第15話 400年の目覚め
夢を見ていた。
何もない真っ白な空間。
そこには、誰かを待ちわびている1人の赤いドレスを身に付けた少女が立っていた。
少女の表情はどこか悲しげだった。
そんな少女が、こっちに気が付いた。その瞬間少女の表情は明るく笑った。
そこで目が覚めた。
「くっ、くそっ、痛ぇ」
起き抜けに体中がきしむように痛い。
それでも、グロウたちが戦っているのに俺がこんなところで休んでいるわけにはいかないと、すぐに立ち上がろうと寄りかかっていた何かに手をかけた。
『ようやく、来たかと思ったけど、ずいぶんと派手な登場だったわね』
突然俺の頭に誰かの声がした。その声の質からしてたぶん女、というか少女のように感じた。
「えっ??」
俺はあたりを見渡した。しかし、ここには誰もいない。どういうことだ、気のせいか?
『気のせいではないわよ。私はレーヴェボルグ、あなたが今握っている剣よ』
声がそういったので、俺は自身が握っていたものを見た。すると確かにそこには、全体的に銀色だが中央に赤いラインがあしらわれた刀身を持つ剣が台座に刺さっていた。
どうやら、吹き飛ばされたときに、この台座に当たったようだ。しかし、ここで新たな問題が起きた。
「えっ、剣、いやいや、なんで、剣が。それに、なんで?」
俺としては悪魔族が現れた以上にパニックだ。剣がしゃべるって、どういうことだよ。
『それは、私がインテリジェンスソードだからよ。まったく、ほんとにずいぶんと長く待たせてくれちゃって……』
なんだか、よくわからないが怒られた。誰かと勘違いしているんじゃないか。
『勘違いじゃないわよ。あなたが、私の正式な所有者なんだから、そうじゃなかったら、こうして私も目覚めなかったし』
ちょっと意味が分からない。
『まぁ、今は、どうやらそれどころじゃないみたいだし、後でいいわ。それより早く私を抜きなさい』
そうだった、言われてみて気が付いた、今は隣の部屋で悪魔族がいて、みんな戦っている。俺も早くいかなきゃ。
そう思って、俺は立ち上がろうとした。
しかし、体中が傷み思うように動かない。
それでも、俺は体に鞭打つように何とかレーヴェボルグを支えにして立ち上がり、その勢いのまま、一気に引き抜いた。
『いいわ。今度は私を装備してみなさい』
俺は言われるままにレーヴェボルグを装備した。
すると、レーヴェボルグが光り輝き俺を包み込んだ。
そして、その瞬間、レーヴェボルグが突如変化したのだ。
銀色の刀身に赤いラインは変わらないが、片手剣だったそれは、いつしか俺の身長ぐらいの大剣となったのだ。そして、何やら、神聖というか、なんというかわからないが、とんでもない力を感じる。
『これで、戦えるでしょう』
「えっ、いやいや、なんだ、今のは、なんで、大剣に……」
『一々、うるさいわね。今はそんなことを気にしている場合じゃないでしょうって、あれ、ノーランあなた、剣術スキルが封印されてるじゃない、なんで?』
封印、何を言っているんだ。んっ、ちょっと待て、俺は確か名を名乗っていない、なのになんで今俺の名前を。
『鑑定よ。私は鑑定スキルを持っているからね。それで、わかるのよ。それより、ちょっと待ってよ。えっと……』
鑑定スキル、それは、読んで字のごとくで対象のスキルをはじめその他もろもろの情報を読み解くスキルだ。しかし、このスキルを持つものは歴史を紐解いても確認されておらず、その存在そのものが疑われている伝説級のスキルだ。そんなスキルを、なんで剣が持っているんだ。
「えっ、か、鑑定だって、そんな……」
俺がそこまで言ったところで、どうやらレーヴェボルグが何をし始めた。そして、その瞬間、俺の体が光り輝いて、何か体の奥が熱くなるのを感じた。
『うん、これで大丈夫ね。ほら、さっさと、隣にいる悪魔を倒しに行くわよ』
戸惑う俺をよそにレーヴェボルグがそんなことを言ってきた。
確かに、今はそんなことを気にしている場合じゃない。早くみんなを助けないと。
そう思った瞬間俺は、その部屋から飛びだしていた。
なんだ、体が軽い。
「おや、まさか、まだ動けるとは、これは驚きましたね」
俺が飛び出すと、悪魔族がそんなことを言ってきた。
「そう簡単にくたばるか。今度は俺が相手だ」
悪魔族と対峙しているのに先ほどのような絶望もない。ただ、何となくだが、勝てると思っている自分がいる。
「隣で何があったのかは知りませんが、そのような大剣を手に入れただけでは私にはかないませんよ。しかし、何やら、不愉快な気配ですね」
悪魔族はまだ俺をなめている。まぁ、さっきまでのことを考えればそれも当然だろう。
「果たして、どうかな」
そういうと俺は、一気に悪魔族と距離を縮めた。
すげぇ、俺はこれまで剣は持ったことはない、何せ村にはなかったからな。それでも、まるで、これまでずっと振り続けていたかのように、自分の手に馴染む、息をするように次々に剣の技が飛び出していく。
「くっ、なんだ」
ここで初めて悪魔族が驚愕している。
「どうした。さっきまでの勢いがないぞ」
俺は挑発までする余裕が出始めていた。
「調子に乗るな、人間が!」
突如、これまでと口調を変えてきた。どうやら本気で怒っているようだ。
だが、今の俺には何の脅威も感じない。
それどころか、まるで、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
『ここよ、やりなさい』
「これで、どうだぁ」
そういって、俺はレーヴェボルグを振りかぶり、一閃。
「ぐわぁぁぁ」
ついに悪魔族を切り伏せた。
「やったのか」
『ええ、そうよ。ノーラン、あなたの勝利よ』
レーヴェボルグが言ったように俺が切り伏せた悪魔族は縦に両断されて、そのまま白い灰になりあたりに散っていった。
「ふぅ、そうだ、みんなは?」
俺は1つ息をつくと、グロウたちがどうなったかが気になりあたりを見渡した。
すると、そこにはまさに凄惨な光景が広がっていたのだった。
グロウは生きているようだが、右手を失っている。ゴラスも同様に生きているが左足を失っているようだった。そして、その先に目を向けると、ケイトが、倒れこんでいる。
「グロウ、ゴラス、ケイト、無事か」
「お、おう」
「な、何とか」
2人からは返事があった。しかし、ケイトからはない。




