余計に意識してしまう
図書室を出て、廊下から見える窓の景色を眺める。
空は星空がとても綺麗だった。魔導具で灯された庭は誰も居ない事から真夜中なのだろうと思う。
どのぐらい時間経ってるのか分からない。今は何日なのだろう。
私は早歩きで寮に戻ろうとし、曲がり角で誰かにぶつかった。
ぶつかった反動で後ろによろけ、倒れそうになるが、腰に手を回され支えられた。
「……なん、で」
私を支えたのはアレン様だった。さっきまで幼いアレン様と接していたからか、変な感じだった。
アレン様は、私の横髪を払い、頬に手を添える。確かめるように目元、鼻、唇、首筋と手をゆっくりと移動させる。
私はあまりにもくすぐったくて身動ぎしたら、抱き締められた。
「……良かった。きみが無事で」
「あの、私……」
話出そうとしたらさらに強い力で抱き締められると、アレン様の背後にいたキースが吹き出したのを手で押えていた。
キースさんは咳払いする。
「殿下。心配しすぎです」
その言葉や呆れた表情から、何日も経っていないのかと思った……が、
キースさんのことだし……何日も行方をくらませても心配はしてなさそうな気もする。
「し、仕方ないだろ。数時間とはいえ、一人であんな危険な場所に行ったんだ」
「!? ア、アレン様……知って? それに数時間って何日も経ってないんですか?」
「きみが呪われてる事をクロエ殿から聞いていた。呪いの特徴も。だから、庭園に来たことも知ってるよ」
アレン様は私を抱き締める力を緩める。緩まったので顔を上げるとアレン様と目が合った。
それは思ったよりも距離が近くて、恥ずかしくなったけど、目を逸らす事が出来なかった。
「顔が赤いね」
アレン様は柔らかく微笑み、私の髪をさらって口付けをする。
前髪を払って額にアレン様が自分の額をくっつけた。
「もしかして、熱でもある?」
その行為は、私が何故赤くなってるのを知っていてわざとやっているのか。それとも無意識なのか。
ただ、分かることと言えば、私自身が好きだと自覚してしまい、意識してしまってる事だ。
「だ、大丈夫……です」
私が声を振り絞って言うと、心配そうに見つめてたけど、頷いた。
アレン様は私から離れ「送るよ」と言い、寮まで送ってくれた。
身を翻して、歩き出すアレン様の背中を見ていると無性に寂しくなってしまって咄嗟に裾を握ってしまった。
自分の行動に驚いた私は裾を離した。必死に言い訳をしようとしたが見つからない。
足を止め、振り向いたアレン様は私の顔を覗き込んだ。
「やっぱり、どこか体調悪い?」
なんて聞いてくるものだから、勢いよく首を左右に振った。
「そういうわけでは……その……何でもないです!! 今日はありがとうございました。お、おやすみなさい!!」
私はアレン様から逃げるように寮の中へ入っていった。
自分の寮部屋に入り、扉を閉める。扉に寄りかかるとズルズルと背中を扉につけたまま下に落ち、しゃがみこむ。
「……私のバカ」
心臓がバクバクいっていて、破裂するじゃないかと思うぐらいだ。顔もゆでダコのように真っ赤で熱い。
好きだと自覚したからなのか、余計に意識してしまう。
ジョセフさんが言っていたように幼い頃に私と会った記憶は無くなってしまったようで、ちょっと寂しい気もするけど仕方ない事だと割り切るつもりだ。
問題なのが、
「明日から……普通に出来るかな」
その不安だった。




