大人の考えることは分からない
アイリスが誰ルートなのかはなんとなく想像ついた。
その事が気になって夜はなかなか寝ずけなかった。
今はノア先生が起きているであろう時間帯に訪ね、昨日と同じようにサロンの周りを結界で張る。
結界の中に居る私とノア先生の会話は誰にも聞こえない。
「何かわかりましたか?」
「はい。……その、アイリスから何か想いを馳せる言葉とか受け取っていませんか?」
自分で言っていて恥ずかしくなってしまった。ノア先生の顔が見れず、目を逸らしてしまう。
「いいえ、特には……急にどうしたんですか?」
「あの、アイリスからの想いを綴った言葉が宝石に魔力を注ぐ他に必要みたいでして」
「アイリスさんと私はそんな関係性では無いですけど、それならソフィア様が一番距離が近いだそうし、沢山貰っていると思いますよ」
そんな関係性では無い……ということは、どういう意味だろう。
ふとそんなことが疑問だったけど、今はそれどころじゃない。
「私には……そんな、あっ。いやでも」
私は記憶を遡る。アイリスから貰ったであろう言葉があったのを思い出した。
だけど自信がない。
チラッとノア先生を見ると、宝石をテーブルの上に置いていた。ゴトっと音が鳴る。
ノア先生は宝石の上に手を広げる。
私は意を決して、心当たりのある言葉を紡ぐ。
「ソ…… ソフィア様にはソフィア様だけの魅力があり、それを知っているからこそ、ずっとお傍で仕えていたいと、お慕えしたいと思うんです」
アイリスの言葉で一番心に響いた言葉だった。それを自分の口から言うなんて、とても恥ずかしいけど不思議と心が温かくなる。
すると宝石が昨日見た時よりも光輝き、鍵が宝石の中から出てきた。
ノア先生はそれを手に持つと、苦笑した。
「……全くあの人は。呆れますね、こんな無茶をしたのだから」
「あの、その鍵は?」
宝石の中に隠してあったのは銀色でアンティーク調のスケルトンキーのようだ。
「私の憶測ですが、もしかしたらどこかの倉庫……それか誰にも触れられないような部屋の鍵」
「なんでそんなもの」
「分かりませんか? ルイス家にとって知られてはいけないものがある場所、その鍵だとすれば?」
「あっ!! いやでも……そんな危険な」
「ルイス子爵は何としてもソフィア様を狙ってくるでしょう。その前に……と、思ったのかもしれません」
アイリスは……私を助けるために?
自分で行動が難しいから託した? でもその鍵はどうやって入手したのか気になるけど、今悩んでも仕方ない。
闇の力なんて、そんなにいいモノじゃないのに。どうして欲しがるんだろう……。
大人の考えることは分からない。




