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【書籍発売中!】ライブラリアン〜本が読めるだけのスキルは無能ですか!?  作者: 南の月
第二章 逃げる冒険者

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魔法薬学

本を読み、体調を観察して、薬をつくる。

そんな日を続けて2日。

アイリーンが目を覚ました。


アイリーンが目を覚ますと村中がお祭り騒ぎになった。

ただでさえ、通常より3倍以上のウォービーズが出現したのに退治することができて村は喜びに溢れていた。

ただその恩人である私たちの仲間が死にそうなので自重していただけだ。


聞くと普段の20〜30匹の時でも死者が出る年があるし、死者は出なくとも負傷者多数なのだそうだ。

それだから今回100匹近い数だったと知ると、私たちがいなければ今頃村人1人残っていなかったかもしれない…なんて奇跡だ!!!と。

その上、刺されたら5〜10分で死に至るこの時期のウォービーズの毒を受けてもアイリーンが回復したので、さらに輪をかけてめでたい雰囲気になっている。

奇跡だ!神の使いだ!女神様たちだ!などと村の人は盛り上がり、アイリーンが目覚めた翌日から3夜にわたり宴が開かれた。


もう直ぐ春とは言え、山中のこの村付近はまだまだ冬の景色だというのに、たくさんの食べ物を用意してくれて、笛を吹き、歌を歌い、皆で手を繋いで踊った。

まだ完全に回復していないアイリーンも、もちろんイヴも私も大いに笑って楽しんだ。


結局、アイリーンが目を覚ましてからも大事をとって1週間滞在させてもらうことになった。

村の人には食事の用意だとか、アイリーンの薬となる薬草の採集だとか本当によくしてもらっている。


だからというわけではないけれど、私たちも私たちなりに恩を返していた。

アイリーンは体調回復が第一だから動けないが、村の子供達に読み書きを教えているようだった。

イヴもたくさん食料を使ってしまってはこの後が大変だろうと狩りをしては肉を村に配っていた。

私はというと…アイリーンの体調を観察する傍ら魔法薬学を勉強し、結果アイリーンが回復しているのをみて村長から薬を作って欲しいと頼まれた。

もちろんお金は払うと言われたのだけど、今回のお礼も兼ねてお金は遠慮した。

お礼だけでなく、そもそもまだ見よう見まねで作ったもので、効果があるか確証がないのだからお金は受け取らないのが筋だしね。


残りの滞在時間も後わずか。

何かできることがないかと考えていた時に思いついた。

魔法を教えるのはどうだろう?


彼らは一切魔法が使えない…と思う。

普通、掃除はメリンダのように風魔法使いが魔法を使ってあっという間に終わらせ、料理もラッシュやサリーのように火魔法使いがするか魔導コンロを使う。

それなのに村の人は箒やはたきで掃除をし、薪をくべて火を起こして料理をする。

洗濯だって水魔法使いが水を出すのではなく、近くの小川から水を汲み、手洗いしているのだ。

そういえば、ウォービーズとも魔法無しで戦っていたことを思い出す。


小さい村とは言え、1人も風魔法使いも、火魔法使いも、水魔法使いもいないのだろうか?

こんなに良くしてくれる村の人が、アイリーンに回復をかけなかったのは、多分聖魔法使いもいないからだ。

なんで?とは思ったものの、その訳を聞くことはできなかった。

だって…これほど四大魔法の使い手がいないなんてあり得なくて、あり得ないことがあり得ているのだから何か訳があるのは明らかで、そしてそれを彼らから話してくれていないということは多分触れられたくないことなのだと思ったのだ。


前世を知っている私は、魔法がなくても豊かな生活ができることを知っている。

だけど…それはみんなが魔法を使えない前提だ。

前世は皆魔法が使えないから、たくさんの人の努力を経て、医学が発達し、科学が発達し…あれやこれやあらゆる分野が研究され、発展し、それが暮らしに反映されてた。

だから火魔法なんて使えなくても、スイッチ一つでコンロから火はついたし、スイッチひとつで洗濯だってできたのだ。

皆が魔法を使えるこの世界で魔法が使えないというのは…どれほど生きにくいのだろう。


なぜ魔法が使えないかはわからないけれど。

魔法陣ならできるのではないだろうか?

私なら…私なら魔法陣を使う魔法を教えられる…


「テルー。今何考えてる?」


「え?」


「もしテルーが魔法を教えようと思っていたとしたら、やめたほうがいいと思う。」


「な…なんで?

魔法使えないと不便かな?と思ったんだけど…」


「テルーは魔法誰かに教えてもらった訳ではないんだって?

それじゃこれだけは覚えておいて。

魔法は便利…でも人を殺す力もあるの。

私たちはここにあと何日滞在する?

たった数日でどこまで教えられるかしら?

中途半端に教えることは、誰のためにもならないわ。

それに…彼らは魔法使いたかったらスキル鑑定を受ければいい話よ。

なのに受けてない…ということは、使う意思もないのではないかしら?」


あ…

アイリーンの言う通りだ。

魔法は便利。

私自身本を読む以外の魔法が使えなかったから、努力した。

だから魔法は身につけたほうがいい。

みんな身につけたいはずだと安易に考えてた。

人を殺す…力…。

考えてなかった。


「アイリーン…ありがとう。」


「どういたしまして。

でも私、テルーの魔法は好きよ。

貴方の魔法はみんなを喜ばせる。

平和な時こそ生きる魔法だと思うわ。」


結局魔法を教えるのはやめにして、私は魔物の多いこの山の中で暮らす彼らのために村の守りを強化した。

初めて使う魔法だから上手くいくかわからない…

ただの自己満だ。

1回だけしか使えないけれど…どうかこの村を守ってくれますように。


そうこうしているうちに、出発の時になった。

村人総出で見送ってくれた。

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