67話目 メリッサ
「ありがとう、Eクン!」
「良かったです」
Eクンは頭をカキカキして照れてた。
「『メリッサ』が受け入れられて」
「ん? それって……この子たちの名前?」
「はい。試作していったのを1体ずつ保存して、少しずつ変化させていきました」
は~、気の遠くなるような作業ね。あたしにはムリだわ。
Eクンは、メリッサちゃんズを端から指差した。
「彼女がバージョン18ですね。それで、19、20、21です。決定版の4体は、それぞれ個性をもたせましたよ」
「ふむふむ、結構違うわね」
18ちゃんは主人公っぽくて、19ちゃんはチョイ大柄の相棒役かな。んで、20ちゃんは逆に小柄ですばしっこそう。そして21ちゃんは、おっとりタイプ。緑髪も一番長くて、みんなのお姉さんポジね。
「4姉妹それぞれに個性が出ててナイスだわ~、Eクン。1人ずつに名前ってある?」
「あ……えっと、バージョンだけだったんで、個別の名前はつけてません」
「ふむ。じゃあ、若草物語からにしよっか……。あるいは、21までだから、タロット?」
21番って世界だっけ。んー、お姉さんが世界を支配する? おっとりパワー、発動! ――なーんちゃって。
「そういえばEクン。『メリッサ』の由来ってなに?」
「ギリシャ語で『ミツバチ』の意味らしいんで、そこから採りました」
「おー」
いいわね~。――うん、ギリシャ語か。
「じゃあ、ギリシャ文字があったわね。アレを当てはめましょう」
と、いうことで。
「シグマちゃん! タウちゃん! ウプシロンちゃん! ファイちゃん! 以上、メリッサ・シスターズでーす!」
わー、パチパチパチ!
いやはや、デルタとかオメガとかも考えてたけど、まさか18番目からの文字がそのまんま当てはまっちゃうとかね。しっくり来たので、1発採用でーす。
Eクンや工房の人たちも、温かく拍手してくれた。
「シャボンさんに使ってもらえるなんて光栄です」
「ううん、あたしの方こそ。Eクンの作ったユニットが使えるとか、最高よ」
【死の群れ】改め【メリッサ】となったカードを4枚もらったあたしは、意気揚々と帰ったのでした。
んで、プライベートルームにこもったあたしは、【機動】を手に入れるため、ペガススさん達にトレードを持ちかけた。
『では、シャボンさん。僕に【天使】をください』
「オッケー」
綺麗だもんね、天使ユニット。あたしも惚れ込んだからアバターにしたぐらいだし。
4対4交換でいいって言ってくれたけど、ユニット呪文じゃないから絶対何回も頑張ってるハズだしね。【天使】ちゃん8枚を放出した。
『シャボンさん、ありがとうございます!』
「いえいえ」
『見ててください! 天使デッキを作りますよー! ん~、マイエンジェル・ジェーン!! ヒヒーン!』
「あはは……」
うん、名前つけるのってスタンダードよね。――にしても、暴走馬はキケンだわ、ええ。
ともあれ、キーカードは揃ったわね。
「ンじゃ、いっちょ、デッキを練り練りしましょっか!」
まずは核。緑のレベル5・【メリッサ】ちゃんズと、銀のレベル4・【機動】ね。イキナリ魔色が9つ必要だけど、【呪文の達人】でドーピングするからヘーキヘーキ。
そして、肝心なのは防御手段。真っ先に思いついたのは、青のレベル2・【中止呪文】! だけど、ビデオ見てたら、まー女王様ってば、対戦相手の死角で撃ってる。とくに、相手が【中止呪文】を使ってきたあとは、2度と目の前で〖オーメン〗振ってない。
「はー、イメージ戦略だわ……」
いっつも堂々と振ってる印象だったもんね。(あ、ペガススさんの時も、後ろ手で振ってるし! 【島】が青のレベル5だったから、【中止呪文】も入ってる想定!? こわっ!)
「とゆーことで、ボツ」
あたしより上手い青魔道士が、全然止められなかったもんね。苦手なことやっちゃダメよ。
「やっぱ、盾にするわ」
そう、タイガさんスタイルね。青のレベル1・【巨大な盾】と、紫のレベル1・【魔力の盾】。ターゲットは自分だから絶対確実だし、〖オーメン〗を見てから唱えてもギリギリ間に合う。女王様の一休さんは……飛んで回避!(希望)
「あとは、【祝福】を引っぺがす魔法ね」
緑2の【中和】と、白2の【魔力霧散】。これって、さっきペガススさん達と話してたとき、女王様もデッキに4枚積みの想定だったわね。敵のヒドい呪文を除去できるのは超重要なんだわ。はい、こっちも4枚ずつ投入。
それと、【パンドラ】だけど……領土呪文なのよね。今回は【機動】で埋まっちゃうから、入るか未定。紫3だし、そこまで魔色が回るかどうか……。
「あ」
そうだわ。なんでこんな単純なことを忘れてたのやら。
「【忘却】!」
ふっふっふ……紫のレベル2・【忘却】! スキルか特技を1種類忘れさせる効果……え~え、ヒプノちゃん戦で《天使の羽》をもがれて、溶岩にダイブしたものね。ほんと、食らったら覚えるわ。あいるびーばっく!
今日のデュエルでは、最後の方でチョロっと撃ってた人がいたけど、明日は違うわよ? みーんな、女王様の戦い方を見たものね。紫を絡めるなら、ゼーッタイ入れるわ。
「だって、【呪文の達人:黒】を消せるから!」
黒の魔色が減るから!!
呪文レベルを下回って、〖オーメン〗が1秒で撃てなくなるから!!!
「――【忘却】、4積みね」
ふふふ、勝ったわ、女王様!(え、フラグ? 何のことやら)
「さ、あとはひたすら練習ね」
【機動】&【メリッサ】の速さを、体に覚えさせていく。刺す相手はあたし自身ね。〖オーメン〗は無いから、【パラメデス】で代用。何度もコロリンチョして、《麻痺》のタイミングを図る。――って、うぉ、速い! ひゃーん、頼もしい~……いま食らってるのはあたしだけどサ。
んで、他に必要なのは……と。
「5m、10mの距離感も大事よね」
【絶滅】の射程もバッチリ叩き込んどく必要があるわ。んー……勝手知ったるプライベートルーム。部屋が狭い!
広い所で練習したいけど、社長ビルの地下だと、モニターあるもんね。隠れて修行するには不向き。
――と、すると。
「おっちゃーん!」
喫茶、サラマンダーの夜。いやー、昨日ぶりに来たわー。
だけど、そこに人魚のおっちゃんはいなかった。
「シャボン」
代わりに、デスクで作業をしてる、スーツ姿のおキツネ様が1人。
「芝の女王と、戦ってましたね?」
「お、おう……」
笑顔がコワいよ、銀ちゃん。




