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サボ天使、ガチャVRに人生極振り! ~デッキを組んで強くなる世界で、魔法カード0枚からの成り上がり!~  作者: ラボアジA
5章 マネーマネーマネー編

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73話目 シャボン「株やってたもんね」

 そうよね、イーちゃん女王の〖オーメン〗は、まだ巷に出回ってないんだもの。

 手に入るなかで、1番衝撃的だった【死の群れ】に殺到しちゃったんだわ。


 下では、リスリスさんが応対してた。


「申し訳ありませんが、先日までとは大きく事情が変わりましたので、ユニット交換については、製作者本人の了解を得てからとさせていただきます」


 ああー、申し訳ない、リスリスさん!


「値上げするのかよー!」

「ズリィぞー!」


 集まったアバターの一部からは、ブウブウ言う声が上がる。


「あ! サボテンがいるぞ!」


 誰かが気付いたみたい。みんな次々と見上げてくる。


 あたしは、速やかにリスリスさんの隣へと着地した。


「みなさん。メリッサに注目してくださって、ありがとうございます」

「シャボンさーん! めるぽに言ってやってくれよー!」


 ギャラリーの中からぶしつけな声が上がる。はぁー、そんな権限ないってば。


 代わりに、ニッコリ笑ってみせた。


「メルティングポット工房さんには、すごくお世話になってます。製作者さんの了解を得てからというリスリスさんの言葉を、あたしも支持します」

「えー」


 やっぱりブーブー言う輩はいたけど、ごく一部だった。大半の人は、「今すぐ変えてもらえないのは不満だけど、まあしょうがないか」って感じね。


 リスリスさんが改めて説明して、「了解が得られましたら、工房のホームページでアナウンスします」と頭を下げて、みんなを帰した。


「リスリスさん。すみませんでした」

「いいえ、シャボンさんが謝ることではないですよ。むしろ、広めてくださったんですから」


 あー、うん。本来は喜ばしいハズなんですケドね。

 イキナリ、殺到するほどの人気を集めちゃったら、やっぱ迷惑だっただろうなあって。


 中に入れてもらうと、シルクハットの猫さんや、せんべいピアスの鹿さんが、休憩室でこたつに入ってた。そこで、同じくこたつにINしてる機械クンを元気づけてる。――あうぅ~、すでにいたのね。


「シャボンさん……」


 E-MIXクンもこっちに気付いたみたい。弱々しくほほ笑みかけてくる。


「すみません……。せっかく注目を集めてもらったのに、ショックが大きくて……。待ったをかけてもらいました……」

「ううん、あたしのことは構わないでいいのよ」


 大げさに手でプイプイ否定してみせる。


「むしろ、あたしの方こそ、Eクンと工房のみなさんに負担を掛けちゃったわ。ごめんなさい」

「いえ、そんな……」


 うつむくEクンを、猫のベンガルさんが「大丈夫だよ。心ないことを言う人は、ほんの少しだから」っていたわってる。鹿のDianaさんも、「そうです。たくさんの人があなたのユニットを応援してますよ」ってフォローしてる。


 ――あー、なんとなく、問題が見えてきたわね。


(シャボンさん)


 少し離れた場所で、リスリスさんが手招きしてくれた。


(あの、イシュタールさんを倒した動画がありましたよね?)

(ええ)

(そこのコメント欄に、「このハチはズルいだろ」みたいな言葉が載ってたんですよ)

(うわ~。〖オーメン〗や〖ナイン・エレメンタル〗が有りなのに、ハチがチートって言われても、笑っちゃうダケなんですけどねえ)

(はい。だけどEクンは、それが気になって、ズルズルと調べ始めちゃったみたいで)

(ああ~……。ネットの掲示板で、悪口を見ちゃったんですね?)

(はい)


 あうあう、ダメだってばー、Eクン。心が弱ってるときにエゴサーチは、本当に厳禁だから。機械の体に塩塗り込むと、サビちゃうわよー?


 こたつでは、Eクンがぽつりぽつりと話してた。


「おととい、シャボンさんに喜んでもらったときは、スゴく嬉しかったんです……。だけど……ワーッと注目されたら、批判もあって……。それで今日、大勢の人に来られたとき、すごく怖くなって……。これで有名になったら、もっとハゲしく叩かれるんじゃないかって……」


 あー、もうホンットごめんね。カードが人気化するって視点が、完全に抜け落ちてたわ。女王様に勝った時点で、Eクンに連絡して、対応を話し合うべきだったのね。


 見ると、ショック自体は、すでに工房の人たちがやわらげてくれてるみたい。なんでも、ちょい強引にココに呼んでくれたんだって。流石のケアですわ。


 ――いよっし。じゃああたしは、批判に対するメンタルを構築してあげましょ。


「ねえ、Eクン」


 あたしは、こたつを挟んで向かい側に座った。


「誰もがスゴイって言う作品って、あるのかな?」

「え……?」

「地球上の、全ての人がスゴイっていう作品ね」

「えっと……。な、ない……と、思います……」

「うん。みんながスゴイって思う作品なんて、存在しないわ。――ううん。むしろ、逆。あたしが『スゴイ!』って思っても、誰かが見たら『えー、何コレー?』みたいな感想の方が、よくあるの」


 ――そう。あたしは、よーく知ってる。

 どんなに間違いなく騰がるって確信した株でも、「売り」が出てることを。


 つまり……あたしと真っ向反対の立場を取る人が、毎回いるってことを!


