63話目 業火でこんがり焼けました
と、自信満々に言ったあたしだけど。
いっや~、これはリストを見たら分かっちゃったわ。てか、1番上に【闇の衝撃】とか。「ダメージ2倍」って、思いっきり書いてあるし。
あと、【パラメデス】の近くにある【三連撃】もね。「次の打撃が3回になる。」とかさ、コレもう、ダイス3つの答えでしょ。ご丁寧に【連撃】って魔法まで置いて強調してるし。
男の子チームも、大体この辺までは分かったみたい。
「うりゃー!」
「どんどん振れー!」
【パラメデス】+【三連撃】でダイス3つにして、「30」のパネルにアタックしてた。
んでもって。
「よし、出目が16! 【闇の衝撃】!」
ズゴゴゴゴゴーーン!!
「よっしゃー!!」
おー、赤い火の玉みたいなエフェクトが直撃。ド派手にぶっ壊れたわー。
「この調子で、どんどん振ろうぜ!!」
「おー!!」
ふむふむ。男子チームは、【悪魔の契約】で【パラメデス】のクールタイムを解いて、ゴロリンチョって作戦ね。15以上のときに【闇の衝撃】で2倍ダメージにして、パネルを壊すゴリ押し、と。
でも……ゴメンねー、ボクちゃんたち。あたし、気付いちゃったわ。
【祝福】って呪文に。
これ、リストで見るから分かりやすかったんでしょうね。ハッキリと、「確率系事象の効果が最高になる」って書いてあるもの。
サイコロって、思いっきり確率でしょ? その効果が最高って……そりゃあ、出目が全部6になるわよねぇ?
女子チームも、【祝福】の存在に気付いたみたい。
「みんな、【祝福】と【三連撃】をつけてからサイコロ振りましょ?」
「うん!」
よーしよーし。ミーティングは大成功。がむしゃらに動くより効果大だったわね。
かくして女子チームは、「18」を連発。それが2倍で「36」!
ズッゴゴゴゴゴゴーーーン!!
灼熱の火球に、次々と上がるパネルの悲鳴! 女の子達の黄色い声! そして男の子達、メッチャ焦って作戦タイム!
んでも、時すでに遅し。女子チームは、ほどなく与えられたパネルを全部コワし終えたのでした。
「やったー!」
「くそぉ……。【祝福】かあ……」
ドンマイ、男の子たち。――そうよねえ、最適な効果を得るためには、全部チェックする必要があったのよ。
【祝福】って、リストの最後の方だったし、【三連撃】まで見たら、ひとまず30オーバーの目処が立つものね。「ともかく振れ」って作戦になるのもムリないわ。
ま、トライ&エラーが良いときもあるし、何より、最後は気付けたからね。色んなアプローチを学ぶのも重要よ、うん。
「なら、もっとデカいダメージだ!」
――あ、今度は【連撃】と【三連撃】を組み合わせようとしてる。あはは、夢いっぱいねえ。
だけど、【三連撃】をつけたら、前の【連撃】は消えちゃってた。
「くそー、いい案だと思ったのにー!」
ナイスガッツ。ま、そりゃそーよね。現状でも十分強力だもの。
社長にしてみれば、2×3で6倍とかは、トーゼン却下するハズだわ。バランスには気を使ってたもんね。
ひととおり、子供たちがパネルを撃破したので、もういっぺん先生たちがパネルを生やしていってた。
「シュシュ~ッ、みなしゃん。ここからは、誰かの邪魔をするのもアリっシュ。本体へのダメージ攻撃以外なら、魔法もOKにするっシュよ」
「せんせー、サイコロで倒すのはダメですかー?」
「今回はダメっシュ~」
ダメよー、男子。今のって、「スナック菓子はおやつに入りますか」的な質問だったわよー?(ちなみに、「バナナはおやつ」派よ)
そして今度は、妨害ありのダイス振り。だけど……さっきまでは面白いぐらいに吹っ飛んでたパネルが、まー全然壊れない。
「おい! ハスキーが【祝福】ついてるぞ!」
「消せ消せー!」
あらら、男子たちがイキイキしてるわね。【三連撃】の付与されてる女の子も、次々と【中和】や【魔法霧散】で剥がされてるし。女子チーム押されてる。うむむ。
男子チームは、リーダーに強化を集中させて、ゴロリンチョさせてた。きっちり【闇の衝撃】もキメて、36!
「よしっ、やったぜー! ……って、あれ?」
うん、夢中になると視野が狭くなるのよねー、あるあるだわ。
女子チームにはねぇ……。可愛くて賢いウサギちゃんがいたのよ。
「やった、効いた……!」
ラビちゃんが、寸前でパネルに【防火】してたのよー、オーッホホホ!
