66話目 666には∞をブツけよ
その後は、女王様バスターズの悲鳴をBGMに、ペガススさん達の冒険譚を聞いてた。
「ふふふ……。実は僕たち、昨日は【大地の竜】がいるダンジョンに潜りましてね」
「え、見つけたんですか!?」
「ぴよよ~ん。お空の上にあったぴよーん」
「はぁ!?」
大地の竜でしょ!? 社長、頭おかしい!
「拙者たちも、捜索隊のおかげで判明したでござる」
「オゥよ。つーか、巨大な雲の中にバカデカい城があってな? ソイツが、雲ごと動いてやがったんだ。分かるか、あんなモン!」
はー、このビルも飛ばしてたし、なんとかと煙は高いところが好きよねー。――ってか、所在地が長野県の軽井沢とか! わっは~、スゴ~イ、軽井沢は浮遊都市だったんだ~。
おバカ!!
で、例のごとく、難易度は結構なオテマエだったもよう。
「僕たちが行ったら、兵士がわらわら出てきて大変でしたよ」
「オゥ。城内は呪文が使えねえとかでよお、ウゼェのなんのって! さらにウゼェのは、奴らの盾な! 盾使う人間とか、クソだ!」
「ぴよよーん、ブーメラン乙だぴよーん」
そして始まる、蝶介さんとタイガさんの突発バトル。うわーい、仲いいわねー。
ちなみに中ボスは、稲妻をまとった【雷の戦乙女】って天使だったとか。
「僕らの飛び道具は、ことごとく落とされましてね」
「拙者が刀で切ったら、電撃を食らったでござる」
呪文を封じた上で、こーゆーユニットを配置。ん~、実に腐ってるわー。
「あ、じゃあ皆さん、色んなカードをゲットされました?」
「左様でござる」
「僕たちも、初見のカードがありましたよ」
「見せてください!」
つい最近まで、みんな知らなかったダンジョンでしょ?
女王様を打倒できるカードがあるかも!
みんなの解説付きで、色々とテーブルに広げてもらった。ユニットが多かったけど、目を惹いたのはそれ以外の銀魔法2つね。
・【千里眼】:レベル2。スロットのカードを1枚見られる。
・【機敏】:レベル4。領土呪文。ユニットの速度を+2。
「ん~、とくに【機敏】! これ、強いですよね!」
「ええ、速いですもんね」
うんうん、速さisパワー! あ、そうだ!
「〖ナイン・エレメンタル〗と一緒に使ったら強いんじゃ!?」
言った先から、次のチャレンジャーさんが実行してた。蛇ヘッドさんが、予め【機敏】を張って女王様とレッツ対戦。
だけど、【絶滅】を撃たれて一気に退治されちゃった。すかさず【魔法霧散】で【機敏】も消される。
んー、4体をなんとかバラバラに操作できればねえ。でも、精霊って丸っこい玉だし、ムズいのかも。
蛇さんも、なんとか【機敏】を張り直すんだけど、そうすると、女王も【祝福】を張るのよねー。そして、〖オーメン〗炸裂。ぐふぅ、チャンピオン、防衛成功なり。
お次は、盾張りを続けて、その合間に【千里眼】を撃ちまくるネズミさんだった。――ふむふむ。情報収集は大事よね。
ネズミさんは負けちゃったけど、白馬ヘッドのペガススさんが、ニカッと笑ってみせた。
「実は彼、僕が【千里眼】をプレゼントしたフレンドでして。今、〖オーメン〗を見たって報告が来ました」
「おぉー!」
スゴいわ、ペガススさん! ネタでリーダーやってるダケじゃなかったのね!
ネズミさんから、『動画を投稿するまで公にしないのなら、OKですよ~』って条件で、一緒に教えてもらった。いや~、感謝しきりだわ~。
そして得られた悪魔のヒミツが、これ!
・〖オーメン〗:黒のレベル6。ダイス3つを振って出た目の分だけダメージ。
ほおほお、これが女王様の脱法呪文だったのね……って、アレ?
