パティシエの誕生 後編
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サリー様は多分15歳以上よね。
結婚しててもいいくらいの歳だし、こんなに熱意があって、新しい調理法で料理できるくらいだから料理人としても秀でているのでは?
皿洗いと野菜の皮むきレベルじゃないと思うんだけど…
何より領主邸で料理人をするラッシュが頼るくらいなのだ。
絶対野菜の皮剥きレベルじゃない!
「あの…私は料理の上手下手はあまりわからないのですが、ラッシュが頼るくらいですし、サリー様はとても優秀な料理人なのではありませんか?」
「いえ!あの…すみません。
料理は好きなのですが、料理人では…ありません。」
「妹の腕は確かですよ。
熱意もある。
だけど…無理なのです。
料理人は、店で雇われながらその店で技術を高めます。
雑用仕事しながら、先輩料理人の手つきを見、真似し、指導してもらうのです。
最初は賄い飯しか作れません。
しかしそれに合格すれば、小鉢、次はスープ
…と言ったように徐々に任せてもらえるようになるのです。
仕事場が修行場であり、そこで認められて初めてその店の料理人となったり、新たに店を出したりすることができるのです。
しかし女性は、そもそもこの料理人候補になれません。
料理人候補がいない店の雑用係としか採用されないのです」
「そんな!では才能があっても女性というだけで料理人にはなれないのですか!?」
「そうですね。なので普通は料理人は諦めて、料理上手な女性として嫁いでいくのですが…妹は料理人の夢を捨てきれず、料理人になるまで結婚しないと言い張っておりますので…未だ独身です。」
「その理由は…諦めきれませんね。
ん?しかしさっきの話では仕事が修行と…。
雇ってもらえないならば、サリー様は独学でここまで極められたのですか!」
「最初の基礎は俺が教えたんです。
その先は自助努力ですね。
まさかこの歳まで夢を諦めないとは思いませんでしたが、幼い妹の夢を潰したくなかったんです」
なんだか猛烈に腹が立つ。
女性だからって、夢を追いかけることすらできないなんて。
こんなに優秀なのに皿洗いと皮剥きしかできないなんて!
サリーさんの話は、ライブラリアンというだけで将来が狭まった自分とも重なって見えた。
貴族としてやっていかないなら、平民になればいいじゃないと思っていたけれど、平民になったところで私は女。
平民はスキルをそれほど重視しないから結婚はしやすくなるかもしれないけれど、職業選択は厳しそうね。
男女平等を目指していた世界を知っている私にとっては、本当に腹の立つ話なのだ。
「サリー様は今後どうするつもりなのですか?」
「自分でも馬鹿だとは思うのですが、諦めきれないのです。
結婚なんて考えられません。
今お金を貯めているので、貯まったら別の地で挑戦してみようかと悩んでいるのですが…」
「ムカつきますね…」
「「お嬢様!??」」
「サリー様一緒に頑張りましょう!
ムカつく理不尽を打ち倒してやるのです。
私のパティシエになってください!」
「え?お嬢様??ぱてぃしえ?って…え?」
「お菓子作り専門の料理人のことですわ!
うんとおいしいお菓子のお店を作りましょう!
女性だからなんなのです!女性でもできるってこと見せてやりましょう!」
「やります!いや、やらせてください!」
熱い気持ちが先走り、淑女の仮面が剥がれた気がする…
サリー様とがっちり握手しながら、ふと冷静になり、そう思った。
トントン。扉が開く。
「テルミス。元気になったんだね。
部屋から出てこないから心配したよ。」
「マリウス兄様!アルフレッド兄様!?
どうしてこちらに?」
聞かれてたー!
「パーティ以来落ち込んでいただろう。
気晴らしに行かないかと訓練後に家に戻ってみれば、元気な声がきこえたんでね。」
「やぁ。こんにちは。
元気になってよかったよ。
来客中に入ってすまなかったね。
元気なら僕らはこれで失礼するよ。
ん?マリウス?」
「あぁ、そうだな。ちなみにその菓子はなんだ?」
「マリウス兄様もアルフレッド兄様もご心配おかけしました。
こちらはプリンという菓子です。
ラッシュの妹のサリー様が再現してくださったの。
私このプリンで元気になったのです!
後で差し入れしますね」
あぁ。びっくりした。







