第16話 昇格
レーヴェボルグを手に入れたとたん、あっさりと悪魔族を倒してしまった。
これじゃ、さっきまでの苦労は何だったんだよと、文句を言いたいが、それはいったい誰に言えばいいんだろう。
そんな悩みはどうでもいいが、今は仲間たちだ。
グロウは右手を失い、ゴラスは左足を失った。そして、ケイトは壁のあたりで動かない。
まさかと思ったが、レーヴェボルグが鑑定で知らせてくれる。
『大丈夫よ、あの子、重症ではあるけど、まだ生きているわよ』
俺はほっと胸をなでおろしつつ、異空間収納からポーションを取り出して、グロウとゴラスに渡した。
「とりあえずこれを、後で、ヒールをかける」
「ああ、すまん、ケイトを頼む」
「わかってる」
それから、俺はすぐにケイトのもとに向かった。
ちなみに、ナーヤとサイトスは放置だ。その理由は、横目で見たが2人ともハイポーションを使って自身の回復を図り、さらにサイトスがエリアヒールをかけている。あれなら大丈夫だろう。
というわけで、俺はケイトに集中することにした。
「ケイト、大丈夫か、今、ハイヒールをかけるからな」
「う、うん」
ケイトは何とか返事をしたが、それでもかなり弱々しい。
「……ハイヒール」
俺は、とにかくハイヒールをかけ続けた。
俺には魔力炉たる魔道具があるためにいつまでも続けられるが、それでもハイヒールともなれば減る方が少しだけ多い。
しばらくかけ続けていると、ようやくケイトの顔から苦悶の表情が消え始めて行った。
「よし、あともう少しだ」
ここは俺の頑張りどころだ。
そして、俺の魔力が尽きよとしたところでようやくケイトが回復したようだった。
レーヴェボルグに確認をしてもらったが、間違いなくケイトは完全回復した。
「どうだ、ノーラン」
俺が魔法をとくと心配そうにグロウとゴラスが聞いてきた。
「大丈夫だ、回復した。あとは少し寝かしといてやれ、いくら回復しても精神的には回復していないからな」
「ああ、ありがとう、ノーラン」
「いいってことよ、それより、2人も少し休んでからだけど、回復魔法をかけるからな」
「ああ、すまん」
それからしばらくして魔力炉により回復した魔力を使い2人にハイヒールをかけていった。
そのおかげか、3人は動けるようになっていた。といっても、俺のハイヒールでは部位欠損までは治らない。
つまり、グロウは右手を、ゴラスは左足を失ったというわけだ。
「これだけで済んで、御の字と思うさ」
「そうだね。これで済んでよかったよ」
「兄さん、ゴラス」
目を覚ましたケイトも2人を心配そうに見ていた。
「ケイトは、大丈夫か」
グロウがケイトに安否を確認した。
「ええ、ノーランに治療してもらったから大丈夫よ。それより、兄さんとゴラスが」
「俺たちも大丈夫だ。心配するな」
そういってグロウはケイトの頭を残った左手で、なでながら笑っている。
それから少しして俺たちは、地上に戻ることにした。
いつまでもここにいてもしょうがないしな。
というわけで3日後俺たちはついに地上に戻ってきていた。
帰りの道中は、戦えなくなったグロウとゴラスの代わりにナーヤとサイトスが奮闘してくれた。
それいいのかと思ったが、本来であれば帰りも俺たちがやらなければいけないが、今回は悪魔族との戦闘というありえないことがあったということで、いいらしい。
そんなわけで、早々に帰ってきたわけだが、これからギルドに報告をしなければならない。
「報告は全員でやらなけらばならないだろうが、グロウとゴラスは大丈夫か」
サイトスが2人を心配してくれているようだった。
「大丈夫だ。ノーランのおかげで痛みはないからな。あるのはせいぜい、違和感ぐらいだ」
「うん、片足ないのって歩きずらいからね」
その感覚は是非に知りたくないものだ。
そんな風に街に戻ってきたわけだが、みんなやはりグロウとゴラスを見てぎょっとしている。
そして、ギルドの入るとその顔の割合は一層増えた。
何せ、ギルド内だと知り合いが多いからな。
「ぐ、グロウさん、ゴラスさん、どうしたんですか?」
中でもヒナリが一番驚いているようだ。
「そうですよー、どうしたんですー?」
ターナもいつも通り間延びした言葉であったがその言葉には驚愕があった。
「ちょっとな、ギルマスに報告がある」
「あっ、はい、お待ちください」
グロウがはぐらかすようにそういうと、ヒナリはすぐにギルドマスターに確認に行った。
それから少しして、ヒナリが帰ってきた。
「どうぞ、会うそうです」
「ああ」
それから俺たちはヒナリの案内でギルドマスターの部屋に向かった。
「おう、どうした。って、何があった」
ギルドマスターはグロウとゴラスを見るなり顔を険しくして尋ねてきた。
それはそうだろう、ミルダンジョンはFランクからEランクへの昇級試験にされるようなダンジョン。そこに送り込むのは入っても問題ない冒険者たちであり、何よりあのダンジョンに生息する魔物の種類からもグロウたちのような部位欠損になることはないからだ。
「悪魔族だ」
そこでサイトスが簡潔に答えた。
「!! なっ! なに!」
ギルドマスターは驚愕し、ヒナリは絶句した。
「おいおいおいおい、サイトス、冗談じゃないだろうな」
さすがにギルドマスターも信じられないようだ。
「冗談なわけないじゃない。こっちもまさか、あんなところにいるなんて思わなかったよ」
ナーヤも憤慨している。
「……よく、無事だったな」
それがギルドマスターが絞り出した言葉だった。
「まぁな、ノーランのおかげだ」
ここでグロウが俺の名を出した。
「どういうことだ」
そこで俺たちは悪魔族との対面から討伐のところまで話した。
「……なるほどな。そんなところに剣が、それに、まさか、ノーランがそんな剣士だったとはな」
「俺も、知らなかったよ」
実は、レーヴェボルグのことは話していない、そこで、俺が剣術スキルを持っていたけど今まで知らなかったことにした。まぁ、実際、カルム村で育ち、Fランク冒険者でしかなかった俺では、不思議なことではなかった。
「そういえば、お前あのカルム村の出身だったな」
「そういうことだよ」
「わかった、まぁ、今回はトラブルもあったようだが、お前らはEランクに昇格だ。ま、悪魔族を討伐したやつにやるランクでもないけどな」
こうして、俺たちはEランクに昇格したのだった。




