83話目 だってマングースだもの
その後、るーるさんのパーティから、マングースさんへの引き継ぎが無事に終わった。
「じゃあシャボンさん。行きましょう」
「はい」
2人で上野へ向かう途中、今度は念話で呼びかけてくる。
(シャボンさん。ラビちゃんのその後はどうですか?)
(あ、おかげさまで元気です。友達とも仲良くやってるみたいで)
(良かった)
マングースさんが優しくほほえんでくれる。
(それにしても、シャボンさん。なんだか色々と、ご活躍されてますね)
(いえ、あたしなんかは……。リアルで活動されてるマングースさん達の方が、よっぽどスゴイですよ)
(うーん。僕はさておき、一緒にいた2人はスゴイですね)
(え、鬼六先生もですか?)
(はい)
マングースさんがうなずくと、猫耳がひょこっと動く。はう、モフりたい。
(ひんぱんにアバターを変えてるみたいで、それらのいずれも動きが上手いですから。――もっとも、昨日は〈岩石〉だったそうですよ? 名前だけ変えて)
あたしを見上げたマングースさんは、イタズラっぽく笑った。
(天使さんを倒したって、自慢してましたね)
(へ?)
――あ。それってマサカ!?
(不動さん!?)
(はい、正解です)
(え、あのお岩さんの中身って、鬼六先生だったんですか!?)
(あんなに動ける〈岩石〉は、そうそういませんよ)
マングースさんは苦笑した。
(本当は今日、4人で来る予定だったんですが、ちょっと用事が入ったとかで、僕だけの参加です)
(あー)
救助要請が入ったのね。そりゃもう、ソッチが優先だわ。
(うーん……だけどザンネンですね)
マングースさんが猫耳をかいた。
(ほら、ペガススさんとシャボンさんのチームで、最短記録を出したでしょう?)
(チェックされてたんですね)
(僕は、挑戦する目標があると、向かってっちゃうタイプなんですよ)
飄々と答えてるけど、かなりの負けず嫌いね。――うん、あたしとおんなじ。
(僕がみんなを誘って、5人パーティで記録を塗り替えようって、意気込んでたんですけど)
(えーっと……。3人とあたしは確定として、もう1人は誰ですか?)
(竜人の女の子です。たしか、アバター年齢は11才だったかな)
おおぅ、4才、6才、10才、11才って、なんというチビッコ軍団。――ってか、その人も絶対強いでしょ。
(あの~、マングースさん?)
(なんでしょう?)
(ガチのレスキュー隊が、ライトに来ちゃダメです)
メッて叩くフリをしたら、猫少年は屈託無く笑ってくれた。
さて、勝手知ったる上野公園にやって来ると、さらに人数が増えてた。えーっと、総勢50人ぐらい? ちなみにみんな蛇ね、どーでもいーけど。
んでもって、青服、赤服を従えた金ピカ服がお出迎え。
「来たか、サボテン」
「ええ、カナヘビさん。ところで、三色の蛇がそろい踏みね。トリオでも結成する気?」
「フン。方針転換だ」
指をパチンとならすと、蛇人が一斉にあたし達を取り囲む。
「もう攻撃OKになったからな、サボテン? サービス期間は終了だぜ」
「へーえ、下っ端宣言ありがと」
「なんとでも言え」
「あ、いいの? じゃあ、下っ端カナヘビちゃんって呼んだげる。やーい、下っ端下っ端下っ端ー」
「ぐっ……! お、おい、みんな! 殺せ!」
何よー、言えっていうから言ったダケじゃないの、ンモー。
ざまぁ団のモブ蛇どもが、われもわれもと【パラメデス】を唱え始めた。――うわー、サイコロもモタモタ振ってるし、ナメきってるわね。てゆーか、前にやってた【祝福】や【三連撃】すら無しとか。本気で数の暴力ってワケ?
もっとも、コッチにとっては朗報よ。炎ダメージ(重要)だもの。メルティングポット様々だわ。
(マングースさん。【防火】のチョーカーって着けてます?)
(はい。僕も行きつけの工房で教えてもらったんで)
(さすが冒険者様)
うんうん、命に関わるもんね。装備のアップデートは、スグに行うのが基本だわ。
(んじゃ、マングースさんの力も借りていいですか?)
(モチロン。じゃ、僕が【パラメデス】を封じますね)
(お願いします)
すかさずマングースさんが黒魔法を撃った。うわお、【封印領域】ってのをもう準備してたのね、早っ。
「ウゲッ! 【パラメデス】が封じられた!」
「おい、誰か【魔法霧散】で消せ!」
うろたえる敵たちに向かって、マングースさんは軽やかに突っ込んでいく。ふむ、素手で猫パンチするの……? と思ったら、接敵直前に【ヘパイストス】で槍が出現。
ズバズバズバズバッ!
(うひゃーっ、クリティカルの嵐!)
(どうも)
四肢をクリティカルで切ると使えなくなるのね。てか、マングースさん余裕あるし。
猫少年がモブの間をすり抜けるたびに敵が倒れてく。ひぇ~、エゲツナッ!!
