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言わせて貰います!  作者: 栗須まり
12/12

気付いてしまった

かなり長い間放置してしまってすみません。

重いお腹を摩りながら、はしたなくもベッドに寝転ぶ。

まあ、自室だし誰が見ている訳でもないから、楽な姿勢をとらせて貰おう。

だってさ、食べるしかなかったんだもの!


夕食の席は姉の全快祝いと、最初に告げられた通り、私の婚約祝いで随分と豪華な食事が用意されていた。

勿論両親は大喜びで、そんなお祝いムード一色の中、とてもじゃないけど水を差す様な発言が出来る訳ない。

だって、理由を聞かれたとして、説明した所で信じて貰える訳ないもの。


それにしても、きちんと伝えたつもりだったのに、結局ユーエンには伝わっていなかったんだと思うと、運命は変えられないのかも?なんて暗い方へ考えてしまう。

ウチみたいな男爵家が断れる筈がないし。

頭に浮かぶのは「縁談避け」と言われた時の、あの惨めな瞬間だ。

本当は想う相手がいたのだと知らされ、打ちひしがれて庭園へ逃げた時のあの記憶が蘇る。

それから攫われて私の前世は終わりを‥

そこまで回想を振り返ると、ある違和感にガバリと起き上がった。


待って、私はどうして攫われたの?


一番初めに気付くべき所だったのに、どういう訳か攫われたのはユーエンが原因だと思い込んでいた。

よく考えたら分かる筈だわ。

だってユーエンにとっての私の価値なんて、縁談避け位にしか役に立たないんだから!

婚約だって簡単に破棄出来るし、それによって損害を被るのは私側だけ。

わざわざ私を攫って、遠方へ追いやる理由がない。

そこまで考えたら、血の気がサーッと引いて、体がブルブルと震え出した。

気付いてしまった。いや、気付くべき所に蓋をして、目を逸らしていたと言うべきか。

思ったよりも、あの、必死に走り崖から落ちたショックが強かったのだ。

あの瞬間を思い出したくなくて、"そもそもの原因はユーエンにある"と思い込む事で、自分を保っていたんだわ。


震える体に両腕を回し、自分を抱きしめ深呼吸をする。

頭にあるのは"誰かに狙われていた"という事実。

それはつまり、私の存在が邪魔だと思う誰かがいたと‥

けど、そんなの記憶を辿っても分からないわ。

婚約以来どこへ行ってもユーエンファンから嫌がらせされたし、そういった人達にとってはわざわさ誘拐するよりも、婚約破棄という醜聞の方が好まれる筈。

もしかするとかなり熱烈なファンの中には、私の存在自体が気に入らないなんて人がいたのかも!

でも、あの場で攫うとなると、限られて来るんじゃない?

なんと言っても王宮なんて入れる人は限られてるし、いかに庭園の警備が多少緩くても、簡単に忍び込める様な場所じゃない。

とすると、ある程度権力がある人か、王宮関係者に何らかのコネを持っている人か‥


そこまで考えるとすっくと立ち上がり、机に向かって歩き出す。

引き出しから紙とペンを取り出し、座ってあの時の顔触れを頭に浮かべる。

それから走り書きで出席者のリストを書き出してみたが、あまり覚えていないという事にすぐ気が付いた。

そりゃそうなるよね。

あの時他に目を配る余裕なんて無かったし、まだ学生の身というのを言い訳に、他家との交流なんてしていないもの。

なんとなく朧気に覚えている顔だって、どこの誰かは分からない。


ハア、いきなり出だしでつまづいたわ。

いいアイデアだと思ったんだけどなぁ。

やっぱりこういう事は、普段から他家との交流がある人に聞いてみないとダメよね。

うん、明日お母様にでも聞いてみよう!


暗い気持ちを引きずらないのは私のモットーで、長所でもあると思っている。

まだ事件が起こるのは二年も先なんだから、今の内に対策を練れば十分防げる筈。

その為には色々な人に協力して貰わなきゃね!

などと簡単に考えて自分を納得させてみたのだが、これが思わぬ方向へ転んで行くなんて、この時は全く思わなかった。

読んで頂いてありがとうございます。

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