第11話 昇級の誘い
ノーランたちが、サエス村の宴会で盛り上がっているころ。
ミルダルタ近郊に位置するダンジョンの前に、1人の紳士風の男が文字通り降り立った。
「ふむふむ、これはこれは、なかなか良いダンジョンです。私が居住するにふさわしいですね」
そういって、その男はまるで我が家に帰るような気やすさでダンジョンの奥地へと足を運んでいった。
一方、そのころ、そのダンジョンの最奥部屋からさらに奥にある隠された部屋で、1振の美しい装飾が施され中心に赤い線の入った剣が台座に収まりつつ静かにたたずんでいる。
そう、まるで、誰かを待っているかのように……。
オーク討伐から2週間がたった。
サエス村から帰った俺たち(ちなみに帰りは村長の計らいで馬車で帰ったので、延べ3日で帰れた)は、さっそくギルドに報告をした。それにより、今度はミルダルタの騎士団から数名、サエス村に駐在することになった。そのメンバーをの内訳を尋ねたところ、ケイトの予想通り、サエス村に出身者が2名混じっていてほかの人たちもやる気に満ちてサエス村に旅立っていったそうだ。それを聞いて一安心といったところだ。
そして、俺たちはというと、正式にカプレス兄妹とパーティーを組むことになり、パーティー名を新たにカプレス・カルムとした。
名前の由来は、それぞれの出身の村の名前という単純なものだが、結構気に入っている。
また、帰りの道中会話の中で俺がどこの宿に泊まっているかという話になり、俺は迷わず銀狼亭のことを話した。
すると、その宿代の安さなどを聞いたグロウたちはミルダルタにつくなりこぞって、銀狼亭に宿を移した。
それから、今日まで俺たちはパーティーでいくつかの依頼を受けた。その内容は、これまでと変わらないような薬草採取や討伐、また、商人の護衛などだった。でも、どの依頼もこれまでと違い4人での仕事、話をしながらや連携しながら、交代での見張り等々、結構楽しくなっていた。
しかも、4人であるためか、採れる数も多く俺の異空間収納にいくらでも素材などを収めることができるために資金もまたたまっている。
そして今日、俺たちはいつものように朝からギルドに足を運んで依頼を探すことにする。
「今日は、どんな、依頼にする」
「そうだな、昨日は、採取だったし……」
「今度は、討伐がいいんじゃないか」
「討伐かー、できればもう少し強い魔物がいいなぁ」
ケイトが尋ねると、俺が答え、グロウが手暗視、ゴラスが愚痴をこぼした。
俺たちはいつもこんな感じだ。
そうして、ギルドにいつも通り入ると、ここでいつもとは違うことが起きた。
「あっ、グロウさん、皆さん、こちらへお願いします」
冒険者受付嬢であるヒナリが声をかけてきたのだ。
ヒナリが、グロウをまず呼んだのは単純にグロウが俺たちのリーダーだからだ。
「どうしたんだ」
「何か用ですか」
「はい、実は、皆さんのこれまでの功績に対して評価され、昇級試験を受けていただくことになりました」
昇級試験、それは、どのランクの冒険者でも待ち望んでいることだ。しかし、実はこの昇級試験、今日みたいに突然本人に告げられる。どういうことかというと、どんな依頼をどのくらい受けるとか、どのくらいの数の依頼を受けるのかということは俺たち冒険者には一切明かされていないし、何より、ほかの人に話を聞いても人によって全く違うらしい。そのため、多くの冒険者がギルドから昇級試験の話をいつ聞けるかと待ち望んでいるというわけだ。特に俺たちのようなFランクだと、ひとしおで、何せ、Fランクも冒険者といえば冒険者だが、正確には見習いみたいなものだからだ。そのため、登録したギルドから離れることができない。しかし、Eランクとなれば立派な冒険者として見られて、別の街へ移動することが認められる。
つまり、これで合格できればようやくここミルダルタを離れ、別の街で、別の依頼を受けることも可能だということだった。
「それ、ほんとですか」
「いよっしゃぁ」
「やったね」
「まじかよ、おい」
ケイト、グロウ、ゴラスに続いて俺は大いに喜んで叫んだ。
おかげで周りから何事かとみられたが、今は気にしている場合じゃない。
「もちろん、受けるよ、それで、詳しく聞かせてくれ」
興奮冷めやらぬグロウが食い気味にヒナリに尋ねた。
「そうですか。では、説明をいたしますので、こちらへお願いします」
どうやら、説明は別室になるようだ。それはそうだろう試験内容が聞けると周囲にいるFランク冒険者が聞き耳を立てているからだ。
「わかった」
そう返事をして俺たちはヒナリについて奥にある会議室に向かった。
この会議室は主に、こういった冒険者に個別に依頼をする場合などに使われるほか、ギルド職員が何かあった時に使っているようだ。
「お好きな場所におかけください」
「はい」
俺たちは言われるままに適当に座った。
「では、説明します。今回の昇級試験はミルダンジョンの攻略です」
ミルダンジョン、そこは、ここミルダルタの起源となったダンジョンである。
ミルダルタの街というのは、ここの初代領主が街として発展させたが、それ以前から小さな村として存在していた。その起源は、ミルダンジョンというダンジョンができたことに由来し、ミルダルタという名前もミル《ミル》ダンジョンの近く《ダルタ》という意味だ。これは、ミルダルタ近郊である村々ならだれでも知っていることだった。
「ミルダンジョンか、いつかは攻略したいと思っていたからな」
「ああ、早く行きたいよな」
俺たちも当然知っている。
「そこを攻略って、俺たちは入れるのか」
ダンジョンにFランクが入れるのかという問題だ。
「はい、大丈夫ですよ、昔は、それなりに強力な魔物がうごめいていたそうですけど、今は、Eランク相当な方なら問題なく攻略できますから」
ヒナリはそういったが、俺たちFランクなんだけど……。
「えっと……」
「皆さんの実力はすでにEランク相当であると判断されています」
どうやらそういうことらしい。
「なるほど、わかった。それで、いつ行けばいいんだ」
「2日後です、ミルダンジョンの階層は10階層となります。攻略予想日数は大体3日と考えてください」
「ということは、往復で6日ということですね」
「そうです。その準備をしてください。といっても、異空間収納があるノーランさんがいれば問題ないことかもしれませんが、それと、試験官として、Dランク冒険者が2名尽きます。ですが、彼らはあくまで試験管であり、いざという時のサポートはしますが、手助けは一切しませんからご注意ください」
「了解しました」
グロウが代表してそう答えて、その場は解散となった。
ダンジョン攻略、昇級試験、両方楽しみだ。