「ぴよよ~ん、どうしたでぴよ~ん?」
「あ、蝶介さん。――えっと、この〖オーメン〗ってカード、確かに強いですけど、でも、理不尽じゃあないなって」
「ぴよん?」
「例えば……〖ナイン・エレメンタル〗なんて、999が4体とかで、どー見ても正規に採用されるユニットじゃなかったですよね?」
「あー、確かにぴよん」
「だけど、この〖オーメン〗は……もうちょい正規呪文の強さがインフレしたら、出てくるかもな~って思える強さなんですよ」
「ぴよよ~ん、面白い視点だぴよーん」
「ハッハー! だが正論だ。単に勝つダケなら、ダイス30個振っちまえば楽勝だもんな!」
「ですよねー」
――でも、その場合は、絶対ここまで盛り上がらなかった。『呪文がスゴいだけ』って言われたと思う。
あたしは、〖オーメン〗のレベルを指差した。
「この『6』も、かなりオカシイですよね」
「ですね」
ペガススさんは白馬ヘッドでうなずいた。
「シャボンさんの言う通りです。【パラメデス】はレベル3だから、ソレより上のレベルならOKなハズですね」
「そうなんですよ! つまり、ゲーム的な有利さダケなら、絶対『4』にするべきなんです!」
「でも……6を選んだ」
世界をブチ壊す呪文じゃなくて、世界の可能性を広げる呪文だわ、コレ。
あたしは、ダイス3つで挑戦者を退ける女王様に目をやった。
「多分、彼女は……すっごい好きなんだわ。この世界が」
ちなみに、肝心のイシュタール女王陛下だけど。
『ホホホ……。お主ら、今宵はお披露目の初日ゆえ、さしたる対策も出来なんだようじゃのぉ?』
とうとう100連勝されちゃいました。ぐはぁ。
『戦いによって得た知識もあろう。妾への対策として、好きに活用せい』
画面越しの女王様は、握り拳に黒いオーラをまとわせた。
『では、明日まで息災での。サラバじゃ』
パッと手を開いて、〖オーメン〗炸裂。大画面の映像が、派手なクラッシュ音のあと真っ暗になった。スグに自動修復されたけど、そこに女王様の御姿は無し。――ンまー、オシャレな退場ですこと。(あ、〖迷宮〗の「【終了】させない」って効果だけど、オフにしてるからね? もしオンにしてたら、追放されたざまぁ団と同じだし。デメリットだけ享受してますわー、ハイ)
観客さんたちは、興奮冷めやらぬ様子で去っていった。称賛する人、苦笑する人、そして……打倒に燃える人。つまりはあたし。
チームのみんなは、用事があるとかで次々帰ってて、テーブルにはリーダーとあたしダケだった。
「ペガススさん。女王戦の映像データ、本当にいただいちゃっていいんですか?」
「ええ、もちろん」
「ありがとうございます!」
【雄蜂の斥候】の録画データをコピーしてもらった。オマケに、女王様を想定したデッキレシピやら、さっき話し合ってたメモも込み。はー、ありがたやありがたや。
あたしはもういっぺんお礼を言うと、早速自室にこもって特訓することにした。
「――うーむ、勝てそうで勝てないわ」
〖デス・エレメンタル〗の代わりとして、あたしは【死の群れ】を喚びだし、自在な操作を練習してた。
んで、折角《麻痺》とか持ってるから、これが決まれば優位に立てるかもと思って、自分を実験台にしてプスプス刺してたんだけど……。
「ビーちゃんズの動きが、ちょっと止まるのよねー」
そう。
蜂の針は、お尻にある。つまり、《麻痺》を使うなら、一旦お尻を前に向けるモーションが必要なの。
その動作の遅れって、女王様が相手だと致命的。
「むー、《麻痺》の連続攻撃とか、イケると思ったのにー」
現状だと、ヨユーで【絶滅】を撃たれる未来しか見えないわ。南無南無。
「気分転換!」
落ち込むだけなら動くわ!
ということで、Eクンのいる工房、メルティングポットへとやって来たのでした。新宿東口で近いしね。
「ハロー、Eクン」
「あ、シャボンさん!」
嬉しそうな顔で駆け寄ってくる、機械の美少年こと、E-MIXクン。うんうん、なんだかこっちも嬉しくなってきちゃうわ~。これだけでも来て良かったわね。
Eクンが、あたしの手をグッと握ってきた。
「僕、完成しましたよ!」
「へ?」
目、きょとん。
「えっ、何が?」
「いただいた【死の群れ】を、アレンジしました!」
「――おっ、おおぉー!!」
え、でもあげたのって昨日よね!? 速くない!?
奥の作業机で、リスリスさんが苦笑してる。
「Eクン、アイデアが湧き出たそうですよ? 細かい修正も入れると、20体以上作っちゃったみたいです」
「うわー」
――天才が、進むべき道を知ったって感じね。
「シャボンさん! 早速、召喚してみてください!」
「わ、分かったわ」
Eクンの勢いにお姉さんタジタジよ。――えっと、ここも工房だから特区扱いよね。スロットに入れれば、即・召喚可能、と。
指先が緑に光り、スグに弾ける。正規呪文の【死の群れ】は、30cm大の蜂が4体飛んでたけど。
「おぉっ!」
現れたのは、緑の髪をなびかせた、凜々しい少女たちだった。
Eクンが誇らしげにほほ笑む。
「ハチの擬人化です」
「ひゃ~ん、カワイイ~!」
こないだ社長が見せてた【鈴蘭】ちゃん達みたいね。それを、うまくハチに当てはめてるわ。み~んなおそろいで黒と黄色の帽子を被ってて、4本の手の1つに槍を持ってる。
「Eクン。この子達って、スピアで攻撃するの?」
「はい。《麻痺》もコレで行いますよ」
「大胆に変更したわねえ」
「あー、えっと……」
ん? Eクンが顔を伏せてる。
「そのぉ……お尻の針で攻撃は、擬人化すると、ちょっと……」
「ああー、そうよね」
アララ、Eクンってば顔が真っ赤。むふふ、純情ねえ。
でも、それをデザインに落とし込むときは一心不乱なんだから、アーティスト魂ってスゴいわ。
――ん?
今……何か、スゴク重要な変化があった気がするわね。
元々は「お尻の針」だった《麻痺》攻撃を、「スピア」にした……?
あたしは、ブルリと武者震いをした。
もしかしたら……ううん、コレって絶対そうよ。
勝ち筋が見えた。
女王陛下のデッキにあるオーメンが見られたので、載せておきます。
〖666/Omen〗
レベル6・黒魔法/脱法呪文
分類:一般
効果:キャラクターを対象としてダイス3個を振り、出た目のダメージを与える。
「神はサイコロを振らない? なら、俺が振るよ」
――イカサマ師
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