ゲームのヒロインなんだなって改めて実感する
女子寮の前に一人の女性が立っていた。
女性の姿をしたクロエ様なのだが、目立っているようで通り過ぎる令嬢や令息はチラチラと見てきている。
頬を染めて話しかける令息までいる。が、クロエ様はやんわりと交わしているように見える。
「お待たせしました!」
私はクロエ様に声をかける。
待ち合わせは寮前にした。朝から体調が優れない私のためにクロエ様が気遣って寮を選んでくれた。
本当に有難い。
「気にしないでください。それよりも入りましょう」
クロエ様は嬉しそうに私の両手を握ると歩き出した。
さっきまで話しかけていた令息はガン無視して、だ。
良いのだろうか……そんなことを思っていたらクロエ様は少し困った顔をした。
「心配しないでください。もう話は終わってますので」
そう言われても……。
令息の顔を見ると悲しげな表現をしていて話が終わってるようには見えなかった。
「……男に好意を持たれても困りますからね」
「? 男性の友情がお嫌いなのですか?」
「そういう意味ではないんですよ。恋愛としてです」
ああ、そういう。でもなんで恋愛感情としてなんてわかったのだろう。
勘なのかな。やっぱり。
「なんで恋愛感情としてなんてわかったんですか?」
「簡単なことです。付き合ってくださいって言われましたので」
「それでも、どこかにかも知れませんよね?」
「そうでした。あなたはそういう人でしたね」
クロエ様は呆れたようにため息をつきながら頭を抱える仕草をした。
私、変なこと言った!?
不快なことだったかな。
なぜ呆れたのか私には分からないけど、不快にさせたという事実は変わらない。
謝ろうと口を開くと、アイリスの声が聞こえた。
「ソフィア様……と、クロエ様も御一緒でしたか」
寮のエントランスに足を踏み入れたのとほぼ同時にアイリスがエントランスに来ていた。
きっと私の帰りを寮の外で待とうとしていたんだ。
アイリスだけじゃなく、他の侍女も自分が仕えてる貴族をお出迎えしている。
「お疲れ様です、ソフィア様」
アイリスは私に労いの言葉をかけた後、クロエ様を見て不思議に思ったのか首を傾げた。
「クロエ様の侍女が見当たりませんが……まだいらしてないんですね」
「侍女はいません。田舎育ちなもので、雇えるお金がありません」
アイリスは慌てて頭を下げる。「申し訳ございません」と、謝罪もして。
クロエ様は恭謙な態度で接した。
「謝らないでください。侍女が付き添ってないと不思議に思いますから」
フォローした言葉なのだろうが、アイリスは申し訳なさそうに再度謝罪した。
「多大なご無礼をお詫び申し上げます」
「大丈夫ですよ。だからもう自分を責めないでくださいね」
「は、はい」
アイリスは頭をあげるとクロエ様は笑いかけた。
転生者だけども主人公なんだなって改めて実感してしまった。
見てよ、相手に慎む姿勢が全てを物語っているわ。
横で聞いてただけでも心に響いたもん。ホッとしたというか、胸の奥が温かく感じた。




