第19話 鍛冶の街カルガン
カルガンの街に入った俺たちは、その活気に圧倒されながら街並みを見つめていた。
『活気があるわねぇ。あら、あれ、何かしら』
レーヴェが何かに気が付いて尋ねてきた。
あれはたぶんこの街の名物、武具市だと思う。
『武具市? つまり武器とか売っているっていうこと』
『そうだな。ほら、あそこなんか、剣が並んでるだろ』
俺もそろそろ念話で会話に切り替えた。ちょっとなれないけど、そうしないと完全に独り言の怪しい奴になってしまうからだ。
『ほんとね。でも、やっぱり、たいしたことはないわね』
『そりゃぁ、神剣であるレーヴェと比べたらそうだろうな』
比べるだけ、かわいそうになる。
『それもそうね。あっ、でもあの子は凄そう』
剣に対してあの子って思うが、レーヴェが剣であることを考えればおかしくないのか?
なんて疑問を持ちながら歩いていると、再びレーヴェがこれはなんだとか、あれはなんだとか聞かれ、かなり大変だったが、何とか、この街の冒険者ギルドにたどり着いた。
「ここか」
『ここで何をするの』
『ギルドの規定で立ち寄った街のギルドには必ず行くようにするっていうものがあるんだ。まぁ、現在の所在地を明確にしておけってことだな』
『なるほどね。結構面倒なのね』
『まぁ、仕方ないさ』
それから、俺は、この街に少しの間いることをギルドに伝えたところ、どうやら俺が悪魔族を討伐したということが伝わっていたようで、いきなりギルドマスターに呼ばれた。
「お前さんが、ノーランかい」
この街のギルドマスターは50代ぐらいの女性だった。
それでも若いころは相当な実力だったんだろう、今でも眼力がすごい。
「なるほどねぇ、それで、この街にはどのくらいいる気だい」
「俺としては早くDランクになっておきたいから、ここで装備を整えたら、グルベイスに向かうつもりだよ」
「グルベイスかい、確かにあそこならEランクでも上位の依頼が多いからね。すぐに上がれるだろうさね」
「そうだといいけど」
こればかりは、実際にグルベイスに向かい、依頼を受けて行くしかないだろう。
「それで、あんた、ここで装備を整えるっていっていたけど、あてはあるのかい」
「いや、ない。どこかあれば教えてほしいぐらいだよ」
「なんだい、だったら、カルツのところに行きな。あそこは兄弟でやっているんだけど、みんないい腕さね。あたしも若いころは、頼んでいたからね」
ギルドマスターはそういうならば確かなんだろう。
そう思いながら俺はギルドマスター室を後にして、さっそくカルツって人がやっている店に向かうことにした。
ギルドを出て、店があるという区画に向かうために中央広場へとやって来た。
ここカルガンはこの中央広場を中心に北に冒険者ギルドなど各種ギルド、役場などがあり、西に商業区画、東に鍛冶などの工房がある職人区画、南側が居住区画となっている。
そして、俺が向かうカルツの店は職人区画にあるために東に向かう必要がある。
というわけで、あたりを見ながら東に進路をとった。
『あら、あれは、何かしら』
するとレーヴェがここ最近よく聞くこのセリフを言った。
俺も慣れたもので、またかと思いつつレーヴェが指示した方を見た。
ちなみになぜ動けないレーヴェがさしている方向が分かるのかというと、念話を応用して、俺に方角のイメージを送ってくるからだ。
だが、ここでいつもと違うことが分かった。いつもなら周囲にある店やその商品などに注目しているレーヴェがこの時は路地裏を指示していたからだ。
てっきりレーヴェが送ってくるイメージが違うのかと思ったが、俺もその先にあったものになんだと思った。
なぜならそこには、真っ黒なフードとローブを身にまとった男。それだけでも怪しいのに何より、その男は目の周囲を赤く化粧していたのだ。
『なんだ、あいつら』
『怪しいわね』
『そうだな。あっ、行っちまった』
俺がなんだと思っていると、その男はそそくさと別の路地に入っていってしまった。
まぁ、怪しい奴だったけど、特段気にする必要もないか、ということでその場はすぐにそこから離れることにした。
そうこうしているうちに目的の店が見えてきた。
「おう、いらっしゃい」
中に入ると体の小さな髭面のおっさん、つまりドワーフ族が立っていた。
ドワーフ族、鍛冶をはじめとした、あまたある職人業において常にトップの実力を誇る種族であり、俺たち人族と違い長命種となる。その特徴は、一言でいえば髭面で子供ぐらい小さいということだろう。
そして、今目の前にいるドワーフもまた例にもれない姿をしている。
「冒険者ギルドのギルドマスターからの紹介なんだけど、カルツっていうのはあんたか?」
「おう、俺がカルツだ。それで、どうした」
どうやら、この目の前のドワーフがカルツだった。
「俺は、ノーランっていう魔法剣士なんだけど、この剣の鞘と俺の防具を買いたい」
「鞘? その剣のか」
「ああ、そうだ」
そういって俺はレーヴェを抜き放ち、両手でもってカウンターに乗せた。
「ほぉ、こいつはすげぇ、見たこともねぇ代物だ。どこでこれを?」
さすがはドワーフ、見ただけでレーヴェがただの剣じゃないことが分かったらしい。
「ミルダンジョンの最奥、そこに眠っていた」
その経緯をカルツに話した。といってもレーヴェが神剣であるとか、インテリジェンスソードであるということは伏せてある。
「なるほどな、悪魔族を討伐できる剣か、そいつはすげぇ、見たところ俺にもその素材が分からねぇっていうのは初めてだぜ。まぁ、いいぜ、こんなすげぇ剣を見せてもらえたからな、ぜひその鞘、俺たちに作らせてくれ」
カルツは俺の依頼を快諾してくれた。
「ありがたい、頼めるか」
「おう、任せな、そんな素晴らしい剣にふさわしい鞘をこしらえさせてもらうぜ。それと、お前さんの防具だったな。そいつも、こっちで作らせてもらうぜ」
「助かる」
それから、値段交渉となったが、俺は思い切って大金を払うことにした。
何せ、悪魔族討伐でかなり潤っているからな。
「それじゃ、頼む」
「おう、任せとけ」
カルツに鞘と防具を、すべて任せ店を後にした。
鞘や防具が出来上がるのは大体1週間ぐらいということだったので、暇つぶしに何か適当に依頼をいくつか受けることにした。
そう思って、ギルドに戻った俺は、さっそく掲示板を眺めることにした。
『どれにするの』
レーヴェも俺の背中から掲示板を眺めている。
『そうだな、なるべく近場の依頼がいいだろうし、せっかくEランクになったからな、採取以外だな』
『だったら、討伐依頼にしたら』
『そうだな』
そう思って、掲示板を眺めその中から適当に近場の依頼を受けることにした。




