58話目 ほんとにスゴい人は、スゴさをアピールしない
おっちゃんの先導で大門へとワープしたら、グレーのスーツに身を固めた銀狐が出迎えてくれた。
「やあ、シャボン。アイスから話は聞いたよ」
「――今も撮影してるんでしょ、銀ちゃん」
「もちろん」
スッと上に向けた指の先には、“銀色のセパタクロー”こと、【衛星球】が。
「専属カメラマンとして、バッチリ勇姿を収めるからね」
「うわー、光栄だわー」
こんな余裕のあるやりとりも、冒険者さんたちがラビちゃんを救ってくれたからこそよね。感謝しきりだわ。
「天使しゃ~ん」
おっと、ちっちゃな男の子3人組がいるし。ファン? ――ンなワケないか、危険な現場だもんね。
と、すると。
「冒険者さん……ですか?」
「シュシュ~、そうっシュよ~」
6才ぐらいの黒人少年が、サッと握手してくれた。
「大半のざまぁ団員は、鬼六たちで片付けたっシュ。お姉しゃんには、メインディッシュを残してるっシュよ~」
「ありがとうございます」
「おぉっと、お礼はいいっシュ。代わりに、このあと夜の街でどうっシュか?」
あはは、やっぱ中の人は年上だわ。――あ、両脇からペチッて叩かれてる。ネズミ少年(4才)と、猫少年(10才)にね。
でも……やっぱ強そうには見えないわ。杖でポカポカ出来ちゃいそうなんだけど。
(ねえ、銀ちゃん。この子たち、どれぐらい強いの?)
(マホロバ・リアルで5本の指に入るよ)
(え? 全員が?)
(私の知る限りだとね)
ひょえー、人は見かけによらないわ。――あ、そっか。アバターだもんね。外見でアピールする必要がないのよ。
最初のおふざけ以外は、極めて紳士的だった彼らの誘導もあって、すんなりと目的地に辿り着けた。
「んじゃ、鬼六たちは戻るっシュ。シャボンさん、幸運を祈るっシュ」
「お疲れ様です」
3人はすぐに【終了】していった。なんでも、リアルでも案件があったのに、急遽来てくれたとか。本当、ありがたいわ。
――あと、それをスグさま彼らに伝えられるおっちゃん達もね。何者よ、マジで?
すでに敵はアジトから追い出し済みで、あとはボス1人。今は、他の冒険者さんたち(推定30人)が、芝公園へと誘導してた。
「お前ら、俺らが何したっつーんだよ!」
あ、全身青い悪魔がワメいてるわ。
「ウサギ少女と仲良く遊んでたダケだろ!? くそっ、何か証拠はあんのかよ!」
はいはい、キャンキャン吠えてる悪魔をスキャンね。――ん、名前はストレーション。コイツで確定だわ。
時たま、長いツメの先が光るんだけど、そのたびにシュルシュルっと立ち消えてる。冒険者さんたち、ありがとう。社長がやったみたいに、【中止呪文】で消してるのね。
天使のあたしは、堂々と悪魔に歩いていった。
「ストレーションって言うの? あんたが誘拐したのね」
「うるせえ、サボテン! 勝手についてきたダケだ!」
「彼女と連絡が取れなかったわ。フレンド登録してたのに」
「知らねえよ! ガキの都合なんざなぁ!」
うわー、これだけやっといて責任逃れとか。見苦しいったらありゃしないわ。
(シャボン)
おっちゃんが念話してくれた。
(構成員から十分ウラは取れてる。好きに料理しろ)
(ありがと、おっちゃん)
ンじゃまあ、こうしましょっか。
あたしはレーヴァテインを悪魔に向けた。
「アンタ、〖強制終了〗で敵を追い返すのが好きみたいね」
「はぁ? それがどうした」
「編集映像の中だけで勝利宣言するとか、虚しくならない? それこそ、ガキでしょ」
「くっ……テメェ!」
悪魔が呪文を唱えようとするけど、やっぱりかき消されてる。
「あらあら……おしゃべり中に行儀が悪いわね」
あたしは、呆れたように肩をすくめてみせた。
「いいわ。終わり方って大事じゃない? だから、チャンスをあげる」
「なんだと?」
「もしアンタが、あたしをガチの勝負で倒せたら、強かったって事実が残るわ。どう、勝負する?」
「――ケッ。どうせ、周りの奴らがよってたかって妨害するんだろ」
「しないわ」
てか、最初っからその気なら、とっくに始末つけてるだろうしね。
「さあ、どうする?」
「――確認だが、俺かお前、どっちかがマホロバを離れたら、残った方の勝ちなんだな?」
「ええ、そうね」
悪魔は口角を大きく上げた。
「いいぜ、やってやるよ」
「OK」
すぐに悪魔は【闇】を張ってきた。けど、こっちも【光】で応戦。すかさず消しておく。
「ちぃっ!」
相手の指に銀色の光が集まる。【敏速】ね、はいはい。こっちもやっとくわ。――あ、次もおんなじ? はいはい。
んでもって、悪魔は黒い翼をバサッと広げた。
「ハハハハ、空中戦ならちょっとは知られてんだ!」
ふーん。
「オラッ、サボテン! かかってこい! 何回でも後ろをとってやるぜ!」
――【中和】で速度リセットしてやろうかと思ってたけど、予定変更ね。
あたしもファサッと純白の羽を出した。
「今から飛ぶわよ」
「おう、来やがれ!」
あ、フォークみたいな武器構えてるわ。飛び上がった所を刺す気まんまんね。
――かすりもしないわよ、バーカ。
《天使の翼》で急上昇! そこから、ひねり込んでバックを取る!
「なっ!」
悪魔は慌てて振り向いた。
「す……少しは、やるじゃねえか」
「予告したわよ」
杖を自分の手にペチペチと当てる。
「そんだけ目をひんむいてたのに見失っちゃった? あらあら、危ないわねえ。お空を飛ぶ免許、返納する?」
「お、俺は空中で強えんだぞ!?」
「あ~、うんうん。誰も『強い』って言ってくれないから、自分でアピールするしかないのよね」
「んな!?」




