僕のことは僕が一番分かってますから【ノエル視点】
ーーそれは、リリーが寝室に入る少し前の話。
「……何を企んでるんです?」
姉上が寝室で着替えてるので僕とキースは寝室の外で待機していた。
キースは扉の前で手を後ろにして立っている。僕は反対側の窓側に寄りかかっている。
僕はキースの動きに警戒しながらも軽く睨んで問いただす。
が、キースはニコッと純粋な笑顔を向けるものだから、少しだけ罪悪感で胸が痛みだした。
「なにって……。特に何も企んでいませんよ」
「貴方の噂は知っています。歪んだ感情を秘めているようで……その感情に姉上が振り回されるんじゃないかって義弟としては心配なんですよ」
「……ここはハッキリ言っても良いと思いますよ。“姉上に近寄るな。話しかけることも許さない”……と」
キースはメガネをかけ直し、目を閉じて次に開いた瞬間、とてつもなく嫌な殺気を感じて全身が鳥肌がたち、立っているのもやっとだった。
気を許すと絶対に腰を抜かしてしまう。
ーーこの男は危険だ。
さっきまでの柔らかい瞳とは違う、蛇に睨まれたかのような鋭く殺気を帯びた瞳に恐怖を感じてしまう。
「凄いですよねぇ。その独占欲……そして、守りたいと強く願う感情。僕も知りたいなぁ。どうして皆、彼女を慕うのか。可愛いけど、普通の女の子ですよねぇ。そこまで魅力があるとは思えないんですよぉ」
「意外……ですね。仔犬のように懐いてるように見えましたが」
必死に声を絞り出して言ったことに対して、キースは怪しく笑う。
「立場は僕よりも上ですから、愛想良くしていかないと……生きていけない」
確かに、それはあるかもしれないが……。
「いいんですか? 僕に貴方の本性を見せつけて。僕も貴方の上、ですけど」
キースは警戒しながらも声を必死に出す僕を見て、おかしそうに笑う。
「同じ匂いがするからですかねぇ。感情をさらけ出したノエル様を見てみたいと思ったまでです」
「それはどういう……?」
「僕は見てみたいんです。どうしてソフィア様に惹かれるのか。守りたいと思うのか……、その理由が知りたいんですよねぇ」
「利用する気?」
「いいえ、まさか。ただ、僕は……ノエル様の手助けをしたいだけです」
キースのこの感情は純粋そのものだ。ただ純粋さを歪ませているようにも見える。その言葉一つ一つが嫌な感じがする。
悪気がないのがタチが悪い。
感情をさらけ出す? そんなことをしてなんの意味がある。
僕はただ……姉上が幸せならそれでいい。
ふと、脳裏である言葉が浮かんだ。
ーー本当に?
それは、自分の出した答えを疑うかのように、否定するかのように……そんな言葉が浮かび上がってしまった。
僕はその感情を否定するように首を左右に振った。
「結構です。僕のことは僕が一番わかっていますから」
「そうですかぁ。それは残念」
さっきまでのピリピリした空気が一変して、キースは柔らかい笑みを浮かべた。
……さっきまでのがキースの本性ならばとんだ猫かぶりですね……。
なんて、そんなことを呆れながらも考えてしまったが、更に要注意人物として警戒しなくてはいけませんね。
それから数分後、リリーが一通りの仕事が終わったのか様子見で寝室にやってきたのだが、かなり呆れられていました。
寝室のドレスの散乱を見たのでしょう。ワナワナと震えて怒りを必死に抑えているのがわかりました。




