いながら眺めていると、カルツが自慢げに説明を始めた。

「こいつは、外側にトロールの革を使っているからな、多少の傷ならすぐに元通りとなるし、内側にはペガサスの毛皮を使っている」

「トロールの革はわかるけど、ペガサスの毛皮?」

 トロールといえば、巨大な人型の魔物で、その特徴はなんといってもその回復力だろう。

 なにせ、いくらこっちが攻撃を入れても、それが次の瞬間には完全回復しているという、そのためトロールを倒すには一撃必殺が必定となる、非常に厄介な魔物だ。今の俺なら、たぶんレーヴェのおかげでそれができるかもしれないが、できれば会いたくはない。たとえ、その素材が高価だったとしてもだ。

 そして、内側に使った素材であるペガサスの毛皮についてだが、どんな効果があるかはわからないが、ペガサスといえば一言でいえば翼の生えた白馬。その美しい見た目から、聖獣と思われがちだが、実際にはれっきとした魔獣で、人間を見るとすぐさま一斉に襲い掛かってくるという見た目に反した獰猛さを持っている。

 とここまでは誰でも知っていることだ。

「ペガサスっていうのは、常に真っ白だろ、やつらどんな泥の中に入ろうが何をしようが、あの真っ白さを維持しているんだ」

 それはありえない、普通は汚れるものだろう。

「そんな、まさか」

 俺は当然疑った。

「まぁ、そう思うのは無理もない、だが、これを見てみろ」

 そういって、カウンターの上にこれまた真っ白な毛皮を取り出した。

「これが、ペガサスの毛皮なんだが、みていろ」

 そういって、カルツがその毛皮に近くにあったオイルを数滴たらした。

 今カルツがかけたオイルは馬車などの機械部品に使う潤滑油で、俺も魔道具つくりなどで使っているものだからわかるが。あれは一度布などにつくと汚れが落ちない。そのため、昔はよくそれで母さんに怒られたのはいい思い出だろう。

 というか、そんなものをかけたら、まっくろになるだろ。

「なっ、うそだろ」

『あら、すごいわね』

 驚いた、真っ黒になると思ったが、オイルが毛皮についた瞬間、一瞬も汚れることなくオイルが消えたのだった。

「どうなっているんだ」

 俺は、思わず食い気味に尋ねた。

「まぁ、初めて見たやつはそう反応するよな。実は、俺もよくはわかっていないんだが、ペガサスってやつらは自分たちが真っ白であることに誇りを持っているらしくてな。汚れが付くことが許さないんだと、それで、えっと、たしか、汚れが付いた瞬間にその汚れを分解して、消滅させている。だったかな」

 すごい話を聞いたものだ。

「すげぇな。それじゃ、たとえ血濡れの剣でも鞘に納めればきれいになるってことか」

「そういうことだ。だがまぁ、ペガサスっていうのは、ほとんど姿を見ない魔物だからな。結構希少なんだぜ」

 だからこそ、ほとんどその効果を知られていないそうだ。

「なるほどな。それで、どうやって使えばいいんだ」

 ここで素材の話は終わり次に使い方を聞いた。

 何せ、普通の剣なら、腰に差して、普通に収めればいいが、レーヴェは俺の身長より少し短い程度の大剣、そんな長い剣を鞘に納めるなんて行為、人間の手の長さじゃ物理的に不可能だ。

 まぁ、頼んでおいて言うのも、おかしな話だけどな。

 ちなみに、普通大剣は鞘に納めず、布などを巻いている場合が多い。

「おう、そのことだが、ちょいと、ここに魔力を通してみろ」

 そういわれて俺は鞘の中腹当たり、ちょうど背負ったら左手が届きそうな位置に魔力を流してみた。

 パカッ

 すると、なんということか、鞘がぱっくりと割れたのだ。

「うぉ、なんだこれ」

「すげぇだろ、こいつは、革と毛皮の間に特殊な魔鋼を仕込んでいてな、魔力を通すと、こうやって開くようにしてある。っで、魔力が尽きると、……こんな感じで自動的に元の状態に戻るってわけだ。それと、内側からも魔力を通せるようにしておいたぜ」

 俺はどういうことかと警戒した。まさか、レーヴェがインテリジェンスソードだってバレたのか。

 そう思ったが杞憂だった。

「その剣、どんな剣か知らないが、異様に魔力伝導率が高い、抜くときは剣を持ってそこから魔力を通せば開くようにしてある。だから、ここに通す時は収めるときだな」

 ということだった。

「なるほど、それなら、突然戦闘になっても、柄さえつかめればすぐに抜けるというわけか」

『便利ね』

 レーヴェもそう思ったようだ。

「まぁ、そういうことだ。まぁ、普通の剣士だったらこんな機能にせずに、ひもで引っ張るとかにするんだけどな、お前さん魔法剣士だろ、なら、魔力操作を持っているってことだからな」

 確かに、魔力を通すには魔力操作スキルが必要になる。そして、それは魔法を使えないと持つことさえできない、そのため通常の剣士はこの魔力操作を持っていない。

「なるほどな。確かに、その通りだな。それじゃ、ありがたく使わせてもらうよ」

「おう、それと、お前さんの防具だが」

 そういって、再びカウンターの下から出すようで手を突っ込んでいる。

「こいつだ」

 出したのは革鎧一式だった。

「注文通りの革鎧だが、これまでのような動物の革ではなく、ブラックベアーの革を使っているからな。防御力はけた違いに変わるぞ」

 そう、これまで俺が身に付けていた鎧は、村の近くでとれたただの動物である熊革を使っていた。これまで戦ってきた、スライムやゴブリンなどの弱い魔物程度ならこれで十分だったが、これから戦うのは、もっと強い魔物などだ。また、俺の場合悪魔族ともまた戦うことにもなるだろう。そうなると、動物の革では弱すぎるというのがあった。

 まぁ、悪魔族と戦うにはこれでも不十分だが、今はこれでいいだろう、大体レーヴェの鞘に金をかけすぎて、自分の防具にはこれぐらいしかかけることができなかった。

 そして、そのブラックベアーだが、見た目は、普通のクマとあまり変わりはない。ただ凶暴性とその力などなどが桁違いに跳ね上がる。攻撃力でいえば、ブラックベアーが人なでしただけで、普通の熊は瞬殺されるだろう。一方で、熊がブラックベアーを全力で攻撃したところで、蚊にでも刺されたかのように何も感じないだろうな。それぐらいの違いがある。

「ああ、これなら、問題ないな」

 俺は満足して金を払い、その場で鎧を身に付けていった。

「問題ないな」

「そうか、それはよかった。まぁ、壊れたりしたらまた、もってこい、直してやる」

「わかった、その時は頼む」

 こうして、俺はカルツの店を後にした。

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