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剣と少年  作者: 敦
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第12話 ミルダンジョン

 急遽昇級試験の実施を告げられた俺たちは、準備期間である2日を有効に使おうと、その場ですぐに役目を分担することにした。

「ケイトとノーランは、食料などの確保を、俺とゴラスは、資料室でミルダンジョンについて調べるぞ」

「おう、任せろ」

「任せて」

「うん、わかった」

 グロウの指示に従って俺たちは一斉に動き出した。

 その時ふとヒナリを見たが、なんだか軽く微笑んでいるように見えたのは気のせいだろうか。

 そう思ったが、これは後で聞いたことだけど、どうやらそれは気のせいではなかったようだ。実は昇級試験はこの時すでに始まっていたそうで、昇級試験の話とその内容を聞いてすぐに準備行動に出られるか、また、その準備のために冷静に動けるかということが焦点となっている。つまり、話を聞いてすぐに食料などの確保と情報収集を指示し、それに疑問を持たずに実行している俺たちは高評価だったということらしい。

 とまぁ、そんなこととは知らなかった俺たちは、それぞれ動き出した。

 

 そんなわけで俺はケイトと2人で街に繰り出し買い出しに走っていた。

「まずは、食料よね。何日分必要かしら」

「そうだな、ヒナリはのべ6日っていってたけど、ダンジョンだし、何があるかわからないからな、多めに用意した方がいいだろう。それに俺には異空間収納があるから荷物にもならないしな」

「それもそうね。だったら、最低でも10日分、後はお金が残ったらそれ以上ってことでいいわね」

「だな、それだけあれば十分だろ」

 というわけで、俺たちはとりあえず10日分の食料を買い異空間収納に収めた。

 こういう時ほんとに異空間収納は便利だ。何せ、この中は時間が動かない、つまり腐らないからだ。そして、例えば湯気が立ち込めているような出来立てを入れておけば、一年後、忘れたころに取り出してもまるで今さっき料理したばかりのように湯気が立ち込めているというわけだ。

 これは、異空間収納を持っていない者たちにとっては卑怯だとののしられても何も言い返せない。まぁ、持っているものは仕方ないということだろう。

 と別のことを考えているうちにケイトが食料を買い込んでいた。

「それじゃ、ノーランよろしく」

「ああ」

 俺はケイトから受け取った食料を異空間収納に収めた。

 それから、武器屋や防具屋、雑貨屋、薬屋などをめぐり、財布と相談しながら、再び食材屋に向かいさらに数日分買い込んだ。


 買い物から帰った俺とケイトは銀狼亭の厨房を借りて料理開始。

 そう、俺たちは俺の異空間収納を最大限利用するためにあらかじめ料理を作っておくことにしたのだ。

 何せ、ダンジョンというものは、別に休憩所みたいな場所があるわけでもないし、敵がいない部屋があるわけでもない。ノンビリ飯を食っている最中でも当然魔物は襲ってくる。

 だから、食事は基本見張りをしながら交代で取るというのがセオリーとなる。

 もちろん俺たちもそれに従うつもりだが、あらかじめ用意しておけば一々ダンジョン内で調理する必要もないし、まずい保存食を食う必要もなくなるというわけだ。

 てなわけで、ケイトが次々に旨そうでありながら簡単に食えそうなものを作っていく、俺はそのサポート、ケイトの指示に従い動いているというわけだ。



 一方、ノーランがケイトとともに買い出しをしている時、資料室に向かったグロウとゴラスはというと、ミルダンジョンについて調べていた。

「ゴラスは、ミルダンジョンに出る魔物の種類を調べてくれ」

「わかった、兄ちゃんは?」

「俺は、ミルダンジョン事態を調べる」

 こうして、兄弟手分けをして調べを始めた。

 そんな2人が苦労して調べて結果。


 ミルダンジョンというのは、今から数百年前に突如できたダンジョンで、最初期はとてつもなく強力な魔物ばかりが出る場所だった。そのため、ここに入れた冒険者もA以上ランクだけだった。しかし、時が進み多くの冒険者がこぞって攻略していった結果。ミルダンジョンも徐々にその力を失い、今ではEランクはもちろん、ノーランたちのようなFランクからEランクに昇級試験を受けられるほどの冒険者なら問題なく攻略できるというダンジョンに成り下がっていた。

 もちろん、ここまでは、ノーランたちミルダルタ周辺で冒険者を目指している者たちにとっては常識的に知られていることだ。なら、グロウとゴラスが何を調べているかというと、それは、まず出現する魔物の種類、ダンジョン内の道順、トラップなどの情報だった。

 そして、冒険者ギルドの資料室には報告書という形でそういった情報は複数ある。それらを精査しているのだった。


 こうして、4人は順調にミルダンジョン攻略についての準備を整え、いよいよ、その日がやってきた。

「おっ、来たね」

 俺たちが意気揚々と、または緊張しながらギルドに行くとそこには明らかにこれまで見てきた冒険者たちとは空気が違う2人組が立っていた。

 1人は、獣人族の女性で、種族はたぶん狐人族だろう三角形の耳とふさふさの尻尾をしていて、小柄だが活発そうな人だ。そして、その隣にいるのは身長の高い男なんだが、その種族がまた珍しい、魔族だった。

「魔族?」

「珍しいな」

「うん、それに、女性の方も獣人族って珍しいよね」

 そう、実はこの2人の種族、獣人族と魔族はかなり珍しい。

 少なくともこの辺りの村々にはいないし、ミルダルタでも見たことがない。

「そうだねぇ、確かに、あたしたちは珍しいかもね」

「そうだな」

 獣人の女性は、笑いながらいい、魔族の男はなんとも不愛想なイメージがする。

 獣人が珍しいのは簡単で獣人族はそれでなくとも数が少ない、その上、過去の出来事から隠れ住んでいる人たちが多いからだ。そして、魔族はというと、もっと少ない。しかも魔族は、無知なものたちから悪魔族の仲間とされて、いわれのない恨みを受けたり、恐怖されたりするために、彼らが進んで距離を置いたとされている種族だ。

 ちなみに、悪魔族と魔族は全く関係がない、悪魔族は邪神に作られた神々に敵対する存在だが、魔族はれっきとした善神である魔道神に作られた俺たちと同じく人間だ。

「へぇ、君たちは、ちゃんと知っているんだね。関心関心」

 獣人の女性が俺たちの反応を見て喜んでいる。

「まぁ、それぐらいは、それで、えっと」

 グロウがリーダーとしてあいさつをしようとしたが、まだ名を名乗られていなかった。

「えっと、あたしが、狐人族のナーヤ、それで、こっちの無愛想ででかいのが……」

「魔族のサイトスだ」

「あたしたちは、一応Dランクでパーティーを組んでいるんだけどね。それと、サイトスは無愛想だけど、いい奴だから安心してね」

 そういってウィンクをしてきた。

 というか、サイトスはまだほとんどしゃべってない気がする。

 まぁ、それはいいとして、そのあと俺たちが自己紹介をして、それからダンジョンに向かうことにした。

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