「ラビ、すごい!」
ハスキーちゃんを始め、女子から喝采を受けて照れるラビちゃん。あ~、モフりたい。
まあ実際、「見てから【防火】余裕でした」ってレベルの魔法操作が出来たのは、ラビちゃんだけだと思うケドね。男子のリーダーくんは、ダイスを勢いよく振ったせいか、狙うパネルが隣になってたの。だけど、ラビちゃんはキチンと確認してソッチに変えたし。
(グッジョブよ、ラビちゃん)
(え、お姉ちゃん!? ――あ、ありがとうございます)
ラビちゃん、こっち見てテレテレ。あはは、ごめんねー。つい念話で送っちゃったわ。
気分はすっかり親バカです、はい。
授業のしめくくりとして、鬼六先生がみんなを集めた。
「シュシュ~。みなしゃんも、サイコロを振る魅力が分かったと思うっシュ。あふれんばかりの大ダメージと、【防火】で防がれるもろさ。この同居が、男のロマンっシュ!」
確かに、かなり尖ってたわね。
「さて、今回使われなかった呪文として、【連動】も言っておくっシュ」
あ、リストに入ってた気がするわ。
「【連動】は、条件を指定して、それに合ったときに呪文を発動させられるっシュ。だから、こんなことも出来るっシュ」
今の鬼六先生は、【魔力視覚】で使ってる魔法が分かった。それによると……まずは【連動】が利いてるわね。そこへ、【祝福】に【三連撃】を掛けて、仕込み完了。パネルに向かって【パラメデス】。ふむ、ズガーンと18点だわ。
――あら? 黒呪文を唱えないわね。【闇の衝撃】、ミスった?
なーんて思ってたら、鬼六先生の体が一瞬だけ黒オーラに包まれた。
ピキーン!
ズッゴゴゴゴゴゴーーーン!!
「うわー!」
ひゃあー、なに今の!? 瞬間魔法使う素振りがなかったのに、キッチリ炸裂したわ!
「シュシュシュ、これが【連動】っシュ。今のは、『対象のパネルに【防火】の掛かってない状態で、ダイス3つがヒットしたとき、【闇の衝撃】を発動させる』って条件にしてたっシュ」
はー、そんなワザが。――ふむふむ、【連動】って銀のレベル1魔法なのね。瞬間魔法を確実に使いたかったり、トラップ呪文をセットするときは重宝しそうだわ。
「あと、鬼六はナイショにしたかったっシュけど、世の中には、【祝福】を消しちゃう【呪い】って呪文とか、あとは、確率系の効果を最低にする【パンドラ】とか、ヒドい呪文もあるっシュ」
うおーい、それを先に言いなさいよ。なんだ、防ぐ手段って山ほどあるんじゃない。
「そういうワケなんで、これを使えば最強ってことじゃないっシュ。あと、いないとは思うっシュけど、これを持って『マホロバ・リアル』で腕試しとか、本当にダメっシュよ。32点以上のダメージは0になるっシュからね」
おおぅ、リアル側にはそんなハウスルールが。あたし、自分が100%行かないから無視してたわ。
最後に鬼六先生は、ちょっぴりシリアスになった。
「君たちも、マホロバに慣れてきたっシュ。でも、そういう時こそ、気を付けてほしいっシュ」
チラリとラビちゃんの方を見てた。――うん、そうよね。実際、とんでもない事件が起きたわけだし……ん?
ふと見ると、メールが届いてた。チェックすると、「イシュタール」って差出人から、バトルのお誘い。
ほおほお、カルイザワビルにある闘技場で、1対1ですか。――場所の指定からして、ざまぁ団じゃなさそうね。
初のご指名だし、受けてやろうじゃないの!
パラダイスデッキにて、サイコロ以外のキーカードです。
【闇の衝撃/Dark Impuct】
レベル2・黒魔法/コモン
分類:瞬間
効果:攻撃ダメージが2倍になる。
条件:自分の攻撃がヒットした瞬間のみ発動可能。
「よく誤解されるが……闇は優しいのさ。ヨソ者には倍キビしいだけでな」
――死霊術士
60/350
【三連撃/Triple Blow】
レベル6・赤魔法/アンコモン
分類:攻撃付与
効果:次のアバターまたはユニットの打撃が3回になる。打撃を行ったのち、【三連撃】は消滅する。
「何度も焼かれるのが好きか? そいつはウェルダンだ」
――火炎術士、ジーノ
318/350
【祝福/Bless】
レベル2・白魔法/レア
分類:付与
効果:対象のアバターまたはユニットが用いる、確率系事象の結果が最高になる。
かつては、生意気ばかり言っていた。
何があるわけでもない、平凡な日々。
あの頃の自分は、たしかに幸せだった。
20/350




