第13話 攻略開始
ミルダルタを出発して、数分俺たちはついにミルダンジョンの前までやってきた。
「さてと、ここが、ミルダンジョンだよ。みんな準備はいい」
「ああ」
「いつでも」
「ちょっと緊張してきたかも」
「何言っているの、これを攻略すれば、晴れてEランクなのよ」
ナーヤが声をかけ、グロウと俺が気合十分で言うと、ゴラスが情けないことを言い、ケイトがそれをたしなめた。まぁ、いつもの光景だ。
そして、ついに俺たちはミルダンジョンに入ることになった。
「じゃ、入るよ」
ナーヤがそういってから盗賊職であるケイトを先頭に俺たちは中に入った。
ダンジョンの中は、石壁でできており地面もまた石畳が敷かれていた。
「へぇ、結構きれいなんだな」
ずいぶん年月が経っているにもかかわらずごみ1つないきれいなものだ。
「一応、ギルドの規定でダンジョン内にごみは持ち帰るようにってなっているからね。ほら、さっさと行くよ。それと、わかっているとは思うけど、一応言っておくよ。あたしたちは試験官だからね、基本見ているだけ、手も口も出さないから好きなように攻略して頂戴、ああっ、でも、ほんとに危ないときは一応助けてあげるから安心してね」
「このダンジョンじゃ、めったにないだろうがな」
ナーヤが試験の説明をし、それに茶々を入れたのはサイトスだった。
「万が一ってことがあるでしょ、まぁ、そういうことだから、さぁ、進もう進もう」
こうして、俺たちはついにミルダンジョンで足を踏み出した。
1階層攻略、1階層は、特に何事もなかった。あったのはせいぜいバット系の魔物だけだった。
「まぁ、1階層だしな。本格的になるのは、2階層からだそうだ、気を引き締めていくぞ」
事前にここについて調べていたグロウがそんな情報を俺たちに開示した。
「ということは、トラップとかもあるってわけだよね」
ケイトが自分の盗賊職を生かせる場だと張り切っている。
「ああ、頼りにしているぞケイト」
「まっかせて」
そんなやり取りから少しして、さっそくケイトの出番がやってきたわけだが、そのついでといわんばかりにスライムが数匹突如現れたのだった。
「うぉ、あぶねぇ、ケイト、まだか」
俺は天井から降ってくるスライムをよけながらケイトをせかした。
「もうちょっと、えっと、こうだからえっと、よし、できた」
ケイトがそういった瞬間俺たちは、その場からすぐさま離れた。しかし、それでもスライムが向かってきている。
「くそっ、面倒な。……アイスランス」
俺は振り向きざまに氷系魔法アイスランスを放った。
その瞬間複数の氷の矢が一斉にスライムめがけて飛んでいき氷漬けにした。
「ふぅ、アブな、スライムは閉鎖された空間では脅威度が増すっていうけど、予想以上だな」
「ほんとにな、もう降ってこないよな」
「あれはちょっと、怖いよね」
俺たちは、スライムに恐怖していた。
「あははっ、これで君たちもスライム恐怖症になったかなぁ。懐かしいよね、あたしも最初にダンジョンに入った時にその洗礼を受けたんだよねぇ」
「確かに、あれは災難だったな。まさか、用を……」
「ああああああ」
サイトスが珍しく何かをしゃべろうとしたところをナーヤが慌ててサイトスの口をふさぎながら叫んでいる。
しかし、それは少し遅かった。俺たちにはすぐにわかったことだった。
どうやらナーヤがスライムに襲われたのは用を足している時だったようだ。確かにあんな無防備な状態で襲われれば、それは災難だろう。
そう察した俺たちは、聞かなかったことにしつつ、生暖かい目でナーヤを見つめてしまっていた。
「なに、その顔?」
ナーヤがジト目で見てきたので俺たちはそっぽを向いてごまかしておいた。
それから、さらに進み、3階層途中で部屋のようになっているいい感じの広場を見つけたので今日はここで野営を張ることにした。
「ここらなら魔物が来てもあそこの入り口からしか来ないからいいだろう」
というグロウの判断に俺たち全員が同意したわけだ。
「それじゃ、さっそくやるか」
そういって、俺はその出入り口付近に立ち呪文を唱えた。
「へぇ、結界魔法か、ずいぶん珍しい魔法が使えるんだね」
「ああ、あまりいないからな」
「ノーラン君って意外と便利だよね。異空間収納は持っているし結界魔法。それに全属性だっけ、そうそう後は回復も使えるんだよね」
「魔族でもそこまで扱える者は少ないだろう。といっても、まだまだレベルは低いようだが」
ナーヤとサイトスが俺の結界魔法を見て称賛してくれた。
「しかし、1つアドバイスをしておこう、このダンジョンではそれでいいかもしれないが、ダンジョンによってはレイスなどの壁を透過してくる魔物もいる。よって、その方法では意味がない」
それを聞いて俺ははっとなった。確かにレイスとなれば結界魔法は通れなくても壁は通れる。言われてみればその通りだった。
「確かに、そうだな、気を付けるよ」
「うむ、それがいいだろう」
その後、簡易的な寝床を用意してから、俺が異空間収納から取り出した夕食を交代で食べてから、順に見張りをすることにした。
ちなみに俺が異空間収納から出来立ての料理を取り出すと、ナーヤがうらやましそうに見てきたので、少しだけ分けてあげた。
そして、サイトスに怒られていたようだ。確かに、試験官が受験者から食事を分けられるのは褒められたことではないだろう。
また、俺たちは1晩交代で見張りをしていたが、ナーヤとサイトスはそんなことをしていない。しかし、よく見てみると、2人の周囲には濃密な結界が張られているのを俺は見た。それを見た瞬間、さすがは魔族と称賛とともに俺もいつかあれぐらい濃密な結界を張れるようにと、思ったものだ。
そんな感じに攻略を進めていき、何とか予定通りの3日後、ついに最下層最奥の部屋の前までやってきた。
「ここまで、長かったな」
「ああ、でも、俺たち、何とかやったな」
「うん、一時はどうなるかと思ったけどね」
「確かに」
俺たちは感慨にふけっていた。
そして、少し休憩したのち俺たちはついに最後の扉をあけ放った。
「おや、どうやら、お客さんのようですね」
俺たちが入ると、そこにはありえない光景が広がっていた。
なんと、1人の紳士風の男が、両手を広げながらまるで歓迎するように迎え入れたからであった。




