甘い誘惑には裏がある3【アメリア視点】
今まで、皇太子殿下のアルロ様とは接点なんて何も無かったわ。
学園には通ってたけど、仲良くなる機会なんて無かったし、話すことも無かったからね。
私自身も関わりたくなんて無かった。ただ、遠くから見ているだけで良かったの。
そう、アルロ様と他の貴族の男性達が話しているのを密かに見つめるだけで、それで。
でもね、そんなある日よ。アルロ様に見つかってしまったの。
私が男性二人の友人同士がじゃれているのを影で鼻血を出しながら観察している現場を。
私の脳内では、男性二人は恋人通しだけど、世間の目は厳しい。なのでこっそりと愛を育む様子を妄想しながらも楽しんでいたの。
ただ実際は、友人同士の男性二人が他愛ない話をしていただけなんだけど。
そんな様子の私を見て、アルロ様は話しかけてきたのよね。
「何をしているの?」
「今、良いところなんだから邪魔しないで!! 私にとっては命よりも大事な妄想の時間よ」
と、皇太子殿下に向かって一喝してしまったわ。それも仕方ないのよ。私は話しかけてきてくれた方がどんな人なのか確認しなかったもの。
「へぇ。妄想??」
「そうよ。ほら、見ていると、友人同士の他愛ない会話が、実は愛情を深めている会話に聞こえない!? もう、堪らないわ」
「そっか。きみが無口なのって日頃からそんな妄想を膨らませてるからなんだな。生き生きしている姿、はじめて見たや」
「何言って……」
私は男性二人に夢中になり過ぎていたの。意味深な言葉を言われ、はじめて声の主の方へと顔を向けるとアルロ様が私をじっと見ていたのよ。
まさか、皇太子殿下が私に話しかけてくれるなんて思わなかったから、驚いてしまって悲鳴を上げそうになったの。
それに気付いたアルロ様に口を手で塞がれたのよね。
「いいの? 見つかるよ。静かにしようね」
私は必死に首を縦に振った。手を放してくれたけど、私は無礼な物言いをしてしまったから、不敬になってしまう。
「お、お見苦しい所をお見せしました。さっきまでの失礼な物言いを大変申し訳ありません」
私は地に手をついて深々と謝罪した。
「そうだな。許すには条件がある。きみが婚約者になることだ」
私には選択肢何て無かった。
「婚約者になれば、きみの好きな事をすればいい。勿論、男性観察もしてもいいよ。それだと不服かい?」
「い、いえ!! 滅相もありません。謹んでお受け致します」
それが、私とアルロ様の出会いでもあったのかしら。でも……知らなかったのは私だけだったみたいだけど。
アルロ様、他の貴族令嬢と違って暗くて大人しそうな私が常に体調が悪く、それでも無理に学園に来ているのだと思ってたまに様子見していたみたいなのよね。
それが、私の秘密の楽しみを目撃してしまったというわけ。
それは結婚してからアルロ様が話してくれたのだけどね。
え? 婚約者のフリから結婚したのは何故かって?
婚約者になると、自然とアルロ様の近くになるじゃない。だから、良いところも悪いところも見ているうちに、愛おしく思ってしまったのよね。
でも婚約者のフリだから、結婚は出来ないだろうと諦めてたんだけど、アルロ様が正式に求婚してくれてたのよ。
それが私とアルロ様の馴れ初めなのかしら。
でも、結婚してても妄想はやめられなくて、思い切ってアルロ様に聞いてみたの。
そしたらね「きみの好きにすればいい。応援するよ」って言ってくれたの。
寛大なお心よね。




