54話目 目立つ的は狙われる
ちょうどそこに、銀ちゃんがやってきた。
「2人とも、投稿してきたよ」
「銀ちゃん、お疲れ~」
てか、ここでアップさせれば良かったと思うけどね。
おっちゃんが銀ちゃんを見上げた。
「ざまぁ団の方針を探ってたのか」
「うん」
「次は何を企んでやがった?」
「〖迷宮〗とかいう脱法呪文だね」
銀ちゃんは椅子に腰掛けた。
「マホロバから出られなくする呪文らしいよ」
「ほー、強いな」
「使い手は、それを使ってる間、自分もマホロバにいる必要があるけどね」
「大概の魔法はそうだよな」
へー、シンプルな脱法ユニットじゃなくて、そんな別路線もあったのね。
あと……当然のように探ってこれてるあたり、絶対ココ、大会社がバックについてるわ。
おっちゃんがあたしを見た。
「気を付けろよ、シャボン。お前、昨日と今日で、一躍有名人だからな」
「奴らの標的になりやすいってコト? 大丈夫、あたしは使われても問題ないわ」
そもそもマホロバから出ないあたしに、死角はなかったわね。
社長を倒した動画を見てみると、賞賛してくれるコメントが大多数なものの、「社長とグルじゃないか?」とか、「これヤラセだろ」といった否定意見もある。
銀ちゃんが横からのぞき込んできた。
「有名になるとアンチも出てくるからね。気にしない方がいいよ」
「あ、大丈夫大丈夫。こんなのは有名税よ」
手をプイプイしたら、おっちゃんが「お前はメンタルも強いな」と苦笑してた。えー、ただの女子高生よー?(なおサボテンボディにインしてる模様)
あたしは、ネット動画のページから、カード売買のページへと移った。
「あ、大半売れてるわ」
「ほほー、わらしべ長者か」
おっちゃんものぞき込んでた。
「ん? 【死の群れ】は全然売れてねえな」
「ね~。ポテンシャルは高いと思うんだけど」
カエル園長が200円って言ってたから、100円で売りに出してみたケド、30枚全部が残ってる。
銀ちゃんが〖デス・エレメンタル〗のカードを出した。
「おそらく、コレの下位互換のイメージが強いんだね」
「あー……って、銀ちゃん、脱法呪文も持ってるの?」
「研究のためだよ」
ヒラヒラしてみせる。
「こういった脱法ユニットも、近くに【箱庭】がなかったら使えるしね」
「うーん」
そっか。あたしと社長のデュエルでも、メタを読み合った結果、【箱庭】がなかったもんね。
ダメ元で〖デス・エレメンタル〗をデッキに入れといて、とりあえず出すって戦略が、まだまだ通用するんだわ。(あ、【鈴蘭】が出たから、今度からは〖ナイン・エレメンタル〗だっけ? まーいーや)
「ンまあ、もうチョイ【箱庭】が広まってからに期待しましょ」
あ、【死の群れ】で検索したら、10円の出品がイッパイ出てきたわ。こんなにあったら、そりゃ100円じゃ売れないわね。
――あれ、待って?
コレって、もしかしてビジネスチャンス?
「今、ビーちゃんズの値段が『メチャクチャ安い』と思ってるなら……むしろ、買っちゃえばいいのよ!」
ひとまず、見えてる【死の群れ】を片っ端から10円でポチる。
「おいおい、シャボン」
「なに、おっちゃん?」
「いや……次々買ってるが、スグに価値が上がるとも限らんぞ」
「そりゃあね。でも、10円だし」
安く買って高く売れば、儲けになるわ。
もしダメでも、少額投資ならやり直しがきくし。
「買った時点で空クジと思ってれば腹も立たないわ」
「割り切ってやがるなあ」
「フフフ、サボテン博士とお呼びなさい」
期待はするけど、過度にのめり込まない。
敗北から学んだあたしは、ひと味違うのよ。
2人と挨拶して喫茶店を後にしたあたしは、昨日E-MIXクンを受け入れてくれた工房、「メルティングポット」へ向かった。
――この手の工房って、作ったアレンジユニットに該当するカードを持ってくと、そのキャラと安値で変更してもらえるのよね。
「皆さん、こんにちは~」
「あ、シャボンさん!」
Eクンを始め、工房の皆さんが口々に歓迎してくれた。お返事をしつつ、Eクンの作業机に近寄っていく。
「Eクンも、何かユニットちゃんを作るの?」
「はい。人数の多いユニットは、後回しにされてるみたいで。僕はそういう子を手掛けてみようかなって」
「おおう、修羅の道」
数体のユニットを一気に作るのは、しんどいもんね。数体分作ってようやくカード1枚とか、モチベが大変。
ンでも……裏を返せば、やってる人が少ないってコト。
「Eクンの腕前なら、きっとブルーオーシャンよ。――あ」
あたしは、いそいそと【死の群れ】を出した。
「ねえ、Eクン。実は、こういうユニットがあるんだけど」
「あ、ハチですね」
「うん。昨日の新呪文のお披露目、見た? 【鈴蘭】ちゃんみたいな感じの4体が出せたら、爆発的にヒットするわ」
「あはは……及ばずながらやってみます」
「んじゃあ、製作おためし用として、コレ使って」
あたしは、手持ちの【死の群れ】のカードを全部置いておいた。
「え、シャボンさん。こ、こんなにいいんですか?」
「へーきへーき。夜中に、【死の群れ】を1枚10円で買うBotと化すから」
Eクンは戸惑ってたけど、周りのみんなにはウケた。よしよし。
――いやー、それにしても、こうやって色々買えるのも、園長の所で【魔力制御】引けたからよね。感謝だわー。
ちょうどそのとき、カエル園長から連絡が入った。
(シャボンさん)
(あ、園長。なんの御用ですか?)
(えーっと、ラビちゃんについてですけど、そちらで一緒じゃないですか?)
(いえ。今日は見かけてませんけど)
(そうでしたか……。実は、まだ【終了】してないもので)
(――え?)
ぞわりと、イヤな予感がした。
――目立つ的は、狙われる。
じゃあ、的そのものを狙いづらい場合は?
その周辺が、狙われる。