「こらサボテン、ヨソ見してんじゃねー!」
あー、アカマタがなんか言ってきたけど、ムシムシ。あたしにはツヨ~い虫娘ちゃんたちがいるもんね。
「カモン、【メリッサ】! アーンド、かかれ!」
シスターズで一斉にアカマタを蜂の巣にしてやる。
「あ、ああっ……!」
ゴテッと横倒しになるアカマタ。蛇相手に《麻痺》毒でございますわ。お粗末。
「チクショウ……! 誰か、【魔法霧散】しろよ!」
エラそーに怒鳴ってるけど、ザ~ンネン。一向に【魔法霧散】されないのは、猫少年が白魔法の使い手を片っ端から切ってるためでした。――え~え、目をクリティカルで切って、視界も奪ってるのね。コワッ!
「【魔法霧散】だコラァ!」
あ、ようやく【封印領域】が消されたわ。そんでもって、ま~たモブ達がサイコロを転がし始めたけど、マングースさんが【封印領域】を再度張って、ハイやり直し。
「うぐあー!」
あわれ、いま【魔法霧散】を唱えてた敵は、槍の餌食になっちゃったのでした。むごし。
――うーむ。マングースさんは蛇よりも強し。けだし名言ね。
あたしはというと、シスターズにモブの四肢をチクチクさせてた。いや~、サイコロ振る相手に《麻痺》は効くわー。
半数ほどが倒れた戦場で、カナヘビが先割れ舌をチロチロさせてた。
「フン……。サボテンもそっちの猫も、おかしなユニークスキルでも入れてるのか?」
「あたしに聞いてるの? なら答えてあげる。さぁねぇ~」
「ぐっ……」
カッコつけてるのがことごとくカラ回りするわよね、コイツって。
「おい、サボテン。脱法呪文みたいに、脱法スキルを入れる方法が出来たのか?」
「う~ん、どうかしらねぇ~」
「――教えるなら、助けてやるぞ」
はー、すっごい上からのご提案ですこと。
「ンベー」
代わりにシスターズで《麻痺》させちゃいましょ。ツンツンっと。
「チッ……」
すごい恨みがましい目ね。知ったこっちゃないけど。
マングースさんは軽やかに戦場を舞ってた。ん~、満開の桜の下、槍がひと薙ぎするごとにモブが散っていく。はー、絵になるわー。
(シャボンさん。僕が叫んだらソッポを向いといて下さい)
(あ、はーい)
やるんですね、あのワザを。
「ああぁーっ!!」
出し抜けにマングースさんが大声を上げた。一拍遅れてピカッと光り、モブ敵が「ぐあああー!」とのたうち回る。
――うふふ、【閃光】を食らったのね。声のした方を素直に見ちゃうとか、返事したせいで瓢箪に吸い込まれちゃった孫悟空よりチョロすぎィ!
かくて、2人対50人の変則マッチも、堂々の圧勝をしてしまったのでした。――いや、さすがに勝てると思わなかったわ。
「シャボンさん。また出てくると面倒なんで、さっさとダンジョンに入りましょう」
「ですね」
んー、勝ち誇るとかもナシ。つまり、「あんな相手には勝って当然」なのね。
銀ちゃんが、5本の指に入るとか言うハズだわー。「僕はさておき」? はーい、ウソウソ。あれだけ蛇の解体ショーが出来るマングースさんとか、スゴイに決まってるでしょ、ええ。
背丈はあたしの胸ほどまでなのに、猫少年の背中がとっても大きく見えちゃいました。
「マングースさん。刃物でクリティカルを出す方法、教えて下さい」
「いいですよ。――あ、それじゃあ僕にも、【メリッサ】の《麻痺》のコツを教えて下さい」
「はい!」
このダンジョンって、おあつらえ向きにコンサートホールがあるもんね。
鉄巨人をサクッと倒したあと、ホールの上で互いに教え合ったのでした。
「はい、シャボンさん。これで刃のある武器は四肢が狙えますよ」
「基本は【メリッサ】の《麻痺》狙いと同じなんですね」
「ええ。シャボンさんは目がいいですから、杖を槍に変えて【武器の達人:槍】にしたらサクサク手足を落とせますね」
「ありがとうございます」
お世辞でも嬉しいです、はい。
――いや、それというのもね? 【ヘパイストス】で槍を出してさ、マングースさんを練習台にして(贅沢!)、チクチク刺してたの。
んでも、いざ実践形式になったら、まー1度も当たらないワケよ。向こうの【武器の達人】シリーズをOFFにしてもらってても、四肢を落とすどころか、かすりもしない。
やっぱりあたしは、レーヴァテインがメインね。刃物の武器は、予備として考えときましょ。
「それにしても、マングースさんってば、強いのに謙遜されて……。真に偉い人は、偉ぶらないんですね」
「僕は、出来ることをやってるだけですよ」
「おまけに、人格的にも立派とか。尊敬します」
「うーん、それはどうでしょうね」
「え? と、言いますと?」
「女の子の店に行って、頭からパンツ被ってるかもしれませんよ」
「またまた~」
お茶目さをも兼ね備えてるとか、猫耳少年ってば無敵よね~。
愛のないゴリ押しを封殺した呪文です。
【封印領域/Field of Seal】
レベル7・黒魔法/レア
分類:フィールド
効果:術者が選んだ呪文をひとつ使えなくさせる。
「ガキの頃、『その攻撃反則ー!』とか、『バリアー!』とか言ってたよなあ?
なりは変わっても、やるこた大して変わんねえぜ」
――ならず者
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