84話目 しめて84点
ボスのラブちゃん戦でも、マングースさんとお話ししてた。
(マングースさんは、鬼六先生みたいにアバターを変えたりするんですか?)
(僕は、ちょっと名前を変えるぐらいですね。冒険者は品格も求められるらしくて、あくまでも別人って言い張れる程度です)
(え? それなら、アバターも変えられた方がいいのでは?)
同じキャラで同じ動きとか、バレやすいでしょうし。
だけど、猫少年は首を振った。
(魂が、この姿にしっくりきたんです)
(――お気に入りなんですね)
猫少年がしみじみと念話してくれた。あ、ラブちゃんの削りはガシガシやってくれてます、ハイ。
(あたしも、この天使ちゃんアバターと出会って、1発で「この子だ」と思いましたよ)
(それは良かったです。とっても伸びやかに動いてるし、シャボンさんの魂がフィットしたんですね)
(ありがとうございます)
鉄クズの嵐もヨユーでかわして、隅の魔法陣に叩き込むと、素早く中央へ。再度鉄クズをかわして槍をお見舞いすると、難なく【瓦礫の竜】を撃破。
(あたしが見た中で、マングースさんが1番手際が良かったです)
(嬉しいですね。――うん、やっぱりみんなで来たかったかな)
(あー)
記録更新は確実だったわね、こりゃ。
【瓦礫の竜】のカードを回収したあたしとマングースさんは、談笑しながらダンジョンの外へ戻ってきた。
「あらま」
敵は、蛇100人。
「あんた達……。なんか、ムキになってない?」
「うるさいぞ、サボテン!」
あたしを一瞥したカナヘビは、マングースさんを見た。
「マン偶数……いや。お前、マホロバ・リアルの『マンクス』だろ」
ああ、ちょっとだけ名前変えてるって言ってたわね。――うん、本当に「ちょっと」だわ。
対するマングースさんは、猫耳をポリポリかいてた。
「さあ、他人の空似かな」
「トボけるな! あんなに動けるヤツがそうそういるワケないだろ。――なあ、ざまぁ団・第4支部の『マンチカン』さんよお」
え? そっちは初耳。
(マングースさん。もしかして、ざまぁ団だったんですか?)
(はい。「元」、ですけどね)
ぐはあ。転向組だったの。
マングースさんは、カナヘビ達に肩をすくめてみせた。
「で? 君らは、僕が仮にその人だったとして、どうしたいの?」
「こうするんだよ」
カナヘビは、両手を組んでお祈りするような形を作った。スグさま、両手が銀色に輝きだす。
なになに……〖ラッキー7〗? 脱法呪文ね。
カナヘビが不敵に笑った。
「食らえ!」
パッと開いた両手からは、たくさんのサイコロが。
ジャラジャラジャラジャラ。
総勢7つだった。出目は、3、5、2、3、1、6、2。
ボグオオオォォォー!
「――えっ!?」
一瞬でマングースさんが吹っ飛ばされていった。思わずソッチに目をやると、再びカナヘビの方からジャラジャラと音が。
――まさか!?
「今度は【祝福】つき。42点だぜ!」
6、6、6、6、6、6、6!
ボッグオオオオォォォォーーー!!
再びマングースさんがモロに食らった。そのまま姿が薄れていく。
(新宿・本社ビルで)
(あ……ハイ!)
スッゴイ落ち着いた念話に、あたしの方がうろたえちゃってた事に気付かされた。
――そうよ、こっちは「マホロバ・ライト」なんだし。死ぬのも経験だわ!
今までメチャクチャ軽やかだったマングースさんが、この脱法呪文だけ棒立ちってアリエナイでしょ!
つまり……ワザと食らったのよ。どんな魔法か知るためにね!
「へへへ……ぴったり64点だ。英雄チームの1人もアッサリ葬れる新呪文が出来たぜ、サボテン?」
「――えーっと、ねえ」
ショックから立ち直ったあたしは、ゆっくりと金髪をかきあげてみせた。
「その〖ラッキー7〗、だっけ? 銀魔法の、レベル7でしょ」
「ああ、そうだ」
「芝の女王の〖オーメン〗がレベル6だったもんね。それより大きいって考えたら、あんた達なら7にするわ」
ま、名前で自白してるよーなモンよね。
「でもね~……正直、ダサッ! 『7』をうたった呪文のクセに、サイコロは『6』とかね。パクリの上にご都合を全部乗せしちゃってるから、センスが欠片も無くなっちゃうのよ」
「フン。言いたいことはそれだけか、ザコいサボテン」
組んだ両手が銀色に光った。パッと離してサイコロ7つが地面に落ちる。はいはい、42点ね。
ボッグオオオオォォォォーーー!!
赤魔法の【パラメデス】じゃ無いから、【防火】の軽減も無し。んじゃ、【魔力の盾】でも張りましょっか。
「ダメだ」
あーらま、アオダイショウが【中止呪文】ですって~。ははぁ、青服だから青呪文? わっかりやすーい、盾は効果あるのねー。
あたしは、もういっぺん【祝福】された〖ラッキー7〗を食らった。しめて84点。はいはい、オーバーキルでございますねーだ。
「さて、と」
プライベートルームから即座に新宿西口へと出たあたしは、約束の地・カルイザワ本社ビルまでやってきた。
「お待たせしました」
「いいえ、こっちも今来たところです」
なんかデートの待ち合わせみたいね、あはは。
――だけど、来た理由は脱法呪文。
さっそく、対策をしないとね。
あたし達は、2階のトレーディングルームへと歩き出した。
(マングースさん。あの〖ラッキー7〗ですけど、あたしが盾を張ろうとしたら、アオダイショウに【中止呪文】されました。多分、ダイス7つってダケで、普通の呪文ですね)
(ええ。僕も【パンドラ】を張ったら消されました。単純に、サイコロを多く振るだけの銀魔法でしょう)
よし、一流冒険者さんと同じ結論だわ。
でも……厄介よね。呪文のセンスは壊滅的だけど、威力は絶大。タイガさんが言ったみたいに、「サイコロたくさん振れば勝つ」ってクソゲーになっちゃう。
ま、こんな時はアレよ。
(イーちゃんを呼びましょう)
(……? 誰です、シャボンさん?)
(ああ、イシュタール女王のことです)
〖オーメン〗の作り手だし、マホロバ・リアルで悪用されるのを恐れてたものね。
(サイコロについては、誰より適任ですよ)
(――ですね)
あら? マングースさんがクスクス笑ってる。
(え、あたしの案って、そんなにヘンでしたか?)
(いえ、失礼。ただ、発想が似てるなあと思いまして)
(ん?)
魔法陣に乗って2階へ。
(あの~……もしやマングースさん)
(はい)
猫少年の後をついて、サロンのようなトレーディングルームへ入ると、その奥まった席には。
「ホホホ……。待っておったぞ、マングース。そして、シャボンよ」
豪奢なソファに座った芝の女王が、グラスを傾けていた。




