82話目 金蛇「トカゲでした」
そしてあたしは、蛇な奴らを尻目に、上野のダンジョンをヘビーローテーションしてたのでした。
「どーも、アカマタちゃんズ。出迎えご苦労様」
「――クソッ」
友達の輪は大分回って、今は「被害者友の会」のメンバーから、地下闘技場の面々へと移ってた。
合間でのエイホウさん情報によると、あたしのウワサは掲示板とかでかなり広まってるみたい。フフフ、よーしよーし。注目度はバッチリね。
「俺らも光栄ですよ。芝の女王を倒した天使さんとパーティ組めるなんて」
「いえいえ、そんな大層なモンじゃないですってば、ホント」
今も、狐のリーダー「るーる・るー」さんと世間話をしながら、6人パーティでダンジョンにアタックしてた。
――ん、そろそろ半日。鉄巨人やマザージェリーは、自宅より見慣れてきたわね。
「るーるさん達は、竜を【箱庭】で倒しますか?」
「ナシでお願いします。シャボンさんの動きも見たいですし」
「はーい、OKですよー」
6人体制のときは、半々ぐらいでガチの【瓦礫の竜】戦に突入してた。んでもって、その際あたしの受け持ちは、「後衛の守り・その1」。――うん、あたしの所にもう1人入ってくれるダケで、こんなに安定するんだって思ったわ。これなら楽チンね。
(いやいや、シャボンさん。ナメてたら6人でも全滅しますって。最初の1/3を削ってなかったら、十分強敵ですよ?)
(あー……納得)
そうよね、誰も「削りなし」は選ばないのがその証拠だわ。本来は裏技みたいなモンよ。
――アレ、でも待って? もしかして、周回しやすいように、ワザと削り有りになってるとか? どーせ社長も、【魔化】の需要が高まるのは分かってただろうし。極力ストレスなし(by社長比)で作ってた仕様? ――うん、ありそう。社長ってば、その辺のサジ加減は絶妙だもんねー、ムダに。
なーんて考えてる間に、前衛チームがラブちゃんにトドメを刺して、見事に退治完了。
「すみません、シャボンさん。《炎の虎》と《狐火》でゴリ押ししました」
「いえいえ、安定は大事です」
《狐火》も、タイガさんの《炎の虎》と同じで、炎ダメージを1にする能力。ぶっちゃけ、ラブちゃん相手には超使えるスキルだわ。
後衛の鹿さんがカードを見せた。
「みなさーん。【魔化】ゲットしましたー!」
「おおー! おめでとうございま~す!」
10組に1組ぐらいの感じで【魔化】を引き当ててたから、そろそろ来るかなと思ってたわ。パチパチぱちぱち~(拍手)。
みんなでそれぞれの健闘を讃えつつ、ダンジョンの外へ。さーて、相も変わらず蛇と顔合わせかしら。たまには「お勤めご苦労様」ぐらいのネタをカマしてもいいのにね……あら?
「服が、金色?」
何度目かのリーダー変更ってワケね。お初の相手には、必殺、スキャン!
「ふむふむ。――ゴールデン・スネイクさん?」
「そうだ!」
金ピカ服の蛇が、モブ集団の前でふんぞり返ってた。
「ブランド物で身を固めた、ゴージャスな蛇だぞ!」
「いや、トカゲだよ」
るーるさんが即座に訂正した。
「金蛇って、トカゲだから。ちょっと尻尾が長い、日本固有種のニホンカナヘビ」
「え?」
「知らなかったの?」
ゴールデン級に間抜けな人は、大慌てで検索してたみたい。
「はぁ!?」
お、なんか素っ頓狂な叫び声を上げてる。ぷくく、これは赤っ恥だわ。
(るーるさん、詳しいんですね)
(小さい頃、家に爬虫類図鑑があったんですよ。それで興味もって、今はレオパードゲッコー飼ってます)
(ほほ~)
写真も見せてもらった。おお~、黄色の肌に黒い斑点。つぶらな瞳がキュート!
「おい、サボテン」
あ、カナヘビ(byるーるさん)が立ち直ったみたい。こっちはカケラもキュートじゃないわ。
「少しは強いだろうが、所詮はお前1人だ。1人の力で、【魔化】を補おうなんて甘いぞ。そうカンタンに出るものでも……」
「あ、今回は出たわよ」
「ぐっ……!」
カナヘビ、残念。いいトコなし!
「そ、それでも! お前のいるパーティだけだろう。こっちはなあ、10倍以上の人数で、人海戦術をやってるんだぞ。差は埋まるものじゃない」
「ふーん。なら、ドッシリ構えてればいいでしょ?」
「――え?」
「1人が出来ることは限界があるんだし。おっしゃる通り。今のまま続けてればいいのよ」
「そ、それはそうだ、が……」
カナヘビ困ってる。うふふ、今度の蛇も面白いわー。
「さ~て、こっちは次のパーティさんが来るからね。そのとき、また相手してあげる」
「うぐっ……!」
バイバイしてあげたのち、今度は谷中へ。階段を下りた先で、次の人達の本人確認ね。
いや~、ずいぶん慣れてきたわ~。はてさて、次のご紹介される人は~……っと。
「あら?」
猫耳少年が1人? ふむ、どこかで見たような……。
「――あっ!」
思わず声を上げると、るーるさん達から驚かれた。
「ん? シャボンさん、すでにお知り合いでしたか?」
「え……ええ。まあ」
「おぉ~。やっぱり強い人は、強い人と惹かれあうんですねえ」
「あ、あはははは……」
秘技・愛想笑い!
――うん、忘れもしないわ。ラビちゃんが誘拐されたときに助けてくれた、ショタ3人組のうちのお1人。
あたしは、深々と猫少年に頭を下げた。
「その節はありがとうございます、『マン偶数』さん」
「いえ、当然のことをしたまでです」
猫少年も、丁寧にお辞儀をしてくれた。
「それと……僕の呼び名はマングースでいいですよ、シャボンさん」
「分かりました、マングースさん」
どうしましょう、見た目は10才ぐらいのカワイイ猫耳少年なのに、物腰はとっても大人だわ。
マングースくんって呼びたかったけど……ううん、やっぱりマングースさんって感じね。
~後日の喫茶店~
銀狐「《狐火》? ああ、もちろん入れてるよ。有利だからね」
シャボン「え~っ!? そこはおっちゃんの《美声》を見習いなさいよー!」
アイス「待てコラ」