「でもね、Eクン? ――人って、そういうモンよ。色んな考えがあるの」


 あたしは軽く笑った。


「だから……そういう時は、基本に返るの。E-MIXクンが、メリッサを作ってどうだったのかって」

「僕が、メリッサを作ったとき……」


 Eクンは、両手を拝むようにして、ぎゅっと握ってた。


「えっと……。すごく改良して、お尻の針をスピアに変えて、4体のバージョンを作りました……」

「ん。シグマちゃん、タウちゃん、ウプシロンちゃん、ファイちゃんね」

「はい……。おとといの時点での、全力を出せたと思います……」

「じゃあ、最高傑作ね?」

「――はい!」


 お。今日初めて元気な声が聞けたわ。


「だけど……」


 ありゃま。スグまたショボくれちゃった。


「批判されると、ツラくて……」

「うんうん。全力で出した作品が叩かれると、ツライわよね」


 あたしは深くうなずいた。――うふふふふ、「精神的動揺による取引ミスは決してない!」と自負するあたしだってそうよ。何度も苦汁をなめさせられたもんね。しまいには、自信を持って買った株が、底なし沼に落ちてったから。ははは、はぁ……。


 どんよりした感情を、しっかり呼吸を整えて消し去ったあたしは、E-MIXクンを正面から見つめた。


「でも、Eクンは、自信を持ってメリッサを世に送り出したんでしょ?」

「はい」

「なら、胸を張って。それが、『作品』に対する礼儀よ」

「でも、批判は……」

「ムシしてよし!」

「ええ……?」


 みんなは失笑したけど、Eクンは困惑気味。


「で、でも、どこが悪いかとかの、改善は……」

「工房の人に聞けば、それで十分よ」


 あたしは、手でリスリスさん、ベンガルさん、Dianaさんを示していった。


「否定する書き込みなんかより、よっぽど親身になってアドバイスしてくれるわ」


 みんなも、「うんうん」と頼もしくうなずいてくれる。

 あたしは優しくほほ笑んだ。


「だから……ね? 心配しなくていいのよ」

「シャボンさん、みなさん。――本当に、ありがとうございます」


 目を潤ませたEクンは、静かに頭を下げた。




 その後、Eクンは【メリッサ】への交換を再開させた。ちょっぴり金額を変更して。


「0円にします」


 おおう、思い切ったわね。


 なんでも、タダにすると、OK社の審査が緩くなるんだそうで。


「それと、ダウンロード方式にしてもらいました」


 うん。実はこの変更こそが、1番大きいかもね。

 つまり、工房に殺到することがなくなるのよ。どんな人でも、欲しい数の【メリッサ】を、持ってる【死の群れ】と交換できるんだもの。

 ちなみに、他の人たちはみんなダウンロード方式だった。Eクンは、そこに並べてるよりも、面と向かってゆっくり販売したかったみたい。でも、あたしが思いのほか大ブレイクさせちゃって、そうも行かなくなっちゃった、と。


 リスリスさんたちの予想通り、少しの時間で認可が下りた。工房のホームページに、ダウンロード可能になった旨が記載されるや、すごい勢いでカウントが増えていく。


 ――ふう。これで工房も静かになるわね。


「でも、Eクン。タダで売っちゃって良かったの? 今なら高値で交換できたわよ?」

「僕のわがままで工房に迷惑を掛けてしまったので、なるべく負担がないようにしようと思いまして。それと……欲しいと思ってくれたみなさんにも」


 うーん、大人だわ、Eクン。




 しばらくして、工房に1人の〈球体〉さんが来た。


(あの……シャボン様の動画を見て来ました)

「ありがとうございます」


 リスリスさんが玄関前で応対してた。


「【メリッサ】への交換でしたら、現在ダウンロードで行っておりますので、そちらをご利用ください」

(あ! い、いえ! 交換は、ハイ、4枚させていただきました……)


 玄関の監視カメラ越しだけど、宙に浮かんでるボールが大回転。触手が絡まってわたわたしてる。


(ええっと……。こ、こんなスゴいユニットを作られた作者さんに、「ありがとうございます、応援してます」って、どうしても伝えたくって……。すみません、迷惑もかえりみずに……)

「分かりました。――あ、少しお待ち下さい」


 リスリスさんが、外からEクンをちょいちょいって呼んでる。お、Eクン行った。


「ありがとうございます。僕が製作者のE-MIXです」

(うわー!! スゴイ! ひゃー、うわー!!!)


 この〈球体〉さんもスゴイわ。表情なんてないのに、全身で喜びが分かるし。

 んでも……Eクンにしっかり伝わったみたい。うんうん、お互い良かったわね。


 その後話が盛り上がって、Eクンがあたしを呼んだものだから、〈球体〉さんは高速スピンしてた。


(キャー! うっきゃー!!)


 あはは、語彙を喪失しちゃってるわ。まあ、あちこちウロついてるあたしがココにいたのは、本当に偶然だものね。――あ、お名前は「周←ぐるり」だって。んー、と~っても名は体を表してるわー。


 あたしとEクンは、【メリッサ】のカードに「ぐるりさんへ」とサインしてあげたのでした。

